逃げ場をふさぐという条件……固有射と射影射
アフィン直線には端がありません。点が遠くへ逃げても、行き着く先が用意されていない。
射影直線には無限遠点があるので、逃げた点にも行き先があります。この違いを射の言葉で書いたものが固有性です[3]。
位相ではコンパクト性が同じ役割をします。ところがザリスキ位相では、アフィン直線もコンパクトになってしまう。コンパクト性をそのまま使えないので、閉写像であることのほうを条件にします[1]。
閉写像だけでは足りない
まず素朴に「閉集合の像が閉集合になる」を課してみます。これでは弱すぎます。
の第 1 座標への射影を見ます。双曲線 は閉集合ですが、その像は原点を除いた直線です。
原点だけが像から抜けます。閉集合を送ったのに、像は閉集合になりません。
自体は閉写像です。ところが を掛けて にした途端に壊れる。1 回の閉写像性では足りないという証拠です。
普遍的に閉
そこで、どんな基底変換をしても閉写像であることを課します[1]。
が普遍的に閉であるとは、任意の に対して が閉写像になることをいいます。
この条件は合成で保たれ、基底変換でも保たれます。しかも行き先について局所的なので、 をアフィンで覆って確かめれば十分です[1]。
固有射の定義
分離的は極限が 2 つに割れないこと、有限型は環が有限生成であること、普遍的に閉が逃げ場をふさぐことにあたります。
3 つのどれを外しても具合が悪くなります。アフィン直線は分離的で有限型ですが普遍的に閉ではなく、無限次元の環を持つスキームは有限型から外れる。
射影空間は普遍的に閉
固有射がたくさんあることを保証するのが次の主張です[1]。
証明の骨格は次のとおりです。行き先について局所的なので としてよく、閉集合 の像の外側が開集合であることを示します。
が像に入らないことは、 が十分大きい で成り立つことと同値になる。ここで中山の補題を使うと、 のまわりの小さい開集合でも同じことが成り立つと分かります[1]。
は分離的でもあり、有限型でもあります。よって固有です。
射影射
が射影的であるとは、ある について閉埋め込み があり、 への射と両立することをいいます。
閉埋め込みは固有で、固有射の合成も固有です[2]。したがって射影射はすべて固有になります。
閉埋め込みは固有
射影空間は S 上で固有
合成して、射影射は固有
逆は成り立ちません。固有だが射影的でない多様体が存在します。3 次元のなめらかで完備な非射影的多様体が知られており、次元 3 が最小です[4]。
曲線と曲面では話が単純になります。既約で分離的な曲線は準射影的、なめらかで完備な曲面は射影的です[4]。
付値による判定
固有性は、離散付値環を使って判定できます[3]。
を離散付値環、 をその商体とします。 が与えられ、 と両立しているとき、 への延長がちょうど 1 つ存在する。これが固有性の判定条件です。

分離性の判定と形がそろっています。分離的が「たかだか 1 つ」、固有が「ちょうど 1 つ」です。
曲線を描いて 1 点だけ抜けたとき、その穴を埋められるか。埋め方が 2 通りあるなら分離的でなく、埋められないなら固有でない。
固有だと何が言えるか
像が閉集合になります[2]。 が 上で固有、 が 上で分離的なら、 の像は の閉集合です。
コンパクト集合の連続像がコンパクト、という主張と同じ形をしています。位相での便利さが、そのまま移ってきている。
大域関数も強く制限されます。固有で連結な多様体の上では、正則関数のなす空間が有限次元になります[3]。代数閉体の上の整な場合には、定数関数しか残りません。
の上に非定数の正則関数がないという事実は、この特別な場合にあたります。アフィン多様体との差がここに出ます。
複素数の上では
複素数体の上で有限型なスキームについては、位相の言葉に翻訳できます[3]。
コンパクト性の代わりという言い方が、ここで文字どおりの意味になります。射影多様体の複素点がコンパクトになるのも、この対応から出ます。









