ささやきの回廊と反射望遠鏡、楕円と双曲線の反射の性質
楕円の壁で囲まれた部屋で、一方の焦点に立ってささやくと、声はもう一方の焦点にだけ届きます。どこで跳ね返っても、必ず反対側の焦点に集まる。
放物線がアンテナに使われる理由と同じ性質が、楕円と双曲線にもあります。もとをたどると、接線が 2 本の焦点半径とどんな角をなすか、という 1 点に行きつく。
反射は接線に対して起こる
曲がった鏡でも、光が当たった点のごく近くでは平らな鏡と変わりません。反射の法則は、その点の接線に対する入射角と反射角が等しい、という形になります。
だから調べるのは接線と 2 本の焦点半径の角度だけ。曲線全体を追いかける必要はありません。
楕円の接線は外角を二等分する
焦点を 、 とし、曲線上の点を とします。楕円では が一定でした。
この式を の動きについて微分すると、 方向と 方向の単位ベクトルの和が、接線と直交すると分かります[2]。
単位ベクトルの和は、2 方向のなす角を内側から二等分する向き。それが接線と直交するので、接線のほうは外角の二等分線になります。
長さの等しい 2 つの矢を足すと、ちょうど真ん中を向いた矢ができる。これが内角の二等分です。
長さをそろえるために単位ベクトルに直してから足す。長さが違うまま足すと、長いほうへ寄ってしまう。
外角を二等分するということは、接線から測った と の角が等しいということ。入射角と反射角が等しくなり、 から出た光は へ向かいます。
最短の道と考えても同じ結論になる
微分を使わない見方もあります。接線の上で点を動かし、 からの距離と からの距離の和が最小になる位置を探す。
接点をのぞく接線上の点は、すべて楕円の外側にあります。外側では距離の和が より大きいので、和が最小になるのは接点[4]。
直線上で 2 点への距離の和が最小になる位置では、直線と 2 本の線分が等しい角をなす。ヘロンの定理と呼ばれる古い結果です。
光は最短の道を通ると考えると、反射の法則がそのまま出てきます。フェルマーの原理から見た説明になる[1]。
例:数値で確かめる
をとります。 なので焦点は 。
点 は で曲線上にあります。
焦点までの距離は 、。足すと で、定義どおりになりました。
接線の式は 、つまり です。法線の向きは 。
この和を と比べると で、きれいに平行です。内角の二等分線が法線と重なっている。
双曲線の接線は内角を二等分する
双曲線では が一定です。差を微分すると、今度は単位ベクトルの和そのものが接線の向きになります[2]。
つまり接線が の内角を二等分する。楕円とちょうど入れかわった形です[1]。
片方の焦点をめざして進んできた光は、双曲線の鏡で跳ね返り、もう片方の焦点へ向かいます。焦点までの道のりがどの経路でも だけ変わる、という言い方もできる。
接線は外角の二等分線。 から出た光は に集まる
接線は内角の二等分線。 へ向かう光は反射して へ向かう
例:双曲線でも数値を見る
では なので焦点は 。
点 をとると、 で曲線上にあります。
、 で、差は 。
接線は を整理して 、方向ベクトルは です。
は の 倍。単位ベクトルの和が接線そのものを向いています。

部屋と望遠鏡
楕円の反射が現れる場所として、ささやきの回廊がよく知られています。ロンドンのセント・ポール大聖堂や、ワシントンの旧下院議場がその形をしています[3]。
医療にも使われます。体の外で起こした衝撃波を楕円の反射鏡で集め、もう一方の焦点に置いた結石を砕く装置がある。
望遠鏡では 3 種類が組み合わさります。主鏡は放物線で、星の光を焦点に集める[1]。
副鏡に双曲線を使う形をカセグレン式と呼ぶ。主鏡の焦点を双曲線の焦点の 1 つに重ねると、光はもう 1 つの焦点へ折り返され、主鏡の穴を抜けて外に出ます。
副鏡を楕円にしたものはグレゴリー式と呼ばれます。どちらも、焦点をもう 1 か所へ移すために二次曲線を使っている[1]。
3 つはつながっている
楕円の焦点の一方を、うんと遠くへ引き離すとどうなるか。もう一方の焦点へ向かう線は平行に近づき、曲線は放物線になります[1]。
放物線が「軸に平行な光を焦点へ集める」のは、遠いほうの焦点が無限のかなたにある楕円だから。3 つの反射の性質は、別々の話ではありません。
まちがえやすい点
入射角と反射角は、法線から測っても接線から測っても同じ結論になります。ただし途中の式では、どちらで測っているかを混ぜないこと。
楕円で「接線が内角を二等分する」と覚えてしまう誤りも多い。内角を二等分するのは法線のほうで、接線は外角です。
双曲線では逆になります。2 つを並べて覚えるより、 と のどちらが一定かに戻るほうが確実。
楕円上の点 における法線について、正しいのはどれですか。
- の内角を二等分する
- の外角を二等分する
- 長軸といつも直交する
双曲線の側も確かめます。
双曲線の一方の焦点をめざして進む光が、鏡で反射したあとに向かう先はどこですか。
- 同じ焦点へ戻る
- もう一方の焦点の方向へ進む
- 軸に平行な向きへ進む
接線が内角を二等分するので、反射した光はもう一方の焦点の方向を向きます。軸に平行になるのは放物線の性質です。
か か。どちらが一定かを思い出せば、接線が内角と外角のどちらを二等分するかまで戻せます。













接線が外角の二等分線なので、それと直交する法線は内角の二等分線になります。長軸との関係は点ごとに変わるので、いつも直交するわけではありません。