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English

積分因子を掛けると左辺が微分の形にまとまる(1 階線形微分方程式)

の左辺は、そのままでは何かの微分に見えません。両辺に を掛けると にまとまり、あとは両辺を積分するだけになります。

この掛ける関数を積分因子といいます。 の形なら、 でいつでも作れます[1]

以下は 問です。基本形から始め、変数係数、ベルヌーイ形、完全形、定数変化法、リッカチ形まで並べました。

積分因子はどこから来るか

積の微分を逆に読みます。 です。

これが に等しくなるには、 が要ります。変数分離して解くと次の形です。

積分定数は要りません。 を定数倍しても両辺に同じ倍率が掛かるので、答えが変わらないためです。

標準形 y’ + p y = q に直す

μ = exp(∫p dx) を掛ける

左辺が (μy)’ にまとまる

両辺を積分して y について解く

段を飛ばすと誤ります。 の係数が でない式に、そのまま積分因子を当てないようにします。

問題 1:基本形

を解け。

解答 1

なので です。両辺に掛けます。

積分して です。

項が特殊解、第 項が同次方程式の解です。この つの和になる。それが線形方程式の構造です[1]

問題 2:初期条件つき

を解け。

解答 2

です。

右辺を部分積分します。 です。

から で、解は になります。

問題 3:変数係数

)を解け。

解答 3

です。

で係数が定義されないので、解も原点をまたげません。係数の特異点が解の定義域を決めます。

問題 4:三角関数の係数

を解け。

解答 4

なので、 です。

の点では が定義されません。解が使えるのは、そのあいだの区間ごとです。

問題 5:ベルヌーイ形

を解け。

解答 5

右辺に があるので線形ではありません。ベルヌーイ形です[2]

なので と置きます。 です。

両辺を で割ります。

という線形方程式になりました。 で解きます。

も解です。 で割ったときに落ちているので、別に確かめます。

問題 6:RL 回路

を解け。

解答 6

標準形に直します。 です。

を掛けます。

から です。

に近づきます。時定数 で立ち上がる形です。

同次解の が時間とともに消え、特殊解の だけが残ります。過渡的な部分と定常的な部分に分かれる、と読めます。

問題 7:完全形

を解け。

解答 7

です。判定式を見ます。

一致するので完全形です。 を積み上げます。

から です。 で微分して と比べます。

一般解は です。線積分でポテンシャルを求めるのと同じ手順になります。

問題 8:積分因子で完全形にする

を解け。

解答 8

で一致しません。

差を で割ると だけの式になります。

だけの式なら、 が積分因子になります。

掛けると完全形です。 で、一般解は になります。

積分因子が だけ、あるいは だけの式になるかを見る。それがこの型の判定です。

問題 9:係数を整える

を解け。

解答 9

の係数が なので、まず割って標準形にします。

です。

割らずに としてしまう誤りが多いところです。標準形に直してから を読みます。

問題 10:定数変化法

を定数変化法で解け。

解答 10

同次方程式 の解は です。

定数 を関数 に置きかえます[1] とすると です。

代入すると の項が消えます。

右辺は循環型の部分積分で出ます。

積分因子と同じ答えです。 の項が消えるのは、 が同次解だからです。

問題 11:リッカチ形

について、 が解であることを確かめ、一般解を求めよ。

解答 11

代入して確かめます。 で、右辺は です。合っています。

と置きます。特殊解が つ分かれば、リッカチ形は線形に落ちます。

計算すると次の線形方程式になります。

で解いて です。

つ解を見つけるところは手探りになります。見つかったあとは線形の手順です。

問題 12:解の構造

線形方程式の一般解が、同次解と特殊解の和になることを示せ。

解答 12

をどちらも の解とします。差をとります。

差は同次方程式の解です。同次解は 次元ぶんしかありません。

したがって、特殊解を つ見つければ、あとは同次解を足すだけで全部の解が書けます[1]

問題 がその形です。 項の役割が分かれています。

問題 13:存在と一意性

が区間 で連続なら、初期値問題の解が 全体で存在することを示せ。

解答 13

積分因子による式が、そのまま解の表示になります。

で連続なら、積分はすべて 全体で定義されます。よって解も 全体で存在する。

一意性も出ます。 つの解の差が同次方程式を満たし、初期値が なら になるからです。

線形でない場合と対比すると違いがはっきりします。 の解は有限の で発散し、大域的には存在しません。

問題 14:線形かどうかの見分け

次のうち 階線形はどれか。

解答 14

線形とは、 について 次であることです。係数が の関数であるぶんには問題ありません。

は線形です。 が掛かっていても 次だからです。

があるので非線形。ベルヌーイ形にも当てはまりません。

の積があるので非線形です。変数分離で解けます。

も非線形で、こちらも変数分離です。

判定は の入り方だけを見ます。 がどう入っていても線形性には関係しません。

線形

次で、係数は の関数でよい。

ベルヌーイ形

で線形に落ちる。

完全形

。ポテンシャルを積み上げる。

リッカチ形

。特殊解が つ分かれば線形に落ちる。

問題 15:積分因子を定数倍しても同じ

問題 を使うと答えが変わるか。

解答 15

両辺に を掛けます。

両辺を で割ると、 と置きかえた同じ式になります。

積分因子の定数倍は答えに効きません。 を求めるとき積分定数を書かなくてよいのは、この理由です。

同じことで、 の符号を逆にとっても結果は変わりません。 の定数の選び方も自由です。

つまずきやすいところ

標準形への直しと、落ちる解で誤ります。

標準形に直さずに を読む

の係数を にしてから を決めます。 なら です。

ベルヌーイ形で を落とす

で割ったときに消えます。別に確かめます。

係数の特異点を見落とす

が係数なら、解は原点をまたげません。

完全形の判定を飛ばす

を確かめてから を積み上げます。

の入り方で型を決め、標準形に直してから積分因子を作る。順序を守れば計算は 本道です。

の積分因子はどれですか。

__RESULT__

標準形に直すと で、 です。 になります。もっとも、この式は最初から左辺が の形になっています。

よくある誤り

標準形に直さずに を読む。 の係数を にしてからです。
積分因子に積分定数を書く。定数倍は答えに効かないので不要です。
ベルヌーイ形で を落とす。割ったときに消えています。
完全形の判定を飛ばして を積み上げる。 を先に確かめます。
係数の特異点を無視して解の定義域を広くとる。区間ごとに解が決まります。
が掛かっていると非線形だと思う。係数が の関数でも線形です。
線形でも解が有限の で発散すると思う。係数が連続なら区間全体で存在します。

型を見分けたら、あとは積分因子を作って掛けるだけ。ベルヌーイもリッカチも、線形に落としてから同じ手順に乗せます。

参考文献

[1] 階線形方程式・積分因子・解の構造・定数変化法・存在と一意性、[2] がベルヌーイ方程式と置きかえ、[3] が完全形と積分因子、[4] がリッカチ方程式、[5] がドイツ語での定式化です。

Linear differential equation - Wikipedia
Bernoulli differential equation - Wikipedia
Exact differential equation - Wikipedia
Riccati equation - Wikipedia
Lineare gewöhnliche Differentialgleichung - Wikipedia
$y'+2y=e^{-x}$ の左辺は何かの微分に見えませんが、$e^{2x}$ を掛けると $(e^{2x}y)'$ になり、あとは積分するだけ。この $\mu=e^{\int p\,dx}$ は積の微分を逆に読めば出てきます。$15$ 問で、標準形へ直してから $p$ を読む手順、変数係数と三角関数の係数、$z=y^{1-n}$ でベルヌーイ形を線形に落とす置きかえ、完全形と積分因子、定数変化法を扱いました。特殊解が $1$ つ分かればリッカチ形も線形になります。係数が連続なら解が区間全体で存在することまで並べています。