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誘導公式は覚える必要があるのか?単位円で作り直す

誘導公式は 12 本あります。全部覚えるつもりなら、まず挫折します。

覚えるのは 2 行で足ります。

をまたぐ形では関数名が変わらず、符号だけが動く。 をまたぐ形では が入れ替わる。

符号は最後に決めます。 を鋭角だと思って、移った先がどの象限かを見るだけ[1]

12 本を並べてみる

上の 3 行では、右側に出てくるのが なら左も です。関数名が保たれている。

下の 2 行では入れ替わっています。 を入れたのに が出てくる。

境目は です。 の奇数倍だけずらすと入れ替わり、偶数倍なら変わりません。

なので、2 つを割れば自動的に出ます。別に覚える必要はありません。

符号は象限で決める

を出してみます。まず関数名。 をまたぐので に変わります。

次に符号です。 を鋭角、たとえば だと思ってみる。

で、第 2 象限にあります。第 2 象限では が正。

だからもとの は正の値です。答えは

なら、第 2 象限で は負なので になります。

見るのは移った先の象限で、その象限における「もとの関数」の符号です。ここをとりちがえません。

符号を決めるとき、鋭角だと仮定してよい 理由があります。

誘導公式はすべての で成り立つ等式なので、成り立つかどうかを鋭角 1 つで確かめれば足ります。仮定は符号を思い出すための道具です。

単位円で見ると対称移動

なぜこうなるのかは、単位円を見れば一目です。

は、 の点を 軸で折り返した位置。 座標はそのまま、 座標だけ符号が変わります[1]

なので、

軸で折り返した位置です。今度は だけ符号が変わる。

は原点について対称な位置。両方の符号が変わります。

公式を思い出せなくても、点をどこへ動かすかを描けば、その場で作れます。

π/2 は直線 y = x で折り返す

の点はどこにあるでしょう。

の点を、直線 で折り返した位置です。この折り返しでは 座標と 座標が入れ替わります。

だから も入れ替わる。 です[1]

を足すと 。互いに余角の関係にあります。

が成り立つのはこのため。座標の入れ替えが、そのまま関数名の入れ替えになります。

のほうは、 で折り返してから 軸でもう一度折り返した位置。 の符号だけ余分に変わります。

2π を足しても変わらない

を足すと、円を 1 周して同じ点に戻ります。

は整数です。負でも成り立ちます。

なら、 なので

大きい角が出てきたら、まず で割った余りに直します。 から に収めてから公式を当てる。

だけは で戻ります。 です[2]

例:まとめて処理する

を求めます。まず を引いて

なので、 の形です。関数名は変わりません。

は第 2 象限で は正。したがって

も見ます。 は偶関数なので

で第 2 象限、 は負。 です。

手順は毎回同じ。 で余りにする、 の何倍ぶんずれているか見る、象限で符号を決める。

2π で割った余りに直す

π/2 の奇数倍ずれていれば関数名を入れ替える

移った先の象限で符号を決める

式を簡単にする型

を簡単にします。

前半は をまたぐので へ。第 2 象限で は正なので

後半は をまたぐので のまま。第 2 象限で は負なので

足すと によらず になりました。

こうした形は、方程式の途中で式を短くするために出てきます。値が消えると計算が一気に軽くなる。

まちがえやすい点

をまたぐのに関数名を変えない誤りが最も多い。 ではありません。

符号を決めるとき、もとの の象限を見てしまう誤りも起きます。見るのは移った先です。

の混同もよくあります。前者は 軸対称、後者は原点対称。

の符号だけ覚えて に当てはめる形も見ます。 では が正、 が負で、向きが違います。

の周期を とする誤りもあります。 で戻ります。

の式で書くとどれですか。

__RESULT__

をまたぐので関数名は に入れ替わります。 を鋭角と見ると は第 2 象限で、そこでは が負です。したがって になります。

大きい角も確かめます。

の値はどれですか。

__RESULT__

なので と同じ位置、第 4 象限です。 は奇関数なので になります。第 4 象限で が負である点とも合います。

覚えるのは 2 行。 をまたげば符号だけ、 をまたげば関数名も。あとは象限で決まります。

参考文献

É. Bouchet. Trigonométrie, Cours de PCSI, Proposition 1.4( の一覧と、単位円で読む証明).
É. Bouchet. Trigonométrie, Cours de PCSI, Proposition 1.5( の変換と周期 ).
12 本を全部覚えるつもりなら、まず挫折します。覚えるのは 2 行で足りる。$\pi$ をまたぐ形では関数名が変わらず符号だけが動き、$\dfrac{\pi}{2}$ をまたぐ形では $\sin$ と $\cos$ が入れ替わります。符号は $\theta$ を鋭角と見て、移った先の象限を読むだけ。単位円では $-\theta$ が $x$ 軸、$\pi-\theta$ が $y$ 軸、$\pi+\theta$ が原点についての対称移動で、$\dfrac{\pi}{2}-\theta$ だけ直線 $y=x$ の折り返しになります。座標が入れ替わるから関数名も入れ替わる。$\sin\dfrac{17}{6}\pi$ のような大きい角の処理まで。