法線をぜんぶ引くと星が浮かぶ(楕円の縮閉線)
楕円の法線を、接点を少しずつずらしながら何十本も引きます。線そのものは直線なのに、密になったところに星形の輪郭が浮かび上がる。
この輪郭を縮閉線といいます[1]。楕円の縮閉線は、アステロイドと呼ばれる星形を縦横に伸ばした曲線です[2]。
法線の方程式
点 での接線は で、傾きは でした[3]。
法線はこれと直交するので、傾きは逆数の符号を変えた 。点を通る条件と合わせると、次の形にまとまります。
右辺は です。 を代入すると になり、たしかに通っている。
媒介変数で と書くと、 という形になります。
法線はどこも通らない
円なら法線は必ず中心を通ります。楕円には、そういう共通点がない。
法線が 軸を切る位置を見ます。 とおくと 。
これは にあたる点で、接点を選び直すたびに動きます。焦点でも中心でもない。
共通点を持たないぶん、法線どうしは少しずつずれた場所で交わります。交点が集まってできる曲線を縮閉線と呼ぶ。
円の法線が 1 点で交わるのは、どの法線も中心を通るからです。
楕円では通りません。交わる位置が接点ごとに変わり、その集まりが 1 本の曲線になります。
例:2 本の法線を交わらせる
、 で、 と の法線を作ります。
の接点は 。法線は になります。
の接点は で、法線は 。
連立して解くと交点は あたり。楕円の外ではなく、中心の近くに落ちます。
2 つの を近づけると、交点は の縮閉線の点 へ寄っていく。包絡線とはそういう極限のことです。
縮閉線の式
法線の族が包む曲線は、媒介変数で書けます[2]。
を消すと、 分の 乗が並ぶ式になります。
の円なら右辺が になり、曲線は原点 1 点につぶれます。円の法線が中心で交わることと同じ。
と が離れるほど星は大きくなる。 が全体の大きさを決めています。
尖った 4 つの点
、、、 で、縮閉線は尖ります。
尖点の座標は と 。楕円の頂点と同じ向きに並びます。
、 なら で、尖点は と 。楕円よりずっと小さな星になる。
曲率半径との関係
縮閉線は、曲率中心が動いた跡でもあります[1]。各点で楕円にいちばんよく寄りそう円の、中心の軌跡。
その円の半径が曲率半径です。楕円では次の形になります。
長軸の端では なので 。半直弦と同じ値です[4]。
短軸の端では 。こちらのほうが大きく、平らな部分ほど円が大きい。

例:、 で数える
なので、縮閉線は 、。
長軸の端 での曲率半径は 。曲率中心は の位置で、これが尖点と一致します。
短軸の端 では曲率半径が 。中心は で、こちらも尖点。
長軸の端のほうが曲がりがきつく、寄りそう円が小さい。楕円のいちばん曲がった場所です。
円に戻す変換は使えない
楕円の面積の問題では、円を縦に縮める変換が効きました。ところが縮閉線では、この手が通りません。
縮める変換は角度を保たないためです。円の法線を写しても、楕円の法線にはならない。
直角が直角のまま写らないので、垂直に関わる話は円へ戻せません。面積と比だけが持ち帰れる量でした。
法線は何本引けるか
楕円の外の点から法線を引くと、何本引けるでしょうか。答えは点の位置で変わります。
縮閉線の内側にある点からは 4 本、外側からは 2 本。縮閉線が境目になっています。
包絡線をまたぐと接し方の数が変わる、という一般の話がここにも出てきます。星の内側では、法線が 4 通りの向きから届く。
包むのは楕円そのもの。曲線がそのまま現れる
包むのは星形の縮閉線。もとの楕円とは別の曲線が現れる
双曲線と放物線でも
双曲線 の法線は 。符号が 2 か所で変わります。
放物線 の法線は と、傾き で書くと便利です。
放物線の縮閉線は という半立方放物線。尖点は の 1 か所だけです。
つまずきやすいところ
法線の傾きを としてしまう誤りが多いところ。接線の傾きの逆数をとり、符号を変えます。
や では分母が になるので、頂点での法線は別に扱う。長軸上の点なら法線は 軸そのものです。
縮閉線と包絡線を同じ言葉で呼ばない。包絡線は族が包む曲線の総称で、縮閉線は法線の族に限った呼び名です。
の縮閉線の尖点のうち、 軸の上にあるものはどれですか。
曲率半径も確かめます。
の点 における曲率半径はどれですか。
長軸の端では です。 は短軸の端での値になります。
接線が楕円を包み、法線が星を包む。線を 1 本ずつ引いて眺めると、式の裏にある形が見えてきます。













ac2=59 です。(±3,0) は焦点、(±5,0) は楕円の頂点にあたります。