1−41+91−161+⋯=12π2
符号が交互に付いただけで、値がちょうど半分になりました。符号なしの和は π2/6。
この 2 分の 1 は偶然ではありません。留数で計算すると、πcotπz を πcscπz に置きかえるだけで両方が出ます[1]。符号を運ぶ役目を、重みの側が引き受ける。
留数が交互に ±1 になる
cscπz=1/sinπz の極は、cot と同じくすべての整数です。違うのは留数のほう。
z=n の近くで sinπz≈(−1)nπ(z−n) なので、πcscπz の留数は (−1)n になります。
Resz=nπcscπz⋅f(z)=(−1)nf(n)
cot のときは分子の cosπn=(−1)n が分母の (−1)n と打ち消し合って 1 でした。csc には分子がないので、符号がそのまま残る。
極の位置は変わらず、留数の符号だけが交互に入れかわります。この 1 箇所の違いで、拾える級数が交代級数になる。
正方形の上での大きさ
cot と同じ正方形 CN を使います。頂点は (N+21)(±1±i)。
上下の辺、つまり ∣y∣>1/2 では、∣cscπz∣≤2/(1−e−π) でおさえられます。eπy と e−πy の差が下から効く。
左右の辺、つまり z=±(N+21)+iy では ∣cscπz∣=∣sechπy∣≤1 です[1]。
どちらも N に依存しません。cot とまったく同じ形の評価で、証明もそのまま通ります。
cot が 1 に落ち着くのに対し、csc は実軸から離れると 0 へ向かいます。csc のほうが上下の辺で有利。
この差のおかげで、f の減衰が 1/∣z∣ 程度しかない場合でも、csc 側は通ることがあります。
交代和の定理
条件は cot のときと同じで、∣f(z)∣≤M/∣z∣k(k>1)です[1]。
n=−∞∑∞(−1)nf(n)=−∑{πcscπz⋅f(z) の f の極での留数}
証明の流れは変わりません。CN 上の積分が 0 へ落ち、2 種類の留数の和が符号違いで等しくなる。
η(2) を出す
f(z)=1/z2 をとります。原点は f の極でもあるので、その項を外して留数側で数える。
1/sinw=w1+6w+3607w3+⋯ なので、次のようになります。
πcscπz=z1+6π2z+3607π4z3+⋯
cot の展開と見比べると、z の係数の符号が逆で、大きさは 2 倍です。−π2/3 に対して +π2/6。
z2 で割ると 1/z の係数は π2/6。総和定理から次を得ます。
n=0∑n2(−1)n=−6π2
左辺は 2∑n≥1(−1)n/n2 なので、符号を直して π2/12。冒頭の値です。
半分になる理由
ζ(2) と η(2) の比が 1/2 になったのは、偶数の項を 2 回引くからです。
η(s)=n=1∑∞ns(−1)n+1=(1−21−s)ζ(s)
偶数の項だけ集めると 2−sζ(s)。これを 2 倍して引けば交代和になります。
s=2 なら 1−2−1=1/2 で、確かに半分。s=4 なら 1−2−3=7/8 で、η(4)=7π4/720 です。
s=1 では ζ(1) が発散するのに、1−20=0 が掛かって η(1)=log2 という有限値が残る。0×∞ の形が意味を持つ、めずらしい場所です。
収束の速さが違う
同じ 1/n2 を足しているのに、交代させると収束がずっと速くなります。
交代級数は目標をまたぎながら寄るので、次の 1 項が誤差の上界になります。片側から近づく和には、この手軽な目安がない。
数値計算では交代形に書きかえてから足す、という手が使えます。η を計算して (1−21−s) で割れば ζ が出る。
分母に定数を入れる
f(z)=1/(z2+a2) をとると、双曲線正弦が出ます。
n=−∞∑∞n2+a2(−1)n=asinhπaπ
cot 側では coth が出たところに csch が来ます。csc(πai)=1/sin(iπa)=1/(isinhπa) から出る形。
a を大きくすると、右辺は e−πa の速さで消えます。coth 側が π/a でゆっくり落ちたのと対照的。
2 つの曲線の離れ方が、双曲線余接と双曲線余割の違いです。coth は 1 に、csch は 0 に向かう。
ライプニッツの級数
f(z)=1/(z+a) をとると、減衰が 1/∣z∣ しかないので k>1 の条件から外れます。それでも csc の側では、対称に足すという条件を付ければ通る。
f の極 z=−a での留数は πcsc(−πa)=−π/sinπa です。
n=−∞∑∞n+a(−1)n=sinπaπ
a=1/2 を入れます。左辺の項は 2(−1)n/(2n+1) で、n≥0 の側と n≤−1 の側が同じ値になる。
4(1−31+51−71+⋯)=π
ライプニッツの級数です。円周率の古典的な表示が、重みを csc にした総和定理の 1 例として出てきます。
csc と cot の使い分け
符号が交互に付く和なら πcscπz、付かないなら πcotπz
展開係数は csc のほうが符号が正で、cot の 2 倍の大きさ
実軸から離れたところでは csc が 0 へ、cot が 1 へ向かう
減衰が弱い f でも csc なら通ることがあります。対称に足す条件は要ります
f が偶関数なら n と −n が同じ符号を持つので、和が 2 倍で残ります
f が奇関数だと打ち消し合い、cot のときと同じく中身のない式になります
csc の展開が cot と符号違いで 2 倍になるところが、η と ζ の比 (1−21−s) の正体です。同じ事実を、展開係数の側から見るか、偶数項を引く操作の側から見るか。
参考
Noah A. Hughes. Infinite Series and the Residue Theorem. Appalachian State University, 2013. Jerry Shurman. Contour Integrals, Math 311 Complex Analysis. Reed College. Leibniz series. OEIS Foundation.
符号を交互に付けるだけで、$1/n^2$ の和は $\pi^2/6$ から $\pi^2/12$ へ半分になります。留数の側では、重みを $\pi\cot\pi z$ から $\pi\csc\pi z$ へ置きかえるだけ。極の位置は同じで、留数が $1$ から $(-1)^n$ に変わるためです。展開係数が $\cot$ と符号違いで $2$ 倍という事実が、そのまま $\eta(s) = (1-2^{1-s})\zeta(s)$ の正体になる。実軸から離れると $\csc$ は $0$ へ向かうので評価が緩く、減衰の弱い $f$ でも通ります。ライプニッツの級数、$\pi/(a\sinh\pi a)$、収束の速さの違いまで。