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2 つの曲線は何点で交わるか?ベズーの定理と交点数の測り方

2 次曲線と 3 次曲線は何点で交わるか。答えは 点ですが、そのまま数えると合いません。

アフィン平面で実数の点だけを見ていると、 より少なくなります。交点が無限遠へ逃げ、複素数の範囲に隠れ、重なって 1 点に見える。3 つの逃げ道があるためです[3]

射影平面に移し、代数閉体をとり、重複度を数える。この 3 つをそろえたとき、はじめて等号になります[2]

等号を壊す 3 つの逃げ道

まず無限遠です。放物線 と直線 はアフィンで 2 点、放物線と直線 は 1 点しか交わりません。足りない 1 点は無限遠にあります。

次に実数です。円 と直線 は、実の交点を持ちません。複素数まで広げると 2 点が現れます。

最後に接触です。円と接線は 1 点で触れているように見えて、交点数としては 2 と数えます。

3 つとも、交点が消えたわけではありません。数え方の枠を広げれば残っている。ベズーの定理は、その枠を明示したものです。

交点数をどう定めるか

での交点数は、局所環を使って定めます[1][5]

での局所環、つまり で分母が消えない有理関数の全体です。そこを の生成するイデアルで割り、残った空間の次元を数えます。

を通らなければ、イデアルは全体になり次元は です。共通成分を持つときは無限大になります。

割ってから次元を数えるという操作が、なぜ交点の個数を表すのか。答えは次の性質にあります。

交点数を決める 7 つの性質

交点数は、次を満たす量としてただ 1 つに決まります[1]

で共通成分を持たないとき、 は非負の整数。持つときは無限大
の外にあれば
座標変換で は変わらない
。等号は共通の接線がないときに限る
成分に分けると は足し算になる
が任意の多項式 で成り立つ

7 番目が計算の要です。 の倍元を足しても交点数が変わらないので、割り算のように次数を下げていける[1]

局所環の商の次元が、この 7 つをすべて満たす。だから交点数の定義として使えます。

例:接する曲線の交点数

放物線 と直線 を原点で見ます。7 番目の性質で の倍元を引くと、 にとりかえられます。

の生成するイデアルで局所環を割ると、 が残るので次元は です。接するとは、交点数が 以上になることでした。

カスプ と直線 ならどうなるか。同じ手順で になり、残るのは の 3 つです。

2 直線が横断する1
放物線と接線2
カスプと接線3
節点を通る一般の直線2

5 番目の性質とも合っています。カスプでは 、直線は なので ですが、接線を共有しているぶん だけ大きくなります。

ベズーの定理

代数閉体の上で、共通成分を持たない射影平面曲線 について次が成り立ちます[2][4]

交点は必ず存在します。和が正になるので、少なくとも 1 点は共有する。相異なる点の個数は多くても 個です[4]

証明の 1 つは終結式を使います。 の多項式と見て終結式 をとると、これは 次の斉次式になり、その根が交点に対応します[2]

歴史は古く、マクローリンが 1720 年ごろに述べ、ベズーが 18 世紀に証明を与えました[3][6]。重複度をどう定めるかが長く問題として残り、任意の代数閉体で通る形にまとまったのは 20 世紀です。

例:2 つの円錐曲線

と別の円錐曲線は、重複度こみで 点で交わります。

同心円 2 つを実平面で見ると、交点は 1 つも見えません。射影平面の無限遠を見ると、どの円も という 2 点を通っています。

同心円はこの 2 点でそれぞれ重複度 2 で接している。実の平面から見えないところで、 という数はきちんと保たれています。

例:3 次曲線と直線

3 次曲線と直線は 点で交わります。この事実が、楕円曲線の群構造を支えています。

3 次曲線に直線を引く

交点はちょうど 3 点

2 点を決めれば 3 点目が決まる

2 点を通る直線を引き、残る 1 点を見つける。この操作が加法の定義になり、結合法則までもがベズーの定理の系として証明できます。

接線を引いた場合も同じです。接点を 2 回数えるので、やはり合計は 3 になります。

高次元へ

の中で 個の超曲面をとり、共通部分が有限なら、点の個数は重複度こみで次数の積になります[3]

共通部分が有限でないときは、この主張は成り立ちません。無限個の点を持つ成分が出た時点で、数える対象が変わってしまうためです。

一般の状況では、交点数は交叉理論の枠組みで定義されます。局所環の長さとして定める方法が、そのまま高次元へ持ち上がる形です[3]

よくある誤り

アフィン平面で数えて等号を期待する。無限遠へ逃げた交点が抜ける
実数体で数えて等号を期待する。代数閉体でなければ足りない
相異なる点の個数を と思う。重複度を数えたときの合計が一致する
共通成分があっても定理が使えると思う。交点数が無限大になり、和が定義できない
接するときの交点数を 1 と数える。触れ方の深さが交点数に出る
の等号がいつでも成り立つと思う。接線を共有すると真に大きくなる
高次元で共通部分が無限でも次数の積になると思う。有限であることが前提

参考文献

William Fulton, *Algebraic Curves: An Introduction to Algebraic Geometry*, §3.3 Intersection Numbers(Michigan State University 講義用 PDF)
J. S. Milne, *Algebraic Geometry*, course notes v6.10, Chapter 6 n(Bézout's theorem)
Bézout's theorem - Wikipedia
Satz von Bézout - Wikipedia(ドイツ語)
Intersection number - Wikipedia
Théorème de Bézout - Wikipédia(フランス語)
アフィン平面で実の点だけを数えると、交点はいつも足りません。無限遠へ逃げるぶん、複素数に隠れるぶん、接して重なるぶんが抜けるためです。射影平面と代数閉体と重複度をそろえると、合計はちょうど次数の積になる。交点数を局所環の商の次元として定め、それを決める 7 つの性質を並べ、カスプで 3 になる計算から 3 次曲線の加法までたどります。