複素数平面上の原点を中心とする半径 1 の円を C とする。複素数 \alpha と C 上の点 \mathrm{P}(z) に対し,w = (z-\alpha)^3 とおく。\mathrm{P} が C 上を動くときの点 \mathrm{Q}(w) の軌跡を D とする。
(1) \alpha = -3 とし,w の偏角を \theta とおく。\mathrm{P} が C 上を動くとき,\sin\theta がとりうる値の範囲を求めよ。
(2) \alpha が次の条件を満たすように動く。
条件 : D は実軸の正の部分および負の部分の両方と共有点を持つ。
複素数平面上の点 \mathrm{R}(\alpha) が動きうる範囲の面積を求めよ。
\alpha = -3 なので z - \alpha = z+3 です。z が単位円を動くと z+3 は、中心 3、半径 1 の円を動きます。
この円は原点を含まず、まるごと右半分にあります。ですから z+3 の偏角には限りがあります。
原点からこの円に引いた 2 本の接線が、偏角の端を決めます。接線と実軸のなす角を \beta(0 < \beta < \dfrac{\pi}{2})とすると、中心までの距離 3、半径 1 から \sin\beta = \dfrac{1}{3} です。
よって z+3 の偏角は -\beta 以上 \beta 以下を動き、そのあいだの値をすべて取ります。
w = (z+3)^3 ですから、偏角は 3 倍になります。\theta は -3\beta 以上 3\beta 以下を動きます。
ここで \sin\beta = \dfrac{1}{3} < \dfrac{1}{2} = \sin\dfrac{\pi}{6} なので \beta < \dfrac{\pi}{6}、よって 3\beta < \dfrac{\pi}{2} です。\sin は \left[-\dfrac{\pi}{2},\ \dfrac{\pi}{2}\right] で増えるので、\sin\theta の端は \theta = \pm 3\beta で取ります。
3 倍角の公式から \sin 3\beta = 3\sin\beta - 4\sin^3\beta = 3 \cdot \dfrac{1}{3} - 4 \cdot \dfrac{1}{27} = 1 - \dfrac{4}{27} = \dfrac{23}{27} です。
よって -\dfrac{23}{27} \leqq \sin\theta \leqq \dfrac{23}{27} です。3 倍しても \dfrac{\pi}{2} を越えないので、途中で折り返すことはありません。
(2) へ移ります。w = (z-\alpha)^3 が正の実数になるのは、w の偏角が 2\pi の倍数のとき、つまり z-\alpha の偏角が 0, \dfrac{2\pi}{3}, \dfrac{4\pi}{3} のどれかのときです。
負の実数になるのは、w の偏角が \pi ずれるとき、つまり z-\alpha の偏角が \dfrac{\pi}{3}, \pi, \dfrac{5\pi}{3} のどれかのときです。
合わせると、\dfrac{\pi}{3} おきの 6 方向です。番号が偶数のものが正の実軸、奇数のものが負の実軸に対応します。
条件は「\alpha から見て単位円上の点が、偶数番の向きに少なくとも 1 つ、奇数番の向きにも少なくとも 1 つある」ことです。\alpha から単位円を見たときに、どの向きが使えるかだけの話になりました。
|\alpha| \leqq 1 なら、\alpha から出したどの向きの半直線も単位円に当たるので、条件はいつもみたされます。|\alpha| = \rho > 1 のときは、\alpha から円に引いた 2 本の接線のあいだだけが使えます。使える向きは、原点を向く向きを真ん中とする幅 2\delta の範囲で、\sin\delta = \dfrac{1}{\rho} です。
6 方向は \dfrac{\pi}{3} おきです。使える範囲がそのうち 1 つしか含まなければ偶奇の片方しか取れず、2 つ以上含めば隣どうしなので偶数番と奇数番が両方そろいます。つまり条件は「2 つ以上含む」ことです。
真ん中の向きから、いちばん近い \dfrac{\pi}{3} の倍数までの角を d(0 \leqq d \leqq \dfrac{\pi}{6})とすると、2 つ含む条件は \delta \geqq \dfrac{\pi}{3} - d です。\sin を取って \dfrac{1}{\rho} \geqq \sin\left(\dfrac{\pi}{3}-d\right)、つまり \rho\sin\left(\dfrac{\pi}{3}-d\right) \leqq 1 となります。真ん中の向きは \alpha と \pi 違いですが、\pi は \dfrac{\pi}{3} の倍数なので d は \alpha の偏角から測っても同じです。
\rho\sin\left(\dfrac{\pi}{3}-d\right) = 1 は、原点から距離 1 の直線を表します。向きごとに 6 本あり、囲まれる形は内側の半径が \dfrac{2}{\sqrt{3}}、外側の半径が 2 の六芒星です。内側の正六角形の面積が 2\sqrt{3}、6 つの突起(底辺 \dfrac{2}{\sqrt{3}}、高さ 1)が合わせて 2\sqrt{3} ですから、求める面積は 4\sqrt{3} です。