積分の解き方と計算テクニック|置換積分・部分積分・部分分数を例題で解説
積分の計算では、置換積分と部分積分という二つの基本テクニックを軸に、被積分関数の形に応じた定石を使い分けることが要になります。微分が公式どおり機械的に進むのに対し、積分は「どの手を選ぶか」の見極めがすべてで、そこは経験がものを言います。以下、二本柱から始めて、三角関数・無理関数・有理関数の定石、さらに定積分ならではの技法まで、とにかく多くの例を解きながら手を動かしていきます。
置換積分
という変数変換を行うと、 を代入して次のように書き換えられます。
定積分では、積分範囲も変換後の変数に合わせて置き換えます。
うまくいくかどうかは、 がすでに被積分関数の中に潜んでいるかを見抜けるかにかかっています。
置換積分の例
無理関数の代表として を計算します。 とおくと で、根号が外れます。
に戻すと、 を得ます。次に を、、 で処理します。
被積分関数の中に微分が見えている場合は、その部分を丸ごと新しい変数にします。 は 、 で 、 は とおいて です。同じ要領で は から になります。
部分積分
積の微分公式 を積分して移項すると、部分積分の公式が出ます。
定積分では、境界の値を評価する項が加わります。
積分しやすいほうを 、微分すると簡単になるほうを に選ぶのがこつです。
部分積分の例
では 、 と選びます。 を微分すると定数になり、積分が一段軽くなります。
は 、 という、一見手がなさそうな形にこそ効きます。
多項式が二次なら二回繰り返します。 です。三角関数を混ぜた 、逆三角関数を単独で積分する も、同じ枠組みで片づきます。
循環する部分積分
部分積分を二回すると元の積分が右辺に戻ってくる、という状況もあります。 がその典型です。二回部分積分すると
となり、 についての方程式が立ちます。 を解いて、次を得ます。
積分そのものを未知数とみて解く、というのがこの手のからくりです。
部分積分と漸化式
指数を含む積分は、部分積分でひとつ次数を下げる漸化式にまとめられます。たとえば には次の関係があります。
に使うと、 とあわせて が求まります。同様に 、 と、次数を一つずつ削っていけます。
三角関数の積分
三角関数の冪は、次数の偶奇で戦略を変えます。偶数乗は半角の公式で次数を落とします。
同様に です。奇数乗は一つだけ分けて置換します。 は として とおき、 になります。両方偶数の は に直して 、 は から です。
セカント・コセカント
分数形の三角関数には、それぞれ定石があります。基本は で、分子分母に を掛けると積分できます。
コセカントも同じ発想で、半角を使ったきれいな形になります。
は の積分そのものなので、上の に一致します。これらは有理関数の積分やワイエルシュトラス置換の答えとしても顔を出す、頻出の基本形です。
三角置換の三点セット
平方根の中身の符号に応じて、三種類の三角置換を使い分けます。 には 、 には 、 には を当てると、いずれも根号が外れます。代表として を計算すると、次のようになります。
残り二つも同様で、、 が得られます。どの根号が来ても、対応する置換で三角関数の積分に帰着できる、という見取り図が大切です。
双曲線関数による置換
型には、三角置換の代わりに双曲線関数 を使うと計算が軽くなることがあります。、 で根号が外れ、 の積分に変わります。
同じ置換から も出ます。 には を当てれば同様に処理でき、三角置換とどちらを使うかは好みと式の見やすさで決めます。
ワイエルシュトラス置換
三角関数の有理式は、 とおくとすべて の有理関数に化けます。このとき 、、 です。例として を計算します。分母は になるので、代入すると劇的に簡単になります。
どんな三角有理式もこの置換で有理関数に落ちるので、最後の手段として非常に強力です。ただし式が膨らみやすいので、簡単な置換で済むときはそちらを優先します。
有理関数と部分分数分解
有理関数 の積分は、部分分数分解を経由すれば必ず初等関数で書けます。手順は決まっています。
分母を因数分解する
部分分数に分解して係数を決める
各項を log や arctan で積分する
もっとも基本的な分解は で、積分すると対数の差になります。
たとえば です。分母に重根 があれば の形を、既約な二次式が残れば次節の平方完成を組み合わせます。
平方完成で arctan・log へ
分母が実数の範囲で因数分解できない二次式のときは、平方完成して基本形に持ち込みます。分子を「分母の微分」と「定数」に分けるのがこつです。 では、分母の微分が なので と割ります。
前半は 、後半は の形から になり、あわせて次を得ます。
対称性の利用
定積分では、区間の対称性そのものが強力な武器になります。原点対称な区間では、奇関数の積分は 、偶関数の積分は片側の二倍です。 を使えば、 のような積分は計算せずに とわかります。
もう一つ強力なのが、区間を反転する King property です。 に を施すと が に変わり、もとの と足し合わせると被積分関数が になります。
したがって で、しかも によらない、という驚きの結果が原始関数を一切求めずに出ます。
漸化式とウォリスの公式
は、部分積分から導かれる漸化式で次数を下げられます。
を種にすると、 が得られます。区間を に取ると境界項が消え、ウォリスの公式と呼ばれるきれいな漸化式になります。
、 を初期値にすれば、、 のように次々に求まります。
フルラーニ積分
パラメータを二つ含む差の積分には、フルラーニ積分という美しい公式があります。適当な条件のもとで、 に対して次が成り立ちます。
単独では の積分は初等的に書けないのに、差を取ると答えが対数一つに畳み込まれるのが妙味です。より一般に、 と が定まる関数について が成り立ちます。
パラメータ微分(ファインマンの技法)
積分にパラメータを一つ忍ばせ、そのパラメータで微分してから積分を実行し、最後にもう一度パラメータで積分し直す、という技法があります。積分記号下の微分、あるいはファインマンの技法と呼ばれます。 を求めてみます。 で微分すると、やっかいな がきれいに消えます。
に注意して で積分し直すと、 が得られます。もとの積分を直接扱うより、微分して簡単な形にしてから戻す、という迂回が効くわけです。
級数展開して項別積分
初等的な原始関数が書けない場合でも、被積分関数をべき級数に展開して項ごとに積分すれば、答えを級数として表せます。 は を項別に積分します。
閉じた初等関数にはなりませんが、収束するべき級数として値は完全に決まります。数値計算や近似では、この級数表示がそのまま使えます。
オイラーの公式で三角積分
指数と三角関数の積は、オイラーの公式 を使って複素指数にまとめると、計算が一本化されます。 は、 を の実部とみなして次のように扱えます。
実部を取り出すと、循環する部分積分で求めたのと同じ答え が、部分積分なしで得られます。 のときは虚部を取れば同様です。
初等関数にならない積分
すべての初等関数が初等関数で積分できるわけではありません。次のような積分は、原始関数が初等関数(多項式・指数・対数・三角関数とその合成)では書けないことが、リウヴィルの定理により証明されています。
これらは決して「まだ解けていない」のではなく、初等関数の範囲では原理的に不可能なのです。そこで誤差関数や正弦積分といった新しい関数を定義してこれらを名づけ、必要な性質を別途調べる、という道が取られます。積分できないことを見抜くのも、計算技術の一部です。
ガウス積分とガンマ関数
初等的には求まらないのに、区間を全体に広げた定積分なら閉じた値を持つ、という例があります。ガウス積分はその代表で、二次元に持ち上げて極座標に変換する巧妙な方法で計算できます。
同じ精神の一般化がガンマ関数で、階乗を実数・複素数へ拡張します。定義と基本性質は次のとおりです。
はガウス積分と結びつき、定積分の技法がこうした特殊関数の入り口になっていることがわかります。
覚えておく基本形
繰り返し現れる原始関数は、形で覚えておくと置換や部分分数の答え合わせが速くなります。
| 被積分関数 | 原始関数 |
|---|---|
| 1/(a²+x²) | (1/a)·arctan(x/a) |
| 1/√(a²−x²) | arcsin(x/a) |
| 1/√(x²+a²) | ln(x+√(x²+a²)) |
| tan x | −ln|cos x| |
| sec x | ln|sec x+tan x| |
| 1/sin x | ln|tan(x/2)| |
これらはいずれも、置換積分や部分分数分解を一度たどれば自力で導けます。導き方とセットで覚えておくと、忘れても復元できて安心です。
部分積分で何を選ぶか
部分積分で (微分する側)に何を選ぶかは、LIATE の順で先に来るものを優先すると、たいていうまくいきます。
対数関数 L、逆三角関数 I、代数関数(多項式)A の順で先に来るもの。微分すると簡単になる関数を置く。
三角関数 T、指数関数 E の順で後に来るもの。積分しても形が崩れない関数を置く。
なら対数の を 、なら多項式の を 、というように、この順序が迷ったときの指針になります。
手法の使い分け
二つの基本手法は、被積分関数の形で見分けます。
合成関数や、微分が式の中に現れている形に効く。 や のように、外側の変数をまとめて置き換える。
積の形、とくに多項式と指数・三角・対数の積に効く。 や のように、一方を微分して次数を下げる。
どちらとも決めがたいときは、両方を軽く試して式が簡単になるほうを採るのが早道です。有理関数なら部分分数、三角有理式ならワイエルシュトラス、と分野ごとの定石も合わせて引き出しに入れておきます。
方針チェックリスト
被積分関数を見たら、次の順で当たりをつけると迷いが減ります。
理解の確認
を計算するのに適した手法はどれでしょうか。
- 置換積分。 とおけばよい
- 部分積分。多項式 と三角関数 の積だから
- 部分分数分解。分母を因数分解すればよい
まとめ
積分の計算は、公式の暗記ではなく、被積分関数の形から手を選ぶ判断の連続です。置換積分は微分が潜んだ合成の形に、部分積分は積の形に効き、有理関数は部分分数、無理関数は三角・双曲線置換、三角有理式はワイエルシュトラス置換、という定石がそれぞれの分野を受け持ちます。定積分ではさらに、対称性・漸化式・区間反転・パラメータ微分・級数展開といった、原始関数を求めずに値を出す技法が加わります。初等関数で書けない積分があることまで含めて、どの引き出しを開けるかを見極める目こそが、積分の計算力の正体です。たくさんの例で試したこれらの手を、形と対応で身体に入れておけば、たいていの積分は落ち着いて崩せます。










多項式と三角関数の積なので部分積分が適します。g=x、f′=cosx と選ぶと、g を微分して 1 になり積分が一段軽くなって、∫xcosxdx=xsinx+cosx+C が得られます。u=cosx の置換は du=−sinxdx が式の中になく、うまくいきません。