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絵はどこから見るといちばん大きく見えるか〜見込む角の最大

壁に絵が掛かっています。下端が目の高さより メートル上、上端が メートル上。

どこに立つと、絵がいちばん大きく見えるでしょうか。

近づけば絵は大きく見えますが、真下では見上げる角が狭くなります。離れすぎても小さい。

答えは壁から メートル。 で、2 つの高さの相乗平均です。

三角関数と相加相乗だけで出せます。

見込む角を式にする

壁からの距離を 、下端の高さを 、上端の高さを とします。

目の位置から上端を見上げる角を 、下端を見上げる角を とすると、絵を見込む角は

です。どちらも直角三角形から読めます。

を直接扱うのは大変なので、 を考えます。 は鋭角なので、 が最大になる位置で も最大になる[1]

tan の加法定理の引き算の形を当てます。

分母分子に を掛けて整理します。

分子は定数です。動くのは分母だけになりました。

分母を最小にする

を最大にするには、分母 を最小にします。

なので、相加平均と相乗平均の関係が使えます。

等号が成り立つのは 、つまり のとき。 です。

なら です。

2 つの高さの相乗平均。それが最適な距離になります。

図で見ると円が現れる

計算しなくても、図だけで答えが出る道があります[2]

絵の上端と下端を通る円を考えます。そういう円は無数にありますが、目の高さの線に接するものが 1 つだけあります。

その接点が最適な位置です。

理由は円周角の定理にあります。円周上の点から弦を見込む角は、どこでも同じ大きさ。

接点より前や後ろに立つと、その点は円の外に出ます。円の外から弦を見込む角は、円周上から見るより小さくなる。

だから接点にいるときが最大です。接する円は 1 つしかないので、最適な位置も 1 つに決まります。

接点までの距離は、方べきの定理から出ます。 となり、計算の道と同じ答えになりました。

式で解く

tan の加法定理で を書き、分母に相加相乗を当てる。値まで出る

図で解く

上端と下端を通り、目の高さの線に接する円を描く。接点が答え。方べきの定理で距離が出る

相加相乗が効く形

という形が出たら、相加相乗の合図です。

2 つの項を掛けると が消えて定数になる。これが条件です。

なら積が で、最小は 。等号は

なら積が で、最小は 。等号は

積が定数にならない形では使えません。 は積が で、 が残ります。

三角関数の問題でこの形が出るのは、 の加法定理を通ったときが多い。分母に が並びます。

の最大が の最大と一致するのは、 が鋭角に限られる からです。

では が増加し続けるので、順序が保たれます[3]。鈍角が入る問題では、この言い換えができません。

目の高さが絵より上にあるとき

絵の上端が目より下にあるなら、話が逆になります。見下ろす角です。

を目の高さから測った深さと読み替えれば、式はそのまま使えます。

答えも同じ 。上か下かは、符号を測り直せば吸収されます。

やっかいなのは、目の高さが絵の途中にある場合です。上端が上、下端が下にある。

このとき見込む角は で、和になります。 を小さくするほど両方が大きくなるので、壁に近づくほど角は広がる。

最大値がありません。壁にくっつくと に近づきます。式の形が変わる点を見落とさないようにします。

例:数を変えてみる

下端が メートル、上端が メートルなら、最適な距離は メートル。

です。さきほどと同じ値になりました。

高さを両方 2 倍にすると、距離も 2 倍になり、角は変わらない。図形が相似になるためです。

下端が 、つまり絵の下端が目の高さと同じなら

壁にくっつくのが最適という答えになります。実際、下端が目の高さなら、近いほど上端を見上げる角が広がります。

まちがえやすい点

の最大と の最大を、確かめずに同じ扱いにする誤りが多い。鋭角である断りが要ります。

の加法定理の分母の符号もまちがえやすい。引き算の形では です。

相加相乗で等号の条件を書き忘れる形もよく出ます。 が答えそのものなので、落とすと結論になりません。

積が定数になっていないのに相加相乗を当てる誤りもあります。掛けて が消えるかを先に確かめます。

目の高さが絵の途中にある場合を同じ式で処理する形も見ます。角が和になり、最大値が存在しません。

下端が目の高さより メートル上、上端が メートル上の絵を見るとき、最適な距離はどれですか。

  • メートル
  • メートル
  • メートル
__RESULT__

です。 は相加平均 の値で、この問題では答えになりません。使うのは相乗平均のほうです。

式の形も確かめます。

を最大にするには、どうしますか。

  • 分子を最大にする
  • 分母を最小にする
  • 分母を最大にする
__RESULT__

分子 を含まない定数です。動くのは分母だけなので、分母が最小のとき分数全体が最大になります。分母は で、積が と定数なので相加相乗が使えます。

で書き、分母に相加相乗を当てる。あるいは接する円を描く。どちらも相乗平均に着きます。

参考文献

Sum and Difference Identities. Algebra and Trigonometry 2e, OpenStax( の加法定理).
Viewing a Statue: the Problem of Regiomontanus. Cut The Knot(接する円による解法と、円の外では角が小さくなる理由).
É. Bouchet. Trigonométrie, Cours de PCSI, Proposition 2.2( が区間内で増加すること).
壁の絵が、下端は目より $1$ メートル上、上端は $4$ メートル上。近づけば大きく見えますが、真下では見上げる角が狭くなります。答えは $2$ メートル、$\sqrt{1 \times 4}$ という相乗平均です。$\tan$ の加法定理で $\tan\theta = \dfrac{b-a}{x + \frac{ab}{x}}$ と書けば、分子は定数で分母だけが動く。あとは相加相乗を当てるだけです。上端と下端を通り目の高さの線に接する円を描く、という図だけの道もあり、円周角の定理から同じ答えに着きます。目の高さが絵の途中にあると最大値が消える話まで。