単項式を数えると次元も次数も出てくる|代数幾何のヒルベルト多項式
射影多様体 の斉次座標環を、次数ごとに切って次元を数えます。
この数列は、 が大きいところで必ず 1 つの多項式に乗ります[1]。乗ったあとの多項式から、次元も次数も算術種数も読めてしまう。
数えるだけの操作から、図形の量が 3 つまとめて出てくる。ヒルベルト多項式が便利なのは、この一点のためです。
ヒルベルト関数
は、 次の斉次多項式を の上で見たときに残るものの空間です。 の上で消える多項式のぶんだけ小さくなります。
つまり は、 次の斉次多項式の空間の中で「 の上で消えるもの」がどれだけ余次元を持つかを測っています[1]。
が大きいほど、消える多項式は少なくなる。 は の大きさを ごとに数値化した列になります。
例:射影空間そのもの
なら なので、 次の単項式の個数をそのまま数えます[1]。
、 で確かめます。 の 4 次単項式は 個で、指数の組を三角形に並べると数えやすい。

について なので、はじめから多項式です。射影空間では例外を含めてすべての で一致します。
大きい m では多項式に乗る
一般の では、小さい での値が暴れます。それでも先のほうは必ず多項式になります[1][3]。
有理数係数の多項式 がただ 1 つ存在して、十分大きい で が成り立つ。これをヒルベルト多項式といいます。
ここで は の次元、 は の次数です。次元は多項式の次数として、次数は先頭の係数に を掛けた値として現れます[2][5]。
整数値をとる多項式なので、係数は整数とは限りません。 のように、二項係数の形で書くと見通しがよくなります。
例:点の集まり
が の中の相異なる 点なら、大きい で です[1]。
次の斉次多項式を 個の点で評価する写像を考えると、 が十分大きいところでは全射になります。像は で、次元はちょうど 。
小さい では話が変わります。3 点が同一直線上にあれば 、そうでなければ です。
配置の情報は最初の数項に出て、そのあと消えます。ヒルベルト多項式が拾うのは、点の個数だけです。
配置がそのまま出る。同一直線上かどうかで値が変わる
配置の情報が消え、点の個数 δ に落ち着く
例:平面曲線
の中の 次曲線 を考えます。 は で割り切れる 次多項式の全体なので、次元は です[1]。
右辺の計算は展開するだけで出ます。 で成り立ち、実際にはもう少し手前から一致します[2]。
次数は なので次元は 、先頭の係数は なので次数は です。曲線の次数が、定義多項式の次数とちゃんと一致しました。
数列が多項式に乗る様子
の平面曲線で数えます。 は と進み、 は です。
はじめの 2 項だけが外れ、 からは完全に重なります。
外れる範囲の広さにも意味があります。どこから一致し始めるかを測る量が正則性で、計算の手間を見積もるときに効いてきます。
算術種数
多項式に を入れた値から、もう 1 つの不変量が出ます[4]。
は の次元です。この を算術種数といいます。
平面 次曲線で計算します。 なので、符号を反転して を引く。
直線と円錐曲線では 、3 次曲線では 、4 次曲線では です。3 次曲線で が出るところが、楕円曲線が種数 である事実に対応します。
| 1 次(直線) | 0 |
| 2 次(円錐曲線) | 0 |
| 3 次(楕円曲線) | 1 |
| 4 次 | 3 |
| 5 次 | 6 |
なめらかな平面曲線では、この値が位相的な種数、つまり穴の個数と一致します。特異点があると 2 つはずれ、算術種数のほうが大きくなる。
コホモロジーで言い直す
ヒルベルト多項式は、層コホモロジーのオイラー標数としても書けます[6]。
大きい では高次のコホモロジーが消えるので、 の次元だけが残ります。それが最初に数えた にあたります。
と置くと になり、算術種数の定義がオイラー標数の言葉に戻る。数え上げと双対性が、この式でつながります。
埋め込みに依存する
ヒルベルト多項式は だけでは決まりません。斉次座標環が埋め込みで変わるので、多項式も変わります[1]。
を 次のヴェロネーゼ写像で へ入れると、 です。次元は のまま、次数だけが に変わります。
算術種数は で、どの でも のままです。次数は埋め込みで動くのに、種数は動かない。
この違いが、あとで内在的な量と外在的な量を分ける目印になります。
何に使うか
族の中で図形を動かしたとき、ヒルベルト多項式は変わりません。平坦な族に沿って一定に保たれるためです。
図形を平坦に動かす
ヒルベルト多項式は一定
同じ多項式を持つ図形の集まりを 1 つの空間にまとめる
こうしてできる空間がヒルベルトスキームです。「次数 3、種数 1 の曲線をすべて集めた空間」のような対象を、多項式を固定することで切り出せる[6]。
数え上げから始めた不変量が、図形を分類する道具として効いてくる。ヒルベルト多項式が基本的な量とされるのは、この使われ方のためです。









