∫0∞1+x2logxdx=0
被積分関数は x=1 の前後で符号が変わり、0 から 1 までが −G、1 から ∞ までが +G になる。G=0.9159656 はカタラン定数で、初等関数では書けない値です[1]。
0 という値は、初等関数では書けない値どうしの打ち消し合いから来ています。
対数の入った積分は、鍵穴の経路をそのまま使っても求められません。切れ目の上と下で log の差が定数になり、欲しい項が引き算で消えてしまうため[2]。そこで logz を 2 乗してからかけます。
x を 1/x に置きかえる
複素解析を持ち出す前に、置換で確かめます。
x=1/t とすると dx=−dt/t2、logx=−logt、1+x2=(1+t2)/t2。区間の向きもいれかわる。
∫0∞1+x2logxdx=−∫0∞1+t2logtdt
自分自身の −1 倍に等しいため、値は 0 に決まる。収束さえ言えれば、複素解析は要りません。
x=eu に直すと奇関数になる
x=eu と置くと、この打ち消し合いが目で見える形になります。dx=eudu で、分母は 1+e2u。
∫0∞1+x2logxdx=∫−∞∞1+e2uueudu
分母と分子を eu で割ると、分母が e−u+eu=2coshu に変わる。
∫−∞∞1+e2uueudu=∫−∞∞2coshuudu
coshu は偶関数で、u は奇関数。積は奇関数だから、u 軸の左右で符号だけが逆の同じ形になります。
u→−u の折り返しが、もとの x→1/x にあたります。0 になる条件も、この形で言える。f(eu)eu が偶関数なら、log をかけた積分は 0 です。
1/(1+x2) は 1/(2coshu) になり偶関数。1/(1+x)2 も 1/(4cosh2(u/2)) で偶関数。こちらの積分も 0 になる。
分母を 2 乗した 1/(1+x2)2 と、定数を入れた 1/(x2+a2) は偶関数になりません。この 2 つの値は、あとの節で計算します。
鍵穴に logz を 1 乗でかける
一般の f に向けて、複素平面での計算を組み立てる。まず素直な形が通らないことを見ておく。
切れ目を正の実軸にとった鍵穴で、f(z)logz を 1 周させます。切れ目のすぐ上では logz=logx、すぐ下では logx+2πi。
∫0∞f(x)logxdx−∫0∞f(x)(logx+2πi)dx=−2πi∫0∞f(x)dx
log の項どうしが引き算で消え、残るのは f だけの積分です[2]。
消えてしまう形にも使い道があります。この式は、有理関数を 0 から ∞ まで積分する公式そのもの[3]。偶関数でなくても半直線のまま扱えます。
2 乗すると log が残る
そこで (logz)2 をかけます。上下の差を展開する。
(logx)2−(logx+2πi)2=−4πilogx+4π2
第 1 項に logx が入っています。第 2 項は f だけの積分で、1 乗の式から既知として片づけられる。
∮f(z)(logz)2dz=−4πi∫0∞f(x)logxdx+4π2∫0∞f(x)dx
左辺は留数で計算できます。右辺の第 2 項が分かっていれば、未知は第 1 項だけ[3]。
1 周で logz の虚部が 2π 増えます。1 乗では差が定数の −2πi になり、2 乗では交差項として logx が残る。次数を 1 つ上げるたびに、1 つ下の次数の値を使って新しい値が決まります。
使える条件は、f=p/q が有理関数で、q の次数が p より 2 以上高く、x≥0 に極を持たないことです[3]。
大きい円では ∣f∣ が R−2 で落ち、周の長さと (logR)2 をかけ合わせても 0 へ向かう。小さい円も r(logr)2 で消えます。
鍵穴で 1/(1+x2) を計算する
f(z)=1/(1+z2) で実際に回します。極は ±i の 2 つで、0<argz<2π ととった分枝では argi=π/2、arg(−i)=3π/2 になる。
どちらも 1 位の極だから、留数は分母を微分した 2z で割れば求められる。z=i では 2i、z=−i では −2i です。
Resz=i1+z2(logz)2=2i(iπ/2)2=8iπ2
Resz=−i1+z2(logz)2=−2i(3iπ/2)2=−89iπ2
和は −iπ2 で、2πi をかけると左辺は 2π3。
右辺に要る ∫0∞dx/(1+x2) は arctan から π/2 と分かるため、第 2 項は 4π2×π/2=2π3 になります。
2π3=−4πi∫0∞1+x2logxdx+2π3
両辺から 2π3 を引くと、積分は 0。置換で計算した値と一致する。
arg(−i) を −π/2 と読むと、この計算は合いません。分枝を 0<argz<2π と決めた以上、−i の偏角は 3π/2 です。
切れ目を負の虚軸へ向ける
切れ目を置く場所は、正の実軸に限らない。−π/2<argz<3π/2 と決めると切れ目は負の虚軸へ移り、上半平面の半円だけで経路が閉じる[4]。囲む極は z=i の 1 つだけ。
負の実軸の上では偏角が π なので、log(−t)=lnt+iπ になります。logz/(1+z2) をこの経路で積分すると、直線 2 本の寄与が次の形にまとまる。
2∫0∞1+x2lnxdx+iπ∫0∞1+x2dx=2πiResz=i1+z2logz
右辺は 2πi×(iπ/2)/(2i) で iπ2/2 です。左辺の第 2 項も iπ×π/2=iπ2/2。差し引きで第 1 項が 0 に決まります。
この経路では logz を 1 乗のままかけても対数が消えません。負の実軸で iπ が足されるだけなので、実部と虚部を分ければ 2 つの積分が同時に決まる。
(logx)2 の積分まで上げる
同じ経路で (logz)2 を回すと、次数が 1 つ上の値も決まります。負の実軸の上では (lnt+iπ)2=(lnt)2+2πilnt−π2 になる。
2∫0∞1+x2(lnx)2dx+2πi∫0∞1+x2lnxdx−π2∫0∞1+x2dx=2πiResz=i1+z2(logz)2
右辺は 2πi×(iπ/2)2/(2i) で −π3/4 です。左辺の第 2 項は前の節の 0、第 3 項は −π2×π/2=−π3/2。
2∫0∞1+x2(lnx)2dx=−4π3+2π3=4π3
両辺を 2 で割ると π3/8 になります[4]。次数が 1 つ下の log の積分が 0 だったため、値を決めたのは π2 の項だけ。
分母に定数を入れる
a>0 として一般化すると、0 になった理由がはっきりします。
∫0∞x2+a2logxdx=2aπloga
x=at と置くと logx=loga+logt に分かれます。
loga の項は a1∫0∞1+t2dt=2aπ との積として残り、logt の項が前の節の 0 になる。
a=1 で右辺が 0、a<1 で負、a>1 で正です。x=eu の形に直すと eu/(e2u+a2) で、偶関数になるのは a=1 のときだけ。
a を大きくすると重みが x の大きい側へ移り、logx が正の領域を強く数えるようになる。ただし分母全体も同時に大きくなるため、a=e での π/(2e)=0.5778 が上限。
a で微分して分母の 2 乗へ
一般形は、分母が 2 乗の積分ともつながっている。両辺を a で微分します。
−2a∫0∞(x2+a2)2logxdx=2a2π(1−loga)
a=1 を入れると、左辺は −2∫0∞logx/(1+x2)2dx、右辺は π/2。
∫0∞(1+x2)2logxdx=−4π
0 にならないのは、eu/(1+e2u)2 が偶関数でないためです。(1+x2)−2 は (1+x2)−1 より速く落ちるため、logx が負である x<1 側の重みが残り、値も負になる。
まちがえやすい点
分枝を決めたら、極の偏角もその範囲で読みます。0<argz<2π をとったなら arg(−i) は 3π/2 です。
切れ目の上に極を置きません。1/(1+x2) で正の実軸を切れるのは、極が ±i にあるためです。
既知として使う ∫0∞fdx を先に確かめます。この値が違うと log 側の答えも狂う。
f の落ち方が ∣z∣−2 より遅いと、log をかけたぶん大きい円の寄与が消えません。
どれも分枝の決め方から来ています。切れ目をどこに置き、偏角をどの範囲で読むかを先に書いてから、計算に入る。
参考文献
Catalan's constant. Wolfram MathWorld. Michael Eisermann. Integralsätze für komplexe Funktionen, Höhere Mathematik 3. Universität Stuttgart. Gérald Tenenbaum. Analyse complexe, notes de cours. Université de Lorraine.
$\int_0^{\infty}\log x/(1+x^{2})\,dx$ は $0$ です。$x = e^{u}$ と置くと被積分関数が $u/(2\cosh u)$ という奇関数になり、左右の面積が同じで符号だけ逆と分かる。片側だけならカタラン定数 $G$ が残り、初等関数では書けない値どうしが足すと消えます。鍵穴に $\log z$ を 1 乗でかけると上下の差が $-2\pi i$ の定数になって対数が落ちるため、2 乗してかけ、交差項として $\log$ を残す。切れ目を負の虚軸へ向けて上半平面の半円で済ませる道、同じ経路で $(\log x)^{2}$ の積分が $\pi^{3}/8$ に決まる仕組み、分母に定数 $a$ を入れた一般形を $a$ で微分して $-\pi/4$ を取り出すところまで。