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Proj - 次数つき環を射影スキームに変える操作

は環 1 つからアフィンスキームを作ります。ところが射影空間は、どんな環の としても出てきません。

の はアフィン平面です。射影直線がほしいのに、次元が 1 つ多い図形が出てしまう。

足りないのは次数の情報です。環に次数を入れ、比だけを見る仕組みを組み込んだ操作が になります[1]。

次数つき環と無関係イデアル

次数つき環とは、加法群として次数ごとの直和に分かれ、掛け算が次数を足す環のことです[7]。

負の次数は許しません。 は部分環になり、正の次数の部分をすべて集めたものを無関係イデアル と呼びます[1]。

で各変数の次数を とすれば、 で です。定数項のない多項式の全体にあたります。

Proj の点は斉次素イデアル

の点は、 を含まない斉次素イデアルです[1][2]。

の部分集合なので、位相はそこから引き継ぐだけで済みます。この空間を斉次スペクトルとも呼びます[1]。

外すのは を含む点です。 でいえば が該当し、これはアフィン平面の原点にあたります。

原点は射影直線の点になりません。錐の頂点を落とす操作が、そのままイデアルの条件として書かれている形です。

標準開集合と次数 0 の局所化

正の次数の斉次元 に対し、 を含まない点を集めた が基本の開集合です[1]。

これらは位相の基底になり、 という都合のよい関係も満たします[3]。

の上の環は、 をそのまま使いません。使うのは次数 の部分だけです[1]。

分子と分母の次数をそろえると、代表を 倍したときの が約分で消えます。斉次座標の比だけが意味を持つという事情が、環の言葉に翻訳されたものです。

貼り合わせてスキームになる

ここまで来ると、あとはアフィンスキームの貼り合わせです。 は と同型で、大域切断もちょうど になります[3]。

を含まない点は、正の次数のどれかの を含まないので、標準開集合のどれかに入ります。つまり たちが全体を覆う。

覆えたので、 はスキームです[2]。しかもこの構成から分離的であることまで従います。

という射も自然に付いてきます[1]。係数環の上の族として射影スキームを見る、という視点がここで手に入ります。

例:射影直線を組み立てる

で書き下します。 の環は、分母を のべきにして次数を にそろえたものです。

どちらも 1 変数の多項式環なので、 と はアフィン直線です。重なりの上では 2 つの座標が逆数の関係で結ばれます[8]。

アフィン直線を 2 本用意する

t と 1/t で重なりを貼る

射影直線ができる

次の図は、その貼り合わせを目で追うものです。上の直線で点が右へ逃げるとき、下の直線では に近づきます。

同じ 2 枚を で貼ると、原点が 2 つある直線という分離的でないスキームになります[1]。貼り方の違いだけで、できあがる図形の質が変わる。

閉集合と、空になる条件

斉次イデアル に対する閉集合は と書きます。 の閉集合はすべてこの形です[1]。

射影版の零点定理と同じ条件が、ここでは環の言葉だけで出ています。体も代数閉性も使いません。

例:準コンパクトとは限らない

はいつでも準コンパクトですが、 はそうとは限りません[4]。

準コンパクトになるのは、有限個の斉次元 で が成り立つときに限ります。変数が無限個ある次数つき環を考えると、この条件が壊れます。

が有限生成なら心配は要りません。 のように普段扱う環は、この条件を満たしています。

重み付き射影空間

変数の次数を にそろえる決まりはありません。 と重みを変えても は作れます[6]。

、次数はすべて 1ふつうの射影平面
、次数が 1, 1, 2重み付き射影空間。特異点が出る
の商射影空間の閉部分スキーム

重みを変えると、なめらかでない点が現れることがあります。 が受けつける入力は広く、出力も射影空間の中には収まりません。

基底変換

は係数のとりかえと素直に交換します。 代数として次数つき環 をとり、 代数 で係数を変えると、次の同型が成り立ちます[1]。

射影空間そのものも、この形で定義できます[5]。 と置き、任意のスキーム の上へは積で運びます。

体を固定せずに射影空間が定義できる。整数環の上で考えたければそのまま考えられる、というのがこの構成の強みです。

よくある誤り

の点を の点と同じだけ集める。 を含む斉次素イデアルは外す
の環に をそのまま使う。次数 の部分 に落とす
次数 でない元を の上の関数と思う。次数がそろっていない比は代表のとり方で値が変わる
の次数が でも を作る。標準開集合は正の次数の斉次元に対して定める
がいつも準コンパクトだと思う。 が有限生成でないと崩れる
の出力がいつも射影空間の中に入ると思う。重みを変えると入らない例がある
が で決まると思う。次数を 倍しても同じスキームが出るように、環だけでは決まらない

参考文献

David Holmes, *Algebraic Geometry* 講義ノート Lecture 2(Proj、ファイバー積、固有射), Universiteit Leiden
The Stacks Project, Tag 01M3: Proj of a graded ring
The Stacks Project, Tag 01MB: 標準開集合はアフィンである
The Stacks Project, Tag 01MD: Proj が準コンパクトになる条件
The Stacks Project, Tag 01ND: Projective space
Proj construction - Wikipedia
Graded ring - Wikipedia
Schéma (géométrie algébrique) - Wikipédia(フランス語))
射影空間はどんな環のスペクトルとしても出てきません。環に次数を入れ、無関係イデアルを含む斉次素イデアルを外し、次数 0 の局所化だけをとり出す。この 3 つで射影スキームが組み上がります。標準開集合の貼り合わせ、閉集合が空になる条件、準コンパクトとは限らない事情、重みを変えたときに現れる特異点、そして基底変換との交換まで。