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バーゼル問題を留数で解く……整数すべてに極を置く π cot πz

オイラーは を無限積に開いて、この値を出しました。 年のことです。

留数を使うと、話が 回の展開で終わります。 という関数を用意し、原点での留数を つ計算するだけ[1]

級数を積分に直し、その積分が に落ちることを示す。残った等式が答えになります。積分から級数を出すのではなく、逆向きに使う道です。

整数すべてに極を置く

の極は、 の零点、つまりすべての整数です。

の近くで なので、 の留数はどの整数でも になります。

を掛ければ、 番目の項がそのまま留数として出てくる。整数の目盛りに値を拾わせる道具です。

整数の位置に等間隔で極が並びます。目盛りの上に置かれた櫛のような関数。

正方形で囲む

を正の整数として、 つの頂点を にとった正方形 を考えます[1]

辺の位置が半整数なので、極の真ん中を通ります。整数に近づかないぶん、 が暴れません。

正方形の上では によらない定数でおさえられる。これが議論の要になります。

canvas: 絵を作れませんでした

上下の辺は実軸から離れているので、 に近づきます。左右の辺は半整数の位置で、

どちらも に依存しません。 をいくら大きくしても、辺の上での大きさは同じ範囲に収まる。

総和定理

が有限個の極しか持たず、大きいところで )を満たすとします。このとき次が成り立ちます[1]

証明の骨は 行です。 上での積分は、被積分関数の大きさ 定数 に周長 を掛けたもの。 なら に落ちます。

一方、留数定理から積分は「整数での留数の和」と「 の極での留数の和」の合計です。積分が になるので、 つの和が符号を変えて等しくなる。

級数を計算する仕事が、留数を計算する仕事に変わりました。

バーゼル問題

をとります。 の極は原点で、これは整数でもある。

こういうときは、整数の和から を外し、代わりに原点での の留数を 側として数えます。

原点まわりのローラン展開が要ります。 なので、次のようになる。

で割ると、 の係数が読めます。

留数は 。総和定理から です。

左辺は なので、。展開の 項を読むだけで終わりました。

canvas: 置き場が受け取りませんでした

級数そのものの収束は遅く、 項足しても小数第 位が定まりません。留数の側には、この遅さがまったく現れない。

偶数のゼータは全部出る

分母の次数を上げると、そのまま次の値が出ます。 なら の留数は

の展開係数はベルヌーイ数で書けるので、一般式もそのまま出ます[2]

の偶数乗に有理数が掛かる形。 がいつも有理数だという事実が、この式の中身です。

奇数では止まる

同じ手を に当てると、 の留数から が出ます。

ところが は奇関数なので、正の と負の が打ち消し合って左辺が の情報はどこにも残りません。

偶数乗のときだけ左辺が になり、意味のある等式になる。奇数のゼータが未解決なのは、この打ち消しを避ける道が見つかっていないためです。

分母を変える

を替えれば別の級数が出ます。 をとる。

の極は で、どちらの留数も です。総和定理から次を得ます[1]

に直すと

canvas: 置き場が受け取りませんでした

の極限をとると、 から が出ます。バーゼル問題が、この式の特別な場合として現れる。

重みを置きかえる

が「整数に留数 の極を置く関数」だったので、別の置き方をする関数に替えれば、別の和が出ます。

重み極の位置そこでの留数
整数
整数
半整数
半整数

に替えると符号が交互に付き、交代級数が扱えます。 は目盛りが半分ずれ、 の形の和に効く。

どれも の上で有界だという性質を共有しています。 の上界は と同じ議論で出る[1]

半整数で足す

をとると、 の極は 位です。

を掛けて微分すると、留数は 。総和定理から次を得ます[1]

分母を と書き直すと、奇数の 乗の逆数の和になります。

から偶数の項 を引いた値と一致します。

効かない場合

だと、 上の積分が に落ちません
の極が無限個あると、内側の留数が とともに増えて評価が破れます
に本質的特異点があると、留数を有限の手数で書けません
が奇関数だと左辺が打ち消し合い、 という中身のない式になります
の極が整数と重なるときは、その項を和から外す処理が要ります

に当てようとすると、 で最初の条件から外れます。実際その和は発散するので、当たらないほうが正しい。

部分分数分解として読む

総和定理を裏から見ると、 自身の分解が読めます。

すべての極を の形で書き並べ、収束するように正負を組にしたもの。 は、 という顔と、無限個の単純分数の和という顔を持ちます。

この分解に の展開を当てると、また が出ます。同じ事実を、経路の側から見るか、分解の側から見るかの違い。

整理

は整数のすべてに 1 位の極を持ち、留数はどれも 1
半整数を通る正方形 の上では、 によらず有界
なら、 上の積分は へ落ちる
残る等式が、級数と の極での留数を結ぶ
の極が整数と重なるときは、その項を和から外して留数側で数える

いちばん手を動かすのはローラン展開です。 の展開係数さえ手元にあれば、あとは割り算だけ。

出典

Noah A. Hughes. Infinite Series and the Residue Theorem. Appalachian State University, 2013.
Jerry Shurman. Contour Integrals, Math 311 Complex Analysis. Reed College.
Riemann zeta function, Digital Library of Mathematical Functions §25.6. NIST.
Bernoulli numbers. Encyclopedia of Mathematics.
$\pi\cot\pi z$ は整数のすべてに 1 位の極を持ち、留数はどれも $1$ です。$f$ を掛ければ、$f(n)$ が留数として並ぶ。半整数を通る正方形の上で $|\cot\pi z|$ が $N$ によらず有界なので、周積分は $0$ へ落ち、級数と $f$ の極での留数が符号違いで結ばれます。$f = 1/z^2$ ならローラン展開の 1 項を読むだけで $\zeta(2) = \pi^2/6$。$\zeta(4)$、$\zeta(6)$、ベルヌーイ数による一般式、奇数のゼータで止まる理由、$1/(n^2+a^2)$ の和、重みを $\csc$ や $\tan$ に取りかえた場合まで。