0 から 2π までの三角関数の積分を単位円へ載せかえる|複素解析
の積分なのに、答えに の痕跡がありません。三角関数の有理式を から まで積分すると、いつもこういう形の値になります。
理由は、その区間がちょうど単位円 周ぶんだからです[1]。 と置けば、実数の積分がそのまま複素平面の周積分に変わる。変わった先では、有理関数の留数を拾うだけの計算になります。
置き換えの 3 点セット
使う道具は つです。どれも から直に出ます。
つ目と つ目はオイラーの公式そのもの。 を使って書き直しただけです。
つ目は から出ます。 が から まで動くと、 は単位円を反時計回りに 周する。
区間が から でないと、この置き換えは効きません。始点と終点が離れて、閉曲線にならないためです。
例 1:分母に が つ
として、冒頭の積分を実際に計算します。
分母を通分すると が つ約分され、 次式が残ります。
次方程式 の根を とすると、解と係数の関係から です。
根の積が になる
積が ということは、片方が単位円の内側なら他方は必ず外側にあります。 つは単位円に関して反転の位置にある。
という条件は、根が円周に乗らないための条件です。 になると判別式が になり、根が重なって円周上に来る。
内側の根を とすると、留数は です。 と整理できる。
を入れると で、定数の積分に戻ります。 では発散し、根が円周に乗る瞬間と一致する。
例 2: 乗になっても同じ手
分母が 乗になると、内側の極が 位になります。
留数の公式で 回微分すれば出ますが、もっと楽な道もあります。例 1 の両辺を で微分し、符号を変えるだけ。
パラメータで微分する手は、同じ形の積分族をまとめて片づけられます。 乗、 乗も同じように下りていく。
例 3:分子に がある
分子に三角関数が入っても手順は変わりません。 と置き換えます。
置き換えると が出るので、原点が 位の極になります。 のほうからは と の極が出て、内側は だけ。
原点の留数が 、 の留数が です。足して 、係数を掛けて 。
分子の三角関数が原点に極を作る、という点が見落としやすいところ。もとの積分には原点も何もありませんが、 を代入した時点で生まれます。
ポアソン核が顔を出す
もう つ、意味のある例を挙げます。 として次を計算する。
分母は を書き下したものです。。
これを 倍したものがポアソン核で、単位円板のディリクレ問題を解く重み関数になります。 のとき積分は で、核の全積分がちょうど に規格化される。
を に近づけると、核は原点のまわりへ尖っていきます。面積は のままなので、境界の値をその 1 点だけから拾う形に近づく。
円板の内部で調和な関数が、境界の値だけで決まるという事実の計算面が、この積分です。
例 4: が入る
有理式でなくても、単位円上で正則なら同じ手が使えます。
もとになるのは という、テイラー係数の公式です。 を代入して実部をとるだけ。
という不思議な形の被積分関数が、階乗の逆数を返す。 なら 、 なら です。

右の曲線が です。大きさが 、偏角が になっている。
一般の形
有理式に限れば、次のようにまとめられます[1]。
を有理関数とし、単位円上に極がないとします。このとき から までの積分は、置き換えた有理関数の単位円内部の留数の和に を掛けたものになる。
条件は「単位円上に極がない」だけ。この確認を飛ばすと、発散する積分に有限の値を付けてしまいます。
うまくいかない場合
区間が から なら、被積分関数が で不変かどうかを見ます。不変なら の積分の半分です。
検算
例 1 の答えは と の対称式です。 で値が変わらないはずで、確かに は変わらない。
を に近づけると 、 を に近づけると 。両端の振る舞いが、被積分関数の見た目と合っています。
次元でも確かめられます。 と を同じ倍率 で伸ばすと、積分は 倍になるはず。右辺の も 倍なので、つじつまが合う。








