分離的な射とは何か?ハウスドルフのかわりに対角線を見る
ザリスキ位相では、異なる 2 点を交わらない開集合で分けられません。開集合が大きすぎるためです。
ハウスドルフ性をそのまま課すと、ほとんどのスキームが落ちます。実際、位相としてハウスドルフになるスキームは空か 次元しかありません[5]。
そこで条件の書き方を変えます。ハウスドルフ性には対角線を使った言いかえがあり、そちらならスキームでも意味を持ちます[7]。
ハウスドルフを対角線で言う
位相空間 がハウスドルフであることと、対角線が の中で閉じていることは同値です[1]。
証明は短い。 が対角線の外にあるとき、その点を含む長方形の開集合が対角線と交わらないことと、 と が開集合で分けられることが同じ意味になります。
分ける、という言い方をやめて、閉じている、という言い方に直せた。閉じているかどうかなら、ザリスキ位相でも問題なく判定できます。

対角射
スキームの場合、積のかわりにファイバー積を使います。 に対し、次の射がただ 1 つ定まります[2]。
2 つの射影と合成すると、どちらも恒等写像に戻る射です。これを対角射といいます。
対角射はいつでも埋め込みになります[2]。ただし閉埋め込みとは限りません。この差が分離性です。
が分離的であるとは、 が閉埋め込みになることをいいます[2][5][7]。埋め込みであることは決まっているので、像が閉集合かどうかだけを見ればよい。
アフィンなら必ず分離的
を考えます。対角射に対応する環準同型は、テンソル積から元の環への掛け算の写像です。
これは全射です。全射な環準同型は閉埋め込みを与えるので、アフィンスキームの射はいつでも分離的になります[5]。
分離的でない例は、貼り合わせのところにしか出てきません。1 枚のアフィンで済むうちは、問題は起きない。
例:原点が 2 つある直線
アフィン直線を 2 枚用意します。 と です。
原点を除いた部分 と を、 で貼ります[1]。
できあがるのは、原点だけが 2 つある直線です。原点以外はぴったり重なっているのに、原点だけが分かれて残ります[6]。
この直線は分離的ではありません。対角射の像には原点が 2 つ含まれるのに、閉包には 4 つ現れるためです[5]。
貼り方を変えると結果も変わります。同じ 2 枚を で貼れば、できるのは射影直線で、こちらは分離的です[1]。
原点が 2 つある直線。分離的でない
射影直線。分離的で、しかも固有
判定のしかた
定義に戻らずに済ませる方法もあります。アフィン開集合の組で確かめる形です[3]。
が分離的であることは、 の同じ点の上にある任意の 2 点 について、次を満たすアフィン開集合 、 がとれることと同値です。
原点が 2 つある直線で試すと、2 つ目が破れます。 は原点を除いた直線で、その上の環は です。ところが と の上の環はどちらも にあたるので、 が像に入りません。
分離的だと何が言えるか
まず切断が閉埋め込みになります[4]。 を満たす があれば、 の像は閉集合です。
合成についても素直です。 が分離的なら も分離的になる[8]。手前の射だけをとり出しても性質が残ります。
基底変換でも保たれます。分離的な射を引き戻せば、また分離的な射が出る[5]。
一意性の主張も使えます。分離的な射のあいだでは、稠密な部分で一致する 2 つの射が全体で一致します。極限が 2 つに割れないという性質が、この形で効いてきます。
付値による判定
もう 1 つの判定法が付値環を使うものです[5]。離散付値環の から への持ち上げを考えます。
一般点だけを与えたときに、閉点への延長がたかだか 1 通りしかないなら分離的です。原点が 2 つある直線では、この延長が 2 通りできてしまう。
「極限がたかだか 1 つ」という言い方が、そのまま条件になっている。固有性の判定に使う条件は、ここを「ちょうど 1 つ」に強めたものです。









