フレネル積分〜45 度の扇形をとると振動する積分が収まる
被積分関数は が大きくなっても小さくなりません。 は のあいだを行き来し続けます。それでも積分は有限の値へ収まる。
理由は振動の速さです。 が加速して増えるので、山と谷の幅がどんどん狭くなる。隣り合う山と谷が打ち消し合い、残りが へ縮む。
複素平面では、この打ち消し合いを 度の方向へ回すだけで、ふつうのガウス積分に化けます[1]。
絶対収束ではない
と置くと、振動と減衰の関係が見えます。
はゆっくりとしか減りません。絶対値をとると の発散が残る。
打ち消し合いに支えられた収束です。ディリクレ積分と同じ立場で、順序を入れかえてよい積分ではありません。
度で何が起きるか
の大きさを見ます。 なら なので、次のようになる。
実軸の上では なので のままです。虚軸の上でも 。減衰が効くのは、そのあいだの斜めの方向だけになります。
いちばん深く減るのが の方向、つまり 度の半直線です。そこでは とおくと で、。
振動する関数が、ガウス関数そのものに変わりました。

濃い部分が実軸と虚軸に張りついています。減衰が効くのは内側で、いちばん効くのが対角線。
扇形をとる
そこで、原点から実軸を まで進み、円弧で 度まで上がり、 度の半直線を原点へ戻る経路を作ります。開き角が の扇形です[5]。
は整関数なので、この扇形の内側に特異点がありません。周積分は です。
第 3 項の符号が負なのは、半直線を原点向きに戻るからです。 から が出て、係数として外へ出る。
弧が消える理由
弧の上では で、 です。 なので、大きさは次のようになる。
の端では指数が で、まったく減衰しません。この端の近くをどう処理するかが山場になります。
では が成り立ちます[5]。ジョルダンの不等式を に当てた形で、正弦の弧を弦で下からおさえている。
の程度なので へ落ちます。減衰しない端があっても、そこは幅が狭いので効かない。
破線が です。実線を上からおさえていて、こちらは素直に積分できる。
ガウス積分を借りる
弧が消えたので、残りは 本です。
右辺のガウス積分は です。極座標に直して 重積分にする、あの手で出る値。
を代入します。
実部が の積分、虚部が の積分です。実部と虚部が等しいので、 つの値が同じになる。
です。 度という角度が、実部と虚部を対等に分けています。
コルニュのらせん
途中までの積分を、実部を横軸、虚部を縦軸にとって描くと、二重のらせんが現れます[2]。
コルニュのらせん、あるいはクロソイド曲線と呼ばれます。曲率が弧長にまっすぐ比例するという性質を持つ曲線。
直線から円弧へ滑らかにつなぐ形なので、道路や鉄道の緩和曲線に使われます。ハンドルを一定の速さで切ったときの軌跡がこれ。
らせんが 点へ巻きついていく様子が、そのまま積分の収束です。振れ幅が縮んでいく代わりに、回る速さは上がっていく。
光のほうが先だった
この積分は、フレネルが 年代に光の回折を扱うなかで現れたものです[2]。
ナイフの刃のような直線の縁に光を当てると、影の中に光が回り込み、明るいところには縞ができる。その明暗の強さが、らせんの上の 点を結ぶ弦の長さの 乗になります。
幾何光学だけでは影の境界がくっきり切れるはずですが、実際にはにじむ。にじみ方の計算に、この積分が要る。
乗への一般化
指数を から に変えても、同じ議論が通ります。扇形の開き角を にとればよい[5]。
を入れると と から、さきほどの値に戻ります。
| 側の値 | 側の値 | |
|---|---|---|
が大きくなると 側が に近づき、 側が に落ちます。 の立ち上がりが急になり、 をほぼそのまま数えるようになるため。
規格化の違いに注意
文献によって と の定義が違います。DLMF は指数に を入れた形をとります[3]。
この定義だと極限がきれいな になります。 と置換すれば、本文の値と行き来できる。
数表や公式集を引くときは、まずどちらの規格化かを確かめます。 と のどちらが出てくるかで見分けられる。
ガンマ関数から見る
置換した形に戻ると、ガンマ関数の一部として読めます。
のときが、係数の違いを除いてフレネル積分です。右辺の が 度の回転そのもの。
扇形の開き角として現れた角度が、ガンマ関数の側では偏角として顔を出しています。同じ回転を、経路で書くか値で書くかの違い。
補足
と は、どちらも です。本文の値の 倍で、置換の係数がそのまま出ている。
指数を に落とすと崩れます。 は が振れ続けるだけで、収束しない。
公式に を入れると から という値が出ますが、意味を持ちません。弧の評価をやり直すと、上界が の形になり、 では を大きくしても定数のまま残る。
振動が速くなることと、積分が収まることは別の話です。速さの増え方が、幅の縮み方に追いついているかどうかで決まる。










