関数列の各点収束と一様収束の違い
関数列 が極限関数 に「収束する」とはどういうことかを考えるとき、各点収束と一様収束という 2 つの概念があります。各点収束は点ごとに極限を取る素朴な定義ですが、これだけでは連続性や積分といった解析的な性質が極限で保たれません。一様収束はこの欠陥を修正する、より強い収束概念です。
各点収束の定義
区間 上で定義された関数列 が関数 に各点収束(pointwise convergence)するとは、各 に対して
が成り立つことです。- の言葉で書けば、任意の と任意の に対して、ある ( と に依存する)が存在し、 ならば となることです。
ここで重要なのは、 が に依存してよいという点です。ある点では で十分かもしれないが、別の点では でも足りないかもしれません。
各点収束の問題点
各点収束だけでは解析的に都合の悪いことがいくつも起こります。最も典型的な例を見てみます。
例: 上で とします。各点での極限を計算すると
です。各 は連続関数ですが、極限関数 は で不連続になっています。
上の連続関数。グラフは滑らかな曲線。
で 、 で 。不連続関数。
連続関数の列の極限が連続とは限らない——これは各点収束の根本的な弱点です。
一様収束の定義
一様収束(uniform convergence)は、 が によらず取れることを要求します。
関数列 が に一様収束するとは、任意の に対して、ある ( のみに依存し に依存しない)が存在し、すべての と に対して が成り立つことです。
上限ノルムを使えば、
と簡潔に表現できます。
such that
such that
2 つの定義を比べると、 と の順序が入れ替わっています。各点収束では「 を固定してから を選ぶ」のに対し、一様収束では「 を先に決めてからすべての で成立する」ことを要求します。この量化子の順序の違いが、2 つの概念の本質的な差を生んでいます。
幾何学的な解釈
一様収束には視覚的にわかりやすい解釈があります。 のグラフの周りに幅 の帯(-チューブ)を考えます。
一様収束とは、十分大きな に対して のグラフ全体がこの帯の中に収まることです。各点収束では、各 でいずれ帯に入りますが、すべての で同時に帯に入る保証がありません。
先ほどの の例に戻ります。極限関数は ()、 です。 の近くでは がなかなか に近づかないので、-チューブの外にはみ出す部分が常に存在します。
上限が のまま減少しないので、一様収束しないことがわかります。
一様収束で保たれる性質
一様収束が各点収束より強い概念である理由は、解析的に重要な性質が極限操作で保存されるからです。
連続性の保存: 各 が連続で が一様収束ならば、 も連続です。
証明の核心は、 を三角不等式で 3 つに分解するところにあります。
第 1 項と第 3 項は一様収束から によらず小さくできます。第 2 項は の連続性から小さくできます。各点収束では第 1 項と第 3 項の制御が に依存してしまい、この議論が破綻します。
積分と極限の交換: 各 が 上でリーマン可積分で が一様収束ならば、
が成り立ちます。つまり と の順序を交換できます。
各 が連続(または可積分)
が一様収束
極限関数 も連続(または可積分)
と を交換できる
一様収束しないが各点収束する例をもう一つ
()を考えます。各 に対して であり、 なので極限関数は です。
しかし の最大値を求めると、 を解いて で最大値 を取ります。この最大値は で発散するので、
となり、一様収束からは程遠い状況です。積分についても
が全ての で成り立つ一方、
なので、極限と積分の交換が成立していません。各点収束だけでは積分の極限操作が保証されないことの具体例です。
一様収束の判定:ワイエルシュトラスの 判定法
関数級数 の一様収束を判定するとき、ワイエルシュトラスの 判定法がよく使われます。
すべての と に対して となる定数列 が存在し、 ならば、 は 上で一様収束します。
この判定法の強みは、各 を によらない定数 で上から押さえるだけでよい点です。 の情報をすべて捨てて定数に置き換えても収束が言えるため、一様絶対収束と呼ばれることもあります。
一様収束と絶対収束を同時に示す手法で、べき級数やフーリエ級数の収束証明で頻繁に使われる。
たとえば の一様収束を示すには、 とおき、 なので 判定法が適用できます。
コーシー列としての一様収束
一様収束はコーシー列の観点からも特徴づけられます。関数列 が 上で一様収束するための必要十分条件は、任意の に対してある が存在し、 ならば
が成り立つことです。これは上限ノルムに関するコーシー列の条件に他なりません。前の記事で扱った完備性との関連で言えば、上限ノルムを備えた有界連続関数の空間 が完備(バナッハ空間)であることから、コーシー条件を満たす関数列は必ず一様収束先を持ちます。
()について、 の収束はどちらですか?
- 各点収束するが一様収束しない
- 一様収束する
- 各点収束もしない
- 各点収束かつ一様収束する
各 x に対して fn(x)→0 なので各点収束します。しかし x=1/n で fn(1/n)=2n1 となるため supx∣fn(x)∣≥2n1→0 ですが、実際には最大値が 2n1 なのでこの場合は一様収束もします。正しくは、fn の最大値を求めると x=1/n で fn=1/(2n)→0 なので一様収束します。各点収束するが一様収束しない典型例は fn(x)=xn([0,1] 上)です。