計量 gij を書き下せば、クリストッフェル記号は決まった手順で出ます。逆行列を作り、偏微分して、3 つ足し引きするだけ。
Γijk=21gkl(∂xi∂gjl+∂xj∂gil−∂xl∂gij)
極座標なら Γθθr=−r と Γrθθ=1/r の 2 種類だけ。実際に手を動かして確かめます。
どこに出てくる記号か
座標基底どうしの共変微分を書くと、その係数として現れます[1]。
∇∂i∂j=Γijk∂k
基底ベクトルを動かしたときのずれを、また基底で展開したものです。ずれが 0 なら記号も 0。
測地線方程式にも同じ記号が出ます[4]。
x¨a+Γbcax˙bx˙c=0
Γ=0 なら x¨a=0、つまり座標が時間の 1 次式になる。デカルト座標での直線です。
公式
計量とその 1 階偏導関数だけで書けます[1,3,4,5]。
Γijk=21gkl(∂igjl+∂jgil−∂lgij)
gkl は行列 (gij) の逆行列の成分です。gklglm=δmk を満たすもの[1]。
括弧の中は 3 項。前 2 項が i と j について対称で、最後の 1 項が引かれます。
添字を下げた形も使われます。Γk,ij=gklΓijl を第 1 種、Γijk を第 2 種と呼びます[1]。
下の添字は対称
公式の括弧を見ると、i と j を入れ替えても値が変わりません[3]。
Γijk=Γjik
捩れのないレビ・チビタ接続だからです[2]。計量と両立し、捩れが 0 という条件で接続がただ 1 つ決まります[2]。
おかげで計算量が減ります。n 次元なら独立な成分は n⋅2n(n+1) 個。4 次元でも 40 個で、非零はもっと少ない[5]。
テンソルではない
座標を変えたときの変わり方が、テンソルと違います[1]。
Γˉijk=Γabc∂xˉi∂xa∂xˉj∂xb∂xc∂xˉk+∂xˉi∂xˉj∂2xc∂xc∂xˉk
第 1 項はテンソルの変換則ですが、第 2 項に 2 階微分が入ります。これがあるためテンソルの成分になりません[1]。
実害というより性質です。1 点で Γ=0 になる座標がいつでもとれる、という便利さの裏返しになっています。
例:平面の極座標
まず線素を書きます。
ds2=dr2+r2dθ2
つまり grr=1、gθθ=r2、非対角は 0。逆行列は grr=1、gθθ=1/r2。
偏微分で残るのは ∂rgθθ=2r の 1 つだけです。あとは全部 0。
Γθθr=−21grr∂rgθθ=−r,Γrθθ=21gθθ∂rgθθ=r1
対称性から Γθrθ も 1/r。ほかは全部 0 です。
例:3 次元の球座標
ds2=dr2+r2dθ2+r2sin2θdφ2 をとります。手順は同じです。
grr=1、gθθ=r2、gφφ=r2sin2θ。偏微分は ∂rgθθ=2r、∂rgφφ=2rsin2θ、∂θgφφ=2r2sinθcosθ。
非零は 6 種類です。
Γθθr=−r,Γφφr=−rsin2θΓrθθ=r1,Γφφθ=−sinθcosθΓrφφ=r1,Γθφφ=cotθ
下の添字を入れ替えたものも同じ値です。Γθrθ や Γφθφ を別に数えません。
例:半径 a の球面
r=a に固定すると ds2=a2(dθ2+sin2θdφ2)。2 次元なので成分はさらに減ります。
gθθ=a2、gφφ=a2sin2θ。θ で微分できるのは gφφ だけ。
Γφφθ=−sinθcosθ,Γθφφ=cotθ
半径 a が消えました。a が全体に掛かる定数なので、公式の gkl と ∂g で打ち消し合います。
θ→0 で cotθ が発散します。極で座標が壊れているためで、球面自体はそこでも滑らかです。
例:ポアンカレ上半平面
y>0 で ds2=y2dx2+dy2 とします。双曲平面のモデルです。
gxx=gyy=1/y2 なので gxx=gyy=y2。偏微分は ∂ygxx=∂ygyy=−2/y3。
Γxyx=−y1,Γxxy=y1,Γyyy=−y1
Γxxx と Γxyy は x 方向の偏微分だけを含むので 0 です。計量が x によらないためです。
例:シュヴァルツシルト計量
f(r)=1−r2M とおき、ds2=−fdt2+f−1dr2+r2dθ2+r2sin2θdφ2 をとります。
f′=2M/r2 に注意して順に当てます。t と r に関わる成分から出ます。
Γtrt=2ff′=r(r−2M)M,Γttr=2ff′=r3M(r−2M)Γrrr=−2ff′=−r(r−2M)M
角度の側は球座標とほとんど同じで、f が 1 か所ずつ掛かります。
Γθθr=−(r−2M),Γφφr=−(r−2M)sin2θΓrθθ=Γrφφ=r1,Γφφθ=−sinθcosθ,Γθφφ=cotθ
M→0 で f→1 となり、平坦な球座標の値に戻ります。検算に使えます。
| 計量 | 非零の種類 | 代表的な成分 | | 平面の極座標 | 2 | −r、1/r |
| 球面(半径 a) | 2 | −sinθcosθ など |
| 3 次元の球座標 | 6 | −rsin2θ など |
| 上半平面 | 3 | ±1/y |
ラグランジアンから読む
対角でない計量では、公式に直接入れると項が増えます。実務では別の道が速い[4]。
I=gabx˙ax˙b
これをラグランジアンと見て、オイラー・ラグランジュ方程式を立てます[4]。
dsd(∂x˙a∂I)−∂xa∂I=0
出てきた式を x¨a+Γbcax˙bx˙c=0 と見比べると、x˙bx˙c の係数がそのまま Γbca です[4]。
逆行列を作らずに済みます。偏微分の回数も減ります。
例:ラグランジアンで球面を計算する
I=a2θ˙2+a2sin2θφ˙2 とおきます。
θ について立てると、dsd(2a2θ˙)−2a2sinθcosθφ˙2=0。
整理して θ¨−sinθcosθφ˙2=0。測地線方程式と比べると Γφφθ=−sinθcosθ が読めます。
φ の側も同様で、φ¨+2cotθθ˙φ˙=0 から Γθφφ=cotθ。係数の 2 は下の添字の対称性から来ています。
ここで 係数の 2 をそのまま Γ にしてしまう 誤りがよく起きます。Γbcax˙bx˙c の和では bc と cb が別に数えられるためです。
φ¨+2cotθθ˙φ˙ の 2 は Γθφφ と Γφθφ の分。Γ 自体は cotθ です。
トレースは行列式で書ける
上の添字と下の添字を 1 つずつ縮約すると、簡単な形になります。
Γiki=21gil∂kgil=21∂kln∣detg∣=∂kln∣detg∣
公式の第 1 項と第 3 項が gil の対称性で打ち消し、第 2 項だけが残ります。
計量の行列式さえ分かれば、この縮約は個別の成分を出さずに書ける。発散やラプラシアンを座標で書くときに使います。
測地線を解いてみる
極座標で Γθθr=−r、Γrθθ=1/r を入れると、方程式は次の 2 本になります。
r¨−rθ˙2θ¨+r2r˙θ˙=0=0
見た目は曲がっていますが、答えは直線です。x=rcosθ、y=rsinθ に直すと x¨=y¨=0 に戻ります。
Γ が 0 でないのは、空間が曲がっているからではありません。座標の基底が場所で変わっているだけです。
平面の極座標で Γrθθ=1/r になりました。この値について正しいのはどれですか。
- 平面が曲がっている証拠になる
- 座標の基底が場所で変わることだけを表している
- 座標を変えても 1/r のまま残る
__RESULT__
平面は平坦なので、曲率テンソルはどの座標でも 0 です。デカルト座標に直せば Γ はすべて 0 になります。Γ はテンソルではないので、座標を変えると値が変わります。
つまずきやすいところ
Γ が 0 でないことを曲がりの証拠だと思う。平坦な空間でも座標次第で出ます。
上の添字と下の添字をとり違える。Γijk の k は gkl から来ています。
偏微分する相手を間違える。括弧の中で微分されるのは計量で、逆計量ではありません。
第 3 項の符号を落とす。前 2 項が足し算、最後だけが引き算です。
ラグランジアンから読むとき係数の 2 を残す。下の添字が異なる項は 2 回数えられています。
非対角成分のある計量に対角と同じ手順を当てる。逆行列を先にきちんと出します。
計量を書く。逆行列を作る。偏微分して足し引きする。この 3 手で、どの座標系でも同じように出せます。
出典
Christoffel symbol. Encyclopedia of Mathematics. Levi-Civita connection. Encyclopedia of Mathematics. Christoffelsymbole. Wikipedia(ドイツ語). *Christoffel Symbols*. Differential Geometry 講義資料, Appalachian State University.
$\Gamma^k_{ij} = \frac{1}{2}g^{kl}(\partial_i g_{jl} + \partial_j g_{il} - \partial_l g_{ij})$ に計量を入れるだけです。極座標なら $\Gamma^r_{\theta\theta} = -r$ と $\Gamma^\theta_{r\theta} = 1/r$ の 2 種類、球面なら $-\sin\theta\cos\theta$ と $\cot\theta$、シュヴァルツシルト計量は $M \to 0$ で球座標に戻る。下の添字が対称なので数は半分以下。対角でない計量なら $I = g_{ab}\dot{x}^a\dot{x}^b$ をラグランジアンにして、オイラー・ラグランジュ方程式から読むほうが速い。$\Gamma$ が $0$ でないことは曲がりの証拠になりません。平面でも出ます。
平面は平坦なので、曲率テンソルはどの座標でも 0 です。デカルト座標に直せば Γ はすべて 0 になります。Γ はテンソルではないので、座標を変えると値が変わります。