鍵穴の経路で多価関数を積分する、ガンマ関数の相反公式まで
指数 が整数でないので、 は複素平面へ延ばすと一価になりません。 を原点のまわりに 周させると、値が 倍になって戻ってくる。
一価でない関数は、そのままでは積分できません。切れ目を入れて分枝を つ選び、その切れ目に沿って進む経路を作ります。それが鍵穴の経路です[2]。
多価性は邪魔者に見えて、この計算では主役になります。上下で値がずれるからこそ、 本の直線部分が打ち消し合わずに残る。
切れ目を正の実軸に置く
偏角の範囲を と決めます。切れ目は正の実軸で、そこを境に値が飛ぶ。
切れ目のすぐ上では なので、 です。すぐ下では になり、。
同じ実数を代入しているのに、上と下で答えが違います。この差が計算の手がかり。

色が薄いところが 、濃いところが の大きいところです。正の実軸をまたぐ瞬間に と が接して、値が不連続になる。
鍵穴を回す
経路は 本です。切れ目のすぐ上を から まで進み、半径 の円をほぼ 周し、切れ目のすぐ下を から まで戻り、半径 の小円で逆向きに回る。
切れ目をまたがないので、経路の上で は一価のまま。囲まれた領域の中には の極が つだけ入ります。
直線 2 本が残る
上下の直線は、幾何的には同じ線分を往復しています。ふつうなら打ち消し合って になるところ。
ここでは値が違うので消えません。上側が 、下側は向きが逆で係数が付いた 。
です。 なので、指数の は効きません。
左が の回転、右が の回転です。 が 周するあいだに、右は 周ぶんしか回らない。
円が消える条件
大小 つの円が消えることを確かめます。ここで という条件が両側から効きます。
大きい円では 、長さが なので、積は です。 なら へ落ちる。
小さい円では 、長さが で、積は 。 なら へ落ちます[2]。
上限と下限が別々の理由から来ています。 を に近づけると外が危うくなり、 に近づけると内が危うくなる。
留数を計算して整理する
極 は、選んだ分枝では の点です。
代入します。
左辺の係数を でくくると、正弦の形が出ます。
両辺を割って 。 がきれいに消え、実数の値が残ります。答えが実数になることが、計算のいちばん手軽な検算です。
ガンマ関数の相反公式そのもの
この積分はベータ関数の別表示です。 の 置換で得られる形で、いまの場合は [4]。
したがって、いま計算したものは次の等式にほかなりません。
相反公式、あるいは余因子公式と呼ばれるものです。鍵穴 回で、ガンマ関数の対称性が出てしまう。
グラフが を軸に左右対称です。 という積の形から見れば当たり前で、 と を入れかえても変わらない。
は手で確かめられる
真ん中の値だけは、複素解析なしで出ます。
と置くと で、 です。
公式に を入れると 。一致します。 から も出る。
分母を 2 乗すると
同じ鍵穴で、分母の次数を上げた形も片づきます。
が 位の極になるので、留数は 回微分してから代入します。 の範囲が まで広がるのは、大きい円の評価が に緩むため。
ベータ関数で書けば で、 を使えば右辺に一致する。
分母を にすると
分母の を に替えても、同じ形の答えが出ます。
が本文の式、 と を入れると で、 に一致します。
鍵穴でも解けますが、この形では開き角 の扇形のほうが軽い。 の半直線に沿って戻ると、被積分関数が 倍になり、内側の極が つで済みます。
分母の対称性に合わせて経路の開き角を選ぶ、という発想です。 は の回転で不変なので、その角度をとる。
切れ目をどこに置くか
正の実軸を切ったのは、積分区間がそこにあるからです。区間の上に切れ目を重ねることで、上下の差として区間の積分をとり出せる。
切れ目を負の実軸に置くと、 の極が切れ目に乗ってしまいます。極と切れ目は重ねられません。
を掛けて鍵穴を回すという手もあります。 が上下で ずれるので、分枝を持たない有理関数でも同じ仕掛けが使える。
手順のまとめ
番目を飛ばして式だけ書くと、収束しない場合にも答えが出てしまいます。指数の範囲は結論の一部です。










