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English

ガウス関数に cos bx を掛けた積分(長方形の経路で虚軸へずらす)

右辺にもガウス関数が出ています。振動する因子を掛けて積分したのに、形が変わらない。

複素平面では、この積分はほとんど何もしていません。平方完成して、経路を虚軸の方向へ少しずらすだけ[2]。ずらしても値が変わらないことをコーシーの定理が保証し、ずらした先ではただのガウス積分になります。

まず平方完成する

の実部として扱います。 は偶関数、 は奇関数なので、虚部は最初から

括弧の中を展開すると になり、符号を戻すと確かに合います。指数の が外へ出て、残りが平行移動しただけのガウス関数。

右の積分の中身は、実数を代入しているのに複素数です。 と置きたくなりますが、そうすると積分の道が実軸から だけ下がった水平線に変わる。

実数の置換では届かない場所です。ここから先が複素解析の仕事になります。

は整関数

には特異点がありません。多項式と指数関数の合成なので、複素平面のどこでも正則です。

閉じた経路に沿って積分すれば、中身によらず 。この一言だけで、経路を自由に動かす許可が出ます。

ただし、動かした先で端が暴れないことは別に確かめます。 なので、 が大きいところでは逆に爆発する。

canvas: 置き場が受け取りませんでした

濃い部分が虚軸に沿って伸びています。高さを固定した細い帯の中で動かすぶんには安全で、上へ伸ばそうとすると壊れる。

長方形をとる

そこで、高さ の細長い長方形を使います。下の辺が実軸、上の辺が虚部 の水平線。

canvas: 置き場が受け取りませんでした

縦の辺は で、 です。大きさは

は固定した定数なので、 を大きくすればいくらでも小さくなります。辺の長さは のままなので、積分も へ落ちる。

上下の辺が等しくなる

周積分が で、縦の辺が消えました。残った上下の辺が、向きの違いを除いて等しい。

左辺は です。右辺は と書けば になる。

平方完成の式と見比べると、符号を合わせて欲しかった積分そのもの。あとは を掛け戻すだけです。

を入れると で、ふつうのガウス積分に戻ります。検算はこれで足ります。

振動を速くすると値が消える

を大きくすると、 の山と谷が細かくなります。ガウス関数の 個の山の中に何度も出入りするようになり、打ち消し合いが進む。

canvas: 置き場が受け取りませんでした

を上げると、正の面積と負の面積がほとんど相殺します。残る量が で、これもガウス関数の形。

微分で解く道と比べる

複素平面へ出ない解き方もあります。 で微分する手です。

右辺を部分積分します。 の原始関数が なので、微分側に を回す。

階の線形微分方程式になりました。 を初期条件として解けば です。

答えは同じですが、見えるものが違います。微分の道は「なぜガウス関数が戻ってくるか」を式の形で説明し、経路の道は「実軸を少し下げただけ」という位置の話に翻訳する。

半直線にすると誤差関数が出る

積分を から に切ると、話が急に難しくなります。長方形の左の辺が虚軸に乗り、そこが消えないためです。

左の辺では 。減衰どころか増える向きです。長さが有限なので発散はしませんが、値が残る。

右辺はドーソン関数と呼ばれ、 と書かれます[4]。初等関数では書けません。

側は偶関数なので半分にするだけで済み、 です。 側は奇関数ではないので半分にできず、消えなかった辺のぶんが誤差関数の仲間として顔を出す。

区間を半分にしただけで初等関数から外れる。対称性が使えるかどうかが、どれだけ効くかがよく分かる例です。

幅が狭いほど、相手は広がる

ここで出てきたのは、ガウス関数のフーリエ変換です[2]

もとの幅が 、変換後の幅が です。片方を狭めると、もう片方が同じ割合で広がる。

のときだけ両者が一致します。 が、フーリエ変換で自分自身に戻る関数。

積の形が保たれること、幅の積が一定になることが、量子力学の不確定性関係とガウス波束の役割につながっています。

係数を虚数にしてもよい

得られた は、両辺とも の整関数です。実数の すべてで一致するので、一致の定理からあらゆる複素数の で成り立つ。

を入れます。 なので、左辺の振動が双曲線関数に変わる。

右辺は減衰から増大へ裏返りました。 が指数的に伸びても、 のほうが強いので積分は収束する。

平方完成の側から見れば、ずらす向きが虚軸から実軸に変わっただけ。長方形を縦に置くか横に置くかの違いです。

高さの選び方が経路を決める

長方形が効くのは、高さをうまく選ぶと上下の辺が対応するときです。ガウス関数では平方完成が高さを教えてくれました。

周期を持つ関数では、周期そのものが高さになります。 の周期は なので、高さ をとる。

上の辺では分母が のまま変わらず、分子だけが 倍になります。差をとると、求めたい積分が係数付きで残る[1]

は高さ

もう つ、高さの選び方が見える例です。 の周期は ですが、符号だけなら で反転します。

高さ の長方形をとると、上の辺の被積分関数が下の辺の 倍。向きの反転と合わせて、 本が足し合わさります。

内側の極は つで、 の零点です。留数は

つまり です。 の面積がちょうど になるという、覚えやすい形。

canvas: 置き場が受け取りませんでした

同じ手で も出ます。 が条件で、 で発散する。

熱伝導との対応

ガウス関数のフーリエ変換は、熱方程式の解そのものです。

を初期値 で解くと になります。フーリエ側では で、時間とともに高い波数が落ちていく。

本文の計算は、この つの表示が同じものだと言っています。 を波数、 を時間だと読み替えれば、そのまま対応する。

熱が広がるほど、含まれる細かい振動が消えていく。積分の値が で落ちるのは、その現れです。

どの高さを選ぶか

平方完成で虚部が出るなら、その虚部を高さにする
が入っているなら、周期の を高さにする
なら、符号が反転する で足りることが多い
高さを上げすぎると が発散します。帯は細いままにする
上下の辺が対応しない高さを選ぶと、式が閉じません

上下の辺が同じ形になるか、定数倍で結ばれるか。そこだけを見て高さを決めます。

参考文献

Jeremy Orloff. Definite Integrals Using the Residue Theorem, 18.04 Complex Variables with Applications. MIT OpenCourseWare, 2018.
Jerry Shurman. Contour Integrals, Math 311 Complex Analysis. Reed College.
Andreas Gathmann. Berechnung reeller Integrale mit dem Residuensatz, Funktionentheorie, Kapitel 12. RPTU Kaiserslautern-Landau, 2021.
Error function, Digital Library of Mathematical Functions §7.4. NIST.
答えは $\sqrt{\pi}\,e^{-b^2/4}$ で、振動を掛けたのにガウス関数の形が残ります。平方完成すると積分の道が実軸から $b/2$ だけ下がった水平線に移るので、高さ $b/2$ の細い長方形をとって元に戻す。$e^{-z^2}$ は整関数なので周積分は $0$、縦の辺は幅を広げれば消える。$b$ で微分して常微分方程式にする道との比較、半直線に切るとドーソン関数が現れる理由、周期を高さにとる $1/\cosh x$ の例、熱方程式との対応まで。