sinθ+cosθ=21 と言われたら、sinθ も cosθ も分かりません。
それでも sinθcosθ は出ます。−83 です。
3 乗の和も 4 乗の和も出る。個々の値を知らないまま、組み合わせた量だけが決まります。
鍵は sin2θ+cos2θ=1 が最初から手元にあることです。ふつうの対称式より 1 本多く材料があります。
2 乗すると積が出る
s=sinθ+cosθ と置きます。両辺を 2 乗する。
s2=sin2θ+2sinθcosθ+cos2θ=1+2sinθcosθ
sin2+cos2 が 1 に化けました[1]。残るのは積の項だけ。
p=sinθcosθ と書けば p=2s2−1 です。
s=21 なら p=241−1=−83。
p が負なので、sinθ と cosθ は符号が違います。和が正なので、絶対値の大きいほうが正。
この時点で θ が第 2 象限か第 4 象限かに絞れています。値を出す前に、位置が見えてきます。
差は符号が決まらない
sinθ−cosθ も 2 乗すれば出ます。今度は真ん中の項が引き算になる。
(sinθ−cosθ)2=1−2p=1+43=47
平方根をとって sinθ−cosθ=±27。
± が付いたまま残ります。2 乗した情報からは、どちらが大きいかが分からないためです。
決めるには θ の範囲が要ります。0<θ<π なら sinθ>0>cosθ なので差は正。
範囲が与えられていなければ、両方を答えます。和と違い、差は対称式ではないので符号が残る。
和と積
sinθ と cosθ を入れ替えても変わらない。対称式なので符号が決まる
差
入れ替えると符号が反転する。交代式なので、範囲がないと ± が残る
3 乗も 4 乗も出る
sin3θ+cos3θ は、因数分解の公式で s と p に落ちます。
a3+b3=(a+b)(a2−ab+b2) で、a2+b2=1 なので次の形。
sin3θ+cos3θ=s(1−p)=21(1+83)=1611
4 乗の和は s すら要りません。p だけで書けます。
sin4θ+cos4θ=(sin2θ+cos2θ)2−2sin2θcos2θ=1−2p2。
p=−83 なので 1−2×649=1−329=3223。
偶数乗の和は p の偶数乗で書けるので、p の符号にも左右されません。
| sinθcosθ | 2s2−1 |
| sinθ−cosθ | ±1−2p |
| sin3θ+cos3θ | s(1−p) |
| sin4θ+cos4θ | 1−2p2 |
| tanθ+tanθ1 | p1 |
最後の 1 本も同じ発想です。通分すると sinθcosθsin2θ+cos2θ=p1。
s のとれる値には限りがある
s は好きな値をとれません。合成すると理由が見えます[2]。
s=sinθ+cosθ=2sin(θ+4π)
sin の値は −1 から 1 なので、−2≤s≤2 です。
s=2 という問題が出たら、その時点で解なし。2>2 だからです。
p の範囲も決まります。p=2s2−1 に 0≤s2≤2 を入れて −21≤p≤21。
sinθcosθ=21sin2θ なので、sin2θ の範囲から直接読んでも同じ結果です。
積から和へ戻す
逆向きも解けます。sinθcosθ=41 のとき sinθ+cosθ を求めます。
s2=1+2p=1+21=23 なので s=±26。
26≒1.2247 で、2≒1.414 より小さい。範囲に収まっています。
符号は決まりません。p>0 なので sinθ と cosθ は同符号ですが、両方正か両方負かは分からない。
第 1 象限なら s は正、第 3 象限なら負です。範囲の指定がなければ両方を答えます。
値そのものを復元する
s と p が分かれば、sinθ と cosθ は 2 次方程式の解として出ます。
和が s、積が p の 2 数は x2−sx+p=0 の解です。
s=21、p=−83 なら x2−21x−83=0、両辺を 8 倍して 8x2−4x−3=0。
解の公式から x=164±16+96=164±47=41±7。
41+7≒0.911 と 41−7≒−0.412 です。
どちらが sinθ かは、範囲を見て決めます。0<θ<π なら sinθ が正なので 41+7。
和と積から 2 数を復元するのは、解と係数の関係 を逆に使う手です。
x2−sx+p=0 の 2 解が、ちょうど sinθ と cosθ になります。どちらがどちらかは、範囲が決めます。
方程式として解く
sinθ+cosθ=1 を 0≤θ<2π で解きます。今度は θ そのものが答えです。
合成して 2sin(θ+4π)=1、つまり sin(θ+4π)=22。
範囲を動かします。4π≤θ+4π<2π+4π。
sin が 22 になるのは 4π と 43π。両方この範囲に入ります。
4π を引いて θ=0, 2π。
確かめます。θ=0 なら 0+1=1、θ=2π なら 1+0=1。どちらも合っています。
まちがえやすい点
2 乗したとき sin2+cos2=1 を使い忘れる誤りが多い。s2 を展開したら、必ずこの置き換えが入ります。
差の ± を勝手に片方に決める誤りも起きます。範囲がなければ両方残します。
s の範囲を確かめずに進む形も見ます。∣s∣>2 なら、そもそも解がありません。
p を 2s2 とする誤りもよくあります。−1 を引いてから 2 で割ります。
3 乗の和で a2−ab+b2 の真ん中の符号をまちがえる形もあります。1−p であって 1+p ではない。
sinθ+cosθ=23 のとき、sinθcosθ はどれですか。
__RESULT__
s2=43 です。p=2s2−1=243−1=2−41=−81 になります。83 は −1 を引き忘れた値です。p が負なので、sinθ と cosθ は符号が違うと分かります。
3 乗のほうも確かめます。
sinθ+cosθ=1 のとき、sin3θ+cos3θ はどれですか。
__RESULT__
p=21−1=0 です。sin3θ+cos3θ=s(1−p)=1×1=1 になります。p=0 は sinθ か cosθ の一方が 0 という意味で、θ=0 または 2π。どちらでも 3 乗の和は 1 です。
2 乗して 1 に化けさせる。和から積が出れば、あとの量はすべてそこから組み立てられます。
参考
É. Bouchet. Trigonométrie, Cours de PCSI, Prérequis と Proposition 1.9(sin2+cos2=1 と 2 倍角). Harmonic Addition Theorem. MathWorld(合成の振幅が a2+b2 になること).
$\sin\theta + \cos\theta = \dfrac{1}{2}$ だけでは個々の値は分かりませんが、$\sin\theta\cos\theta = -\dfrac{3}{8}$ は出ます。2 乗すると $\sin^2 + \cos^2$ が $1$ に化けて、積の項だけが残るから。ふつうの対称式より材料が 1 本多い。差のほうは交代式なので $\pm$ が残り、範囲がなければ決まりません。$s$ が $\sqrt{2}$ を超えられない理由は合成すれば見えます。$x^2 - sx + p = 0$ を解いて $\sin\theta$ と $\cos\theta$ そのものを復元する手順と、どちらがどちらかを範囲で決める話まで。
s2=43 です。p=2s2−1=243−1=2−41=−81 になります。83 は −1 を引き忘れた値です。p が負なので、sinθ と cosθ は符号が違うと分かります。