級数の収束判定まとめ|正項級数から交代級数・べき級数まで解説
級数は無限個の数の和であり、その収束・発散の判定は解析学の基本的なテーマです。有限和と違って、足す順番や打ち切り方で振る舞いが変わることがあるからです。
判定法は数が多く見えますが、原理はごく少数です。正項級数なら部分和の単調性と比較、交代級数なら振動の打ち消しというように、どの道具も背後の考えは共通しています。
以下では部分和の定義から始め、正項級数の判定法を一通り並べ、交代級数と一般の級数へ進みます。計算例は 1 つずつ節を分けて置きました。
級数と部分和
数列 に対し、第 部分和を と定めます。この部分和の列 が で有限の値 に収束するとき、級数 は収束するといい、 をその和と呼びます。
収束しない級数は発散するといいます。発散には や に向かう場合のほか、 のように振動して定まらない場合もあります。
大事なのは、級数の収束が数列 の収束として定義されている点です。無限個を一度に足すのではなく、有限個の和の極限として意味づけています。
収束の必要条件
が収束するならば です。 と書けて、右辺は に収束するからです。
対偶をとると、 でなければ級数は発散します。これは最初に試すべき判定で、項判定法とも呼ばれます。 なら項が に近づくので、それだけで発散が確定します。
逆は成り立ちません。 でも級数が収束するとは限らず、調和級数 がその代表例です。次の節で発散を確かめます。
調和級数は発散する
調和級数 は、項が に近づくのに発散します。項をまとめる古典的な議論で示せます。
項を の冪ごとに区切ります。、 というように、どのまとまりも を超えます。
まとまりを 個集めれば部分和は より大きく、 で限りなく大きくなります。部分和は上に有界でないので、級数は発散します。
発散はきわめてゆっくりで、 はおよそ の速さで増えます。 が を超えるには が 程度、 を超えるには 程度を要するので、数値実験では発散が見えにくい級数の代表でもあります。
Cauchy の判定条件
部分和の言葉を使うと、収束の必要十分条件が得られます。実数の完備性から、 が収束することと Cauchy 列であることは同値だからです。
が収束するのは、任意の に対してある が存在し、 ならば次が成り立つときに限ります。
途中の一区切りの和が、いくらでも小さくなるという条件です。 とすれば となり、必要条件 もここから出ます。
この条件は、和の値を知らなくても使える点が強みです。以下に並べる判定法は、多くがこの条件を扱いやすい形に翻訳したものだと見ることができます。
幾何級数
判定法の土台になるのが幾何級数です。 は で収束し、 で発散します。
理由は部分和が明示的に書けることにあります。 なら次のとおりです。
なら なので は収束します。 では項が に近づかず、必要条件から発散します。
このあと見る比判定法も根判定法も、対象の級数を幾何級数と比べる操作にほかなりません。収束の速さの基準として、幾何級数は繰り返し登場します。
例: 望遠鏡級数
和が正確に求まる例を見ます。 を考えます。
部分分数に分けると です。部分和を書き下すと、隣どうしが次々に打ち消し合います。
で ですから、級数の和は です。
このように部分和が畳まれる級数を望遠鏡級数といいます。判定法に頼らず和が直接求まる、数少ない型の 1 つです。
正項級数と有界性
ここからしばらく の場合を扱います。正項級数では、収束の判定が有界性の判定に置き換わります。
なら部分和の列 は単調増加です。単調増加な数列は、上に有界なら収束し、有界でなければ に発散します。
つまり正項級数は、収束するか に発散するかのどちらかで、振動する余地がありません。判定は「部分和が上に有界か」の一点に絞られます。
以下の比較・積分・凝集といった判定法は、いずれも部分和の有界性を別の量で押さえるための工夫です。
比較判定法
有界性を押さえる最も素直な方法が、既知の級数との比較です。
が成り立つとします。 が収束すれば も収束します。 の部分和が の和で上から押さえられ、単調増加かつ有界になるからです。
逆向きも同じ理屈です。 で が発散すれば、 も発散します。
有限個の項を変えても収束・発散は変わらないので、不等式は十分大きい で成り立てば十分です。比較の相手には、幾何級数と次に見る 級数がよく使われます。
極限比較判定法
不等式を直接作るのが面倒なときは、比の極限を見れば済むことがあります。
、 とし、 が を満たすとします。このとき と の収束・発散は一致します。
理由は簡単で、十分大きい では が成り立つからです。両側に比較判定法を使えば結論が出ます。
や のときは片側しか言えません。 なら の収束から の収束が、 なら の発散から の発散が従います。
例:
見た目にだまされやすい例を挙げます。 は、収束しそうに見えて発散します。
指数が より大きいので 級数の感覚では収束しそうです。しかし指数 は で に近づいており、 が固定されていません。
そこで調和級数と比べます。 とおくと、比は次のように計算できます。
極限は で ですから、極限比較判定法よりこの級数は調和級数と同じ挙動、すなわち発散します。指数が に近づく速さのほうが勝っているのです。
積分判定法
正項級数を積分と比べる方法もあります。項が単調に減る場合に強力です。
を 上の正値で単調減少な関数とし、 とします。このとき と の収束・発散は一致します。連続性まで仮定しなくても、単調減少なら各区間で可積分なので問題ありません。
<div class="sc-fig">
<svg viewBox="0 0 400 245" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="減少する曲線 y=f(x) の上に幅 1 の長方形を並べ、長方形の面積の和が積分を上から押さえる様子を示す図。">
<rect x="0" y="0" width="400" height="245" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<g fill="#dbe6fb" stroke="#1b4fb8" stroke-width="1.1">
<rect x="60" y="70" width="50" height="130"/>
<rect x="110" y="135" width="50" height="65"/>
<rect x="160" y="157" width="50" height="43"/>
<rect x="210" y="167" width="50" height="33"/>
<rect x="260" y="174" width="50" height="26"/>
</g>
<path d="M60,70 L72,96 L85,113 L98,126 L110,135 L135,148 L160,157 L185,163 L210,167 L235,171 L260,174 L285,176 L310,178" fill="none" stroke="#c93c41" stroke-width="2.2"/>
<g stroke="#5a6270" stroke-width="1.4" fill="none" marker-end="url(#sca)">
<line x1="45" y1="200" x2="368" y2="200"/>
<line x1="50" y1="200" x2="50" y2="45"/>
</g>
<defs>
<marker id="sca" markerWidth="9" markerHeight="9" refX="6" refY="3" orient="auto"><path d="M0,0 L7,3 L0,6 z" fill="#5a6270"/></marker>
</defs>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="11" text-anchor="middle" fill="#5a6270">
<text x="60" y="214">1</text>
<text x="110" y="214">2</text>
<text x="160" y="214">3</text>
<text x="210" y="214">4</text>
<text x="260" y="214">5</text>
<text x="310" y="214">6</text>
</g>
<text x="322" y="170" font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="12" fill="#c93c41" stroke="#fafbfc" stroke-width="3" paint-order="stroke">y = f(x)</text>
<text x="200" y="234" font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="13" text-anchor="middle" fill="#1b3a8a">Σ f(n) ≥ ∫ f(x) dx</text>
</svg>
</div>.sc-fig { margin: 0; text-align: center; }
.sc-fig svg { width: 100%; max-width: 420px; height: auto; }図が理由を表しています。幅 の長方形を曲線の上に並べると、面積の比較から次の不等式が得られます。
左の不等式から、積分が発散すれば部分和も発散します。右の不等式から、積分が収束すれば部分和は有界で級数も収束します。明るい背景を前提に配色したので、暗色テーマでは見えにくくなる場合があります。
p 級数
積分判定法のいちばんの成果が 級数です。 の挙動が完全に決まります。
は で正値かつ単調減少です。 のとき積分は次のように計算できます。
なら で積分は に収束し、 なら発散します。 は調和級数にあたり、積分は となって発散します。
まとめると で収束、 で発散です。 では項が に近づかないので、必要条件の段階で発散します。 級数は比較の相手として最もよく使われる基準になります。
Cauchy の凝集判定法
単調減少な正項級数には、項を の冪ごとに「凝集」させる判定法があります。
が単調減少とします。このとき と の収束・発散は一致します。
調和級数の証明で使ったまとめ方の一般化です。 個の項をひとまとめにし、そのまとまりを最大の項と最小の項で上下から押さえると、両方向の比較が同時に得られます。
級数にあてはめると威力が分かります。 なら となり、凝集した級数は公比 の幾何級数です。 すなわち で収束、という結論が即座に出ます。
例:
凝集判定法が本領を発揮する例です。 は発散します。
とおくと、凝集した項は次のようになります。
これは調和級数の定数倍ですから発散します。したがってもとの級数も発散します。 より速く に近づくのに、まだ足りないわけです。
指数を上げると様子が変わります。 では となり、 の 級数の定数倍なので収束します。収束と発散の境目が と のあいだにあると分かります。
比判定法(ダランベール)
隣り合う項の比を見る判定法です。幾何級数との比較を、比の形で行っています。
とし、 が存在するとします。 ならば絶対収束、 ならば発散、 のときは判定できません。
の場合の理由は比較です。 となる をとると、十分大きい で が成り立ち、項は公比 の幾何級数で押さえられます。 なら項の絶対値が増加に転じ、 が破れます。
極限が存在しないときは上極限と下極限で述べます。 ならば絶対収束、 ならば発散、というのがより一般的な形です。
例: 階乗を含む級数
階乗が入ると比判定法が最もよく効きます。 を調べます。
比を計算すると、階乗と冪が打ち消し合ってきれいな形になります。
ですから、比の極限は でおよそ です。 より小さいので、この級数は収束します。
分子と分母を入れ替えた では、同じ計算から比の極限が になり、 より大きいので発散します。この場合は項が に近づかないことからも発散が分かります。
根判定法(コーシー)
項の 乗根を見る判定法です。こちらも幾何級数との比較ですが、比ではなく項の大きさそのものを見ます。
とおきます。 ならば絶対収束、 ならば発散、 のときは判定できません。
なら、 となる について十分大きい で が成り立ちます。幾何級数と比較すれば収束します。 なら となる が無限個あり、 が破れます。
比判定法と違い、上極限で述べれば極限の存在を仮定せずに使えます。この違いが、次の節の優位につながります。
根判定法のほうが強い
2 つの判定法は独立ではありません。根判定法は比判定法より強く、比判定法で分かることは根判定法でも必ず分かります。
正の数列について、次の不等式の連鎖が成り立つからです。
比判定法が収束を言えるのは右端が 未満のときで、そのとき も 未満になります。発散の場合も左端を見れば同様です。
逆は成り立ちません。次の級数が反例になります。
が偶数なら 、奇数なら という級数です。 は と を交互にとるので上極限は で、根判定法から収束が分かります。一方の比 は に近づく場合と に発散する場合を繰り返すため、比判定法では何も言えません。
のとき: Raabe の判定法
比が に近づくときは、比判定法も根判定法も沈黙します。 級数がまさにその状況で、 となってしまいます。
このすき間を埋めるのが Raabe の判定法です。正項級数について次の極限をとります。
ならば収束、 ならば発散、 のときは判定できません。比が に近づく速さを 倍して測っている、と読めます。
級数で試すと はおよそ なので となり、 で収束という正しい結論が出ます。判定法には階層があり、行き詰まったら 1 段強い道具に移るというのが実際の流れです。
絶対収束
ここからは項の符号が変わる級数を扱います。まず絶対収束を定義します。
が収束するとき、 は絶対収束するといいます。絶対収束すれば収束します。Cauchy の判定条件と三角不等式から となり、右辺が小さくなれば左辺も小さくなるからです。
絶対収束の判定は、正項級数の問題に帰着します。 はすべて正項なので、これまでの判定法がそのまま使えます。比判定法や根判定法の結論が「絶対収束」なのは、このためです。
が収束するのに が発散するとき、条件収束するといいます。
<div class="sc-fig">
<svg viewBox="0 0 400 220" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="すべての級数の中に収束する級数があり、その中に絶対収束する級数がある入れ子の図。差分が条件収束、外側が発散。">
<rect x="0" y="0" width="400" height="220" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<rect x="15" y="20" width="370" height="180" rx="12" fill="#f3f4f6" stroke="#8a9099" stroke-width="1.4"/>
<ellipse cx="190" cy="118" rx="155" ry="68" fill="#ede7f8" stroke="#7a52c0" stroke-width="1.6"/>
<ellipse cx="150" cy="118" rx="95" ry="48" fill="#dbe6fb" stroke="#1b4fb8" stroke-width="1.6"/>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="13" stroke="#fafbfc" stroke-width="3" paint-order="stroke">
<text x="28" y="40" fill="#5a6270">すべての級数</text>
<text x="190" y="44" fill="#7a52c0" text-anchor="middle">収束する級数</text>
<text x="150" y="123" fill="#1b3a8a" text-anchor="middle">絶対収束</text>
<text x="296" y="123" fill="#7a52c0" text-anchor="middle">条件収束</text>
<text x="330" y="180" fill="#c93c41" text-anchor="middle">発散</text>
</g>
</svg>
</div>.sc-fig { margin: 0; text-align: center; }
.sc-fig svg { width: 100%; max-width: 420px; height: auto; }図は 3 つの状態の関係を表しています。絶対収束する級数は収束する級数の一部で、その差分にあたるのが条件収束です。両者は次の節から見るように、性質が大きく異なります。
交代級数判定法(ライプニッツ)
符号が交互に変わる級数には、専用の判定法があります。
が単調減少で のとき、交代級数 は収束します。絶対収束は要りません。
和 と第 部分和の差は次の項で押さえられ、 が成り立ちます。
理由は部分和の挟み撃ちです。奇数番目の部分和は減少し、偶数番目の部分和は増加し、両者の差 は に近づきます。区間が入れ子に縮んでいき、ただ 1 点に収束します。
<div class="sc-fig">
<svg viewBox="0 0 400 200" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="交代級数の部分和が入れ子の区間を作りながら和 S に収束する様子を数直線で示した図。">
<rect x="0" y="0" width="400" height="200" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<g stroke="#7a52c0" stroke-width="1.5" fill="none">
<path d="M70,55 L70,50 L340,50 L340,55"/>
<path d="M130,75 L130,70 L275,70 L275,75"/>
<path d="M170,95 L170,90 L235,90 L235,95"/>
</g>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="11" fill="#7a52c0">
<text x="346" y="54">a₂</text>
<text x="281" y="74">a₄</text>
<text x="241" y="94">a₆</text>
</g>
<line x1="50" y1="125" x2="368" y2="125" stroke="#5a6270" stroke-width="1.4" fill="none" marker-end="url(#scb)"/>
<defs>
<marker id="scb" markerWidth="9" markerHeight="9" refX="6" refY="3" orient="auto"><path d="M0,0 L7,3 L0,6 z" fill="#5a6270"/></marker>
</defs>
<g fill="#1b4fb8">
<circle cx="70" cy="125" r="3.4"/><circle cx="130" cy="125" r="3.4"/><circle cx="170" cy="125" r="3.4"/>
<circle cx="235" cy="125" r="3.4"/><circle cx="275" cy="125" r="3.4"/><circle cx="340" cy="125" r="3.4"/>
</g>
<circle cx="200" cy="125" r="4.6" fill="#c93c41"/>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="12" text-anchor="middle" fill="#1b3a8a">
<text x="70" y="145">S₂</text>
<text x="130" y="145">S₄</text>
<text x="170" y="145">S₆</text>
<text x="235" y="145">S₅</text>
<text x="275" y="145">S₃</text>
<text x="340" y="145">S₁</text>
</g>
<text x="200" y="145" font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="12" text-anchor="middle" fill="#c93c41">S</text>
<text x="200" y="178" font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="12" text-anchor="middle" fill="#1b3a8a">S₂ < S₄ < S₆ < S < S₅ < S₃ < S₁</text>
</svg>
</div>.sc-fig { margin: 0; text-align: center; }
.sc-fig svg { width: 100%; max-width: 420px; height: auto; }図の区間が誤差評価そのものを表しています。 はつねに と のあいだにあるので、打ち切り誤差は次の項を超えません。数値計算で扱いやすいのは、この性質のためです。
例: 条件収束する級数
代表的な条件収束の例を見ます。交代調和級数 です。
は単調減少で に近づくので、ライプニッツの判定法から収束します。和は次の値になります。
一方で絶対値をとると調和級数になり、発散します。したがってこの級数は条件収束です。
も同じ構造です。ライプニッツの判定法から収束しますが、絶対値をとると の 級数になって発散するので、やはり条件収束します。
Dirichlet の判定法
ライプニッツの判定法は、もっと一般的な原理の特別な場合です。
数列 の部分和が有界、すなわちある があって がすべての で成り立つとします。さらに が単調減少で とします。このとき は収束します。
証明の核は Abel の総和法で、積の和を部分和の差に組み替えます。振動する の寄与が打ち消し合い、単調に減る がそれを抑え込む、という構図です。
とすれば部分和は と を往復して有界なので、ライプニッツの判定法が復元されます。より複雑に振動する でも同じ議論が通る点が利点です。
例:
Dirichlet の判定法の見せ場です。 は収束します。
の部分和が有界であることを示します。和積の公式を使うと、部分和は閉じた形に書けます。
分子は絶対値が 以下なので、部分和は で押さえられます。 は単調減少で に近づくので、Dirichlet の判定法から収束が従います。
絶対収束はしません。加法定理から を展開すると が得られるので、隣り合う 2 項の和は 以上になります。調和級数と比較すれば は発散し、もとの級数は条件収束だと確定します。
和の値は です。フーリエ級数 ()に を代入すると得られます。
リーマンの再配列定理
絶対収束と条件収束の差が最もはっきり出るのは、項を並べ替えたときです。
項をどう並べ替えても収束し、和も変わりません。無条件収束とも呼ばれ、有限和と同じ感覚で扱えます。
並べ替えると和が変わります。あらかじめ決めた任意の実数に収束させることも、発散させることもできます。
後者を精密に述べたものがリーマンの再配列定理です。条件収束する級数の項は、任意に指定した実数に収束するように並べ替えられ、 や に発散させることも、振動させることもできます。
からくりは、正の項だけの和と負の項だけの和が、どちらも発散する点にあります。材料が無限にあるので、目標値を超えるまで正の項を足し、下回るまで負の項を足す、という操作を繰り返せば、いくらでも目標に近づけられます。
交代調和級数の和が だというのは、あくまで「この順番で足したとき」の値です。条件収束する級数では、和は項の集まりだけでなく順番にも依存します。
判定法の選び方
判定法が出そろったので、使う順番を整理します。
<div class="sc-fig">
<svg viewBox="0 0 400 320" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="級数の収束判定の流れ図。項がゼロに近づくかを調べ、正項なら比・根・積分・比較・凝集、交代ならライプニッツ、それ以外は絶対収束や Dirichlet を使う。">
<rect x="0" y="0" width="400" height="320" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<g stroke="#1b4fb8" stroke-width="1.5" fill="none" marker-end="url(#scc)">
<line x1="110" y1="42" x2="110" y2="66"/>
<line x1="110" y1="96" x2="110" y2="136"/>
<line x1="110" y1="166" x2="110" y2="206"/>
<line x1="110" y1="236" x2="110" y2="270"/>
<line x1="158" y1="82" x2="268" y2="82"/>
<line x1="158" y1="152" x2="248" y2="152"/>
<line x1="162" y1="222" x2="248" y2="222"/>
</g>
<defs>
<marker id="scc" markerWidth="9" markerHeight="9" refX="7" refY="3" orient="auto"><path d="M0,0 L7,3 L0,6 z" fill="#1b4fb8"/></marker>
</defs>
<g fill="#eaf1fd" stroke="#1b4fb8" stroke-width="1.4">
<rect x="75" y="16" width="70" height="26" rx="6"/>
<rect x="62" y="68" width="96" height="28" rx="6"/>
<rect x="62" y="138" width="96" height="28" rx="6"/>
<rect x="58" y="208" width="104" height="28" rx="6"/>
<rect x="45" y="272" width="130" height="40" rx="6"/>
<rect x="270" y="69" width="60" height="26" rx="6"/>
<rect x="250" y="132" width="100" height="40" rx="6"/>
<rect x="250" y="209" width="100" height="26" rx="6"/>
</g>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="12" text-anchor="middle" fill="#1b3a8a">
<text x="110" y="34">Σ aₙ</text>
<text x="110" y="87">aₙ → 0 ?</text>
<text x="110" y="157">aₙ ≥ 0 ?</text>
<text x="110" y="227">交代級数 ?</text>
<text x="110" y="289">絶対収束を調べる</text>
<text x="110" y="305">Dirichlet 判定法</text>
<text x="300" y="87">発散</text>
<text x="300" y="148">比・根・積分</text>
<text x="300" y="164">比較・凝集</text>
<text x="300" y="227">ライプニッツ</text>
</g>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="11" fill="#c93c41">
<text x="118" y="120">はい</text>
<text x="118" y="190">いいえ</text>
<text x="118" y="258">いいえ</text>
<text x="196" y="76">いいえ</text>
<text x="188" y="146">はい</text>
<text x="190" y="216">はい</text>
</g>
</svg>
</div>.sc-fig { margin: 0; text-align: center; }
.sc-fig svg { width: 100%; max-width: 420px; height: auto; }まず を確かめます。破れていれば、その時点で発散が確定します。破れていなければ、正項級数かどうかで道が分かれます。
正項なら、階乗や冪が主役のときは比判定法、 乗根がきれいに出るときは根判定法、単調減少で積分しやすいときは積分判定法を使います。 が絡むなら凝集判定法が有効で、いずれも決まらなければ既知の級数との比較に戻ります。
符号が変わる場合は、まず絶対値をとって絶対収束を調べます。絶対収束しないときは、交代級数ならライプニッツ、より複雑な振動なら Dirichlet の判定法へ進みます。
べき級数と収束半径
判定法の応用として、べき級数の収束する範囲が決まります。
べき級数 に根判定法を適用すると となります。これが より小さいという条件から、収束半径 が定まります。
これを Cauchy–Hadamard の公式といいます。 で絶対収束、 で発散し、 の境界上では個別に調べる必要があります。
冒頭の幾何級数 は なので です。 では となって全体で収束し、和は になります。 とすれば が得られ、判定法が具体的な値の計算につながります。
理解の確認
最後に 1 問。必要条件と十分条件の区別を思い出してください。
が成り立つ級数 について、正しいものはどれですか。
- 級数は必ず収束する
- 収束するとは限らず、判定には別の条件が必要である
- 級数は必ず絶対収束する
- 級数は必ず発散する










an→0 は収束の必要条件であって、十分条件ではありません。調和級数 ∑n1 は項が 0 に近づくのに発散し、∑n21 は収束します。同じ「項が 0 に近づく」でも結論が分かれるので、比較・積分・凝集などの判定法が必要になります。