置換積分の計算問題|三角置換・有理化・対称性の使い分け
置換積分は、被積分関数の中に合成関数の構造を見抜き、変数を取り替えて積分を簡単にする手法です。
鍵になるのは「何を と置くか」の選択で、型ごとに定石があります。以下では公式の根拠を確かめてから、型ごとの計算例を 1 例ずつ節に分けて並べます。
公式はどこから来るか
置換積分は、合成関数の微分を積分の側から読み直したものです。 を の原始関数とすると、連鎖律から次が成り立ちます。
両辺を積分すれば、左辺は になります。これが置換積分の公式そのものです。
が 級で、 が の値域で連続であることが前提です。 という書き方は、この計算を覚えやすくするための記法にすぎません。
前向きの置換と後ろ向きの置換
置換には向きが 2 通りあります。どちらも同じ公式ですが、頭の使い方が違います。
前向きの置換は と置く形です。被積分関数の中に が因子として見えているときに使います。問題 1 から 3 がこの型です。
後ろ向きの置換は と置く形です。根号を外したいときのように、こちらから都合のよい形を持ち込みます。三角置換や双曲線置換がこれにあたります。
後ろ向きに置くときは、 が考えている範囲で 1 対 1 であることを確かめます。そうでないと に戻せません。
問題 1:内部関数の導関数が見えている場合
次の不定積分を求めます。
と置くと なので、 です。
の内部関数 の導関数である が、因子として現れている点がポイントです。この形が見えたら前向きの置換を疑います。
問題 2:三角関数の一方を残す
と置くと です。
と が組み合わさっているときは、一方を と置いて他方を に吸収させます。奇数乗のほうを崩して に回すのが定石です。
問題 3:分母を丸ごと置く
と置くと です。
なので絶対値は外せます。より一般に、分子が分母の導関数になっている の形は になります。
問題 4:対数を置く
分母に があり、その導関数 も因子として現れています。 と置けば です。
前問と同じ の型で、 になっています。入れ子が深くても、見つけるべき構造は変わりません。
問題 5:ルートを外す三角置換
と置きます。 に制限すれば 1 対 1 で、 より です。 となります。
を使って に戻します。
と置く。 でルートが外れる。
と置く。 でルートが外れる。
と置く。 でルートが外れる。
根号の中に 2 次式を見たら、まずこの 3 つを検討します。1 対 1 になる範囲に を制限しておくことを忘れないようにします。
問題 6:ルートの中が和の場合
と置くと 、 です。
、 を代入します。
の分は定数に吸収させて と置き直しています。積分定数があるので、こうした差は表に出ません。
問題 7:双曲線関数で置く
と置くと で、 なら です。
を に戻すと になります。
と置くと に帰着する。セカントの積分の公式を覚えている必要がある
と置くと被積分関数が になる。 のほうが扱いやすい場面が多い
問題 8:平方完成してから置く
分母をそのまま置いても進みません。先に平方完成します。
と置けば で、見慣れた形になります。
2 次式が分母にあるときは、平方完成して か の形にするのが最初の一手です。
問題 9:ルートの中を平方完成する
根号の中を平方完成します。
と置けば、 の形になります。
平方完成と三角置換は組み合わせて使います。定義域が に限られる点にも注意します。
問題 10:根号を有理化する置換
と置きます。、 です。
根号が 1 種類なら、それ自体を と置けば有理関数になります。
問題 11:根号が 2 種類ある場合
指数の分母が と なので、最小公倍数の を使って と置きます。、、 です。
多項式の割り算で と分けます。
最後に を代入して戻します。次数の違う根号が混ざっているときは、指数の最小公倍数を取るのが定石です。
問題 12:指数関数を置く
と置くと なので です。
に戻します。 なので絶対値は外せます。
置換したあとに部分分数分解が要る形です。1 回の置換で終わらないことも珍しくありません。
問題 13:定積分では範囲も移す
と置くと です。 が から まで動くとき、 は から まで動きます。
範囲を の値に移してしまえば、最後に へ戻す必要がありません。不定積分より手数が減ります。
問題 14:向きが入れ替わる場合
と置くと です。 が から まで動くと、 は から へと減ります。
上端と下端が入れ替わる置換では、符号を取り違えないように積分範囲をそのまま書き下します。
問題 15:三角関数の有理式を有理関数にする
と置きます。この置換では次の関係が成り立ちます。
代入して整理します。分母は になります。
を戻して答えになります。
この をワイエルシュトラス置換といい、 と の有理式の積分をすべて有理関数の積分に帰着させます。
上の 3 本の関係式で三角関数が消え、あとは部分分数分解で処理できる形になる。
万能ですが式が膨らみやすいので、ほかの手が使えるならそちらを先に試します。
定積分で気をつけること
後ろ向きの置換を定積分に使うときは、置換が積分区間の全体で 1 対 1 かつ連続であることを確かめます。ここを飛ばすと答えが合いません。
<svg viewBox="0 0 460 220" width="100%" style="max-width:460px;display:block;margin:0 auto">
<line x1="50" y1="78" x2="200" y2="78" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1"></line>
<line x1="50" y1="152" x2="200" y2="152" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1"></line>
<line x1="52" y1="84" x2="58" y2="146" stroke="#1b81e0" stroke-width="1.2"></line>
<line x1="125" y1="84" x2="129" y2="146" stroke="#1b81e0" stroke-width="1.2"></line>
<line x1="198" y1="84" x2="194" y2="146" stroke="#1b81e0" stroke-width="1.2"></line>
<line x1="264" y1="78" x2="414" y2="78" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1"></line>
<line x1="264" y1="152" x2="414" y2="152" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1"></line>
<line x1="282" y1="84" x2="340" y2="146" stroke="#d0562a" stroke-width="1.2"></line>
<line x1="398" y1="84" x2="340" y2="146" stroke="#d0562a" stroke-width="1.2"></line>
<circle cx="340" cy="150" r="3" fill="#d0562a"></circle>
<text x="55" y="24" font-size="11" fill="#1f1f1f">定積分の置換では、区間の対応を先に確かめる</text>
<text x="50" y="52" font-size="11" fill="#1b81e0">1 対 1 なら、そのまま範囲を移せる</text>
<text x="264" y="52" font-size="11" fill="#d0562a">折り返すと、同じ値に 2 点が対応する</text>
<text x="208" y="82" font-size="11" fill="#9a9a9a">x</text>
<text x="208" y="156" font-size="11" fill="#9a9a9a">t</text>
<text x="422" y="82" font-size="11" fill="#9a9a9a">x</text>
<text x="422" y="156" font-size="11" fill="#9a9a9a">t</text>
<text x="55" y="196" font-size="11" fill="#9a9a9a">1 対 1 でない置換は、区間を切ってから使う</text>
</svg>次の積分を考えます。被積分関数は正なので、値は正になるはずです。
ワイエルシュトラス置換を機械的に当てると、 で 、 でも になります。上端と下端が同じなので、値は という結論が出ます。
これは誤りです。 は で発散するので、区間 の上で連続な置換になっていません。
正しく計算する
区間を分けるか、対称性を使います。 なので、後半は前半と同じ値です。
に限れば置換は 1 対 1 で、 は から まで動きます。分母を計算します。
代入すると が約分されます。
正の値が出て、辻褄が合いました。置換が特異点をまたぐときは、必ず区間を切ります。
問題 16:置換で対称性を引き出す
原始関数を求めるのは面倒です。そこで と置きます。 と が入れ替わります。
もとの式とこの式を足すと、被積分関数が になります。
したがって です。原始関数を一度も求めていません。
という置換は、この種の積分でよく効きます。
問題 17:偶関数と奇関数
を、 の対称性から簡単にします。左半分に という置換を当てます。
が偶関数なら なので、右半分と同じ値になります。奇関数なら符号が反転して打ち消し合います。
よく使う公式ですが、中身は という置換 1 本です。
問題 18:2 つの置換を重ねる
原始関数は初等関数になりません。まず と置きます。、 なので、きれいに約分されます。
次に前問と同じ対称性の置換 を当てます。正接の加法定理から中身が変形されます。
対数を分けると、もとの積分が右辺に現れます。
移項して が求まります。
ルートを外す置換と対称性の置換を続けて使う例です。原始関数を求めずに定積分の値だけを出しています。










