面積は出るのに周長は出ない?楕円と楕円積分
楕円の面積は で、積分すら要りません。ところが周の長さは、初等関数で書けない。
でも でも でも表せない量です。楕円積分という別の関数が必要になります[1]。
周長を式にする
をたどる速さは 。これを 1 周ぶん積分したものが周長。
を使うと、根号の中が でまとまります。
この積分を第 2 種完全楕円積分といい、 と書きます。周長は [1]。
なら根号が になり、。 で円周に戻る。
なぜ書けないのか
は、置きかえてもうまくほどけません。 と置くと が出てきます。
根号の中が 次式。この形の積分は、初等関数の組み合わせでは書けないことが知られています。
次や 次の式の平方根が入ると、積分が新しい関数を要求する。楕円積分という名前も、この楕円の周長から来ています。
面積が簡単に出るのは、円を縦につぶす変換が面積を一定の比で変えるからでした。
長さはその比で変わりません。斜めの部分ほど縮み方が違うので、円の周長から持ち帰れない。
ラマヌジャンの近似
正確な値が要るときは数値計算になりますが、手で使える近似式があります。ラマヌジャンが 年から 年に出したものです[1]。
もう 1 つ、さらに精度の高い形もあります。 と置く。
は楕円のつぶれ具合を表す量。円なら で、括弧の中が になって に戻ります。
例:、 で比べる
真の値は 。数値積分で求めた値です。
ラマヌジャンの 1 つめに入れると 。
桁まで合いました。手で計算できる式としては十分な精度です。
素朴な なら 。 パーセントほど大きく出ます[1]。
のほうは小さく出る。真の値は、この 2 つのあいだにあります。
例:地球の軌道
地球の公転軌道は楕円で、離心率は 。ほとんど円です。
が小さいときの近似式は 。 なので、括弧の中は になります。
円周との差は パーセント。半径 億 km で 万 km ほどの違いです。
見た目では円と区別がつかない。それでも面積速度や季節の長さには効いてきます。

例:離心率ごとの縮み方
を離心率ごとに並べます。円周を としたときの比。
| 離心率 | ||
|---|---|---|
を に近づけると、楕円は線分につぶれる。長さ の線分を往復するので、周長は 。
が下限です。どんなに細長くしても、円周の パーセントより短くはならない。
面積のほうは なので、 を にすると まで落ちます。周長には下限があり、面積にはない。
級数で書く
は級数に展開できます。 が小さいところでは、はじめの数項で足ります。
第 1 項が円周、第 2 項からがつぶれによる縮み。係数が急に小さくなるので、 が くらいまでなら 2 項で足ります。
が に近い細長い楕円では収束が遅くなる。そういうときこそ、ラマヌジャンの式が効きます。
面積とのちがい
面積は円を縦に 倍する変換で出せました。長さのほうは、この手が通りません[2]。
縦だけを縮めると、横向きの部分は縮まず、縦向きの部分だけが縮みます。線分の向きによって縮み方が違う。
だから円周に一定の数を掛けても、楕円の周長にはなりません。ここが面積と長さの分かれ目です。
と書ける。円の面積に を掛けるだけ
初等関数では書けない。楕円積分か近似式が要る
つまずきやすいところ
を周長の公式だと覚えてしまう誤りが多いところ。これは近似ですらなく、必ず小さめの値になります。
という形も見かけますが、これも別の近似。 と が離れるほどずれが大きくなる。
楕円積分の は、母数の書き方が資料によって と で分かれます。数値表を引くときは、どちらで書かれているかを確かめる[3]。
の楕円で、 はどの値になりますか。
近似のほうも確かめます。
、 をラマヌジャンの 1 つめの式に入れるとどうなりますか。
です。半径 の円周と一致します。
面積は掛け算 1 つで出るのに、周長には新しい関数が要る。同じ楕円から出てくる 2 つの量で、これほど手ざわりが違うのは面白いところです[4]。













a=b なら e=0 で E(0)=2π です。4a×2π=2πa で円周に戻ります。