符号が変われば途中に解がある - 中間値の定理の応用
の解を式で書くと、カルダノの公式から入れ子の立方根が出てきます。ところが「 と のあいだにある」ことだけなら、 回の代入で分かる。
、 で符号が変わっています。連続な関数が負から正へ移るなら、途中で を通る[1]。
中間値の定理が言うのはこれだけです。解の位置も個数も教えてくれませんが、存在だけは代入 回で決まります。
主張と、効いている仮定
が閉区間 で連続とし、 が と のあいだにあるとします[1]。
このとき となる が開区間 に存在します。 とした形が、符号の変化から解を出す使い方です。
効いているのは実数の完備性です。有理数の範囲では成り立ちません。 は 、 ですが、 となる有理数はない[1]。
が有理数でないので、そこに穴が空いています。実数では穴が埋まっているため、通り抜けられません。

問題 1:解の存在
が に解を持つことを示せ。
解答 1
は多項式なので、実数全体で連続です。
、 で符号が変わります。
中間値の定理より、 となる が に存在します。実際の値は あたりです。
が で正なので、この区間では狭義単調増加。解はただ つになります。
問題 2:解の個数を数える
の実数解の個数を調べよ。
解答 2
と置きます。 なので は解です。
が になるのは で、そこが最小点になります。
で負です。
最小値が負で、両側で なので、解はちょうど つ。 と、 にあるもう つです。後者は あたりになります。
存在は中間値の定理、個数は単調性。この つを組み合わせる形が定石です。
問題 3:不動点の存在
が連続なら、 となる が存在することを示せ。
解答 3
差を関数にします。 と置くと、 も連続です。
の値域が なので、、 になります。
等号が成り立つ場合は端点がそのまま不動点です。どちらも真の不等号なら、中間値の定理から となる が内部にとれます。
次元のブラウワーの不動点定理にあたる主張です[1]。高い次元では位相の道具が要りますが、 次元では中間値の定理で足ります。
問題 4:二分法で近似する
の解を二分法で 回追い、小数第 位まで求めよ。
解答 4
で、、 です。解は にあります。
中点で符号を見て、解を含む側へ区間を狭めていきます。
| 回数 | 中点 | f(中点) の符号 |
|---|---|---|
| 1 | 1.500 | 正 |
| 2 | 1.250 | 負 |
| 3 | 1.375 | 正 |
| 4 | 1.312 | 正 |
| 5 | 1.281 | 正 |
| 6 | 1.266 | 正 |
回で区間の幅が になりました。 で、小数第 位まで合っています。
問題 5:二分法の誤差
区間 から始めて、誤差を 未満にするには何回必要か。
解答 5
回のあとの区間の幅は です。中点を答えとすれば、誤差はその半分になります。
なので、 で足ります。 回で 桁ぶん進む計算です。
回でおよそ 桁。遅い方法ですが、符号さえ見られれば必ず収束します。
問題 6:超越方程式の唯一解
が にただ つの解を持つことを示せ。
解答 6
と置きます。、 です。
中間値の定理から解が存在します。値は あたり。
は で負なので、 は狭義単調減少です。したがって解はただ つになります。
存在と一意性を別々の道具で示す形です。前者が中間値の定理、後者が単調性になります。
問題 7:連続関数の像
が連続なら、像が閉区間になることを示せ。
解答 7
最大値・最小値の定理から、 は最大値 と最小値 をとります。、 となる点が存在する。
像は に含まれます。逆向きを示します。
を と のあいだの任意の値とすると、 と を端とする区間で中間値の定理が使えます。 となる が存在する。
よって像はちょうど です。連続な像が閉区間になる、という主張の証明にはこの つの定理が要ります。
問題 8:n 乗根の存在
と正の整数 に対して、 となる正の が存在することを示せ。
解答 8
は で連続です。 になります。
と置くと です。 となる点が具体的にとれました。
中間値の定理から となる が に存在します。 は狭義単調増加なので、そのような はただ つです。
平方根や立方根の存在は、こうして実数の完備性から出ます。定義してから性質を調べるのではなく、存在を示すところから始まる。
問題 9:奇数次の多項式
奇数次の実係数多項式は、少なくとも つ実根を持つことを示せ。
解答 9
で は奇数、 とします。
が大きいところでは、最高次の項が符号を決めます。 なら で 、 で です。
が奇数なので、両端の符号が逆になります。十分大きい をとれば となる。
中間値の定理から に根が存在します。偶数次では両端の符号が同じになるので、この議論は通りません。
問題 10:ダルブーの定理
が で微分可能なら、 が中間値の性質を持つことを示せ。
解答 10
とします。 と置くと、、 です。
は連続で は閉区間なので、最小値をとる点 があります。
なので の右側で は減り、最小点は ではありません。 なので の左側で は増えており、最小点は でもない。
よって は内部にあり、そこで 、つまり です。
は連続とはかぎりません。それでも中間値の性質は持つ。これがこの定理の内容です。
問題 11:逆は成り立たない
中間値の性質を持つのに連続でない関数の例を挙げよ。
解答 11
()、 とします[1]。
原点では左右から値が と のあいだを何度も往復するので、極限がありません。連続ではない。
それでも中間値の性質は持ちます。原点を含むどんな区間でも、 は から までのすべての値を無限回とるからです。
こうした関数をダルブー関数といいます。中間値の性質は連続性より弱い条件です。
問題 12:散歩の問題
正午に を出て へ歩き、翌日の正午に を出て同じ道を へ歩く。ある時刻に、両日で同じ場所にいることを示せ。
解答 12
日目の位置を 、 日目の位置を とします。 は正午からの経過時間で、位置は を 、 を とする座標です。
歩く時間が両日で違ってもかまいません。到着後はその場に留まると決めれば、共通の区間 で両方が連続になります。
差を と置きます。、 です。
中間値の定理から となる があります。その時刻に 日の位置が一致する。
人が同時に歩いていると考えると分かりやすくなります。反対向きに同じ道を通れば、必ずすれ違う。
問題 13:赤道上の対蹠点
赤道上で、気温が等しい対蹠点の組が存在することを示せ。気温は連続に分布しているとする。
解答 13
赤道上の点を角度 で表し、気温を とします。 は連続で、周期 を持つ。
差を と置きます。 も連続です。
と は符号が逆です。 ならそこで終わり。そうでなければ中間値の定理から、あいだに となる点があります。
で、対蹠点の気温が等しくなりました。ボルツァーノ・ウラムの定理の 次元版にあたる議論です。

問題 14:面積を 2 等分する
平面上の有界な図形が与えられたとき、それを面積で 等分する垂直な直線が存在することを示せ。
解答 14
直線 の左にある部分の面積を とします。図形は有界なので、十分小さい で 、十分大きい で です。 は全体の面積になります。
は について連続です。 を少し動かしたときの面積の変化が、細い帯の面積で押さえられるからです。
中間値の定理から となる があります。 がその直線です。
同じ議論は向きを変えても通ります。 つの図形を同時に 等分する直線があるか、まで進むとハムサンドイッチの定理になり、道具が変わります。
問題 15:仮定を外すとどうなるか
は 、 だが となる がない。矛盾しないのはなぜか。
解答 15
は で定義されていません。 の全体で連続ではないので、定理の仮定を満たしていない。
区間から を除くと、区間ではなくなります。連続であることと、定義域が切れ目のない区間であることの両方が要ります。
閉区間である必要もあります。開区間 で を考えると、値の範囲は で端の値そのものはとりません。
仮定は つ。定義域が区間であること、閉じていること、そこで連続であること。どれを外しても結論が壊れます。
使いどころ
定理が答えるのは存在だけです。何を足すかで、分かることが変わります。
解が存在することが分かる。位置も個数も分からない
解がただ つに決まる。導関数の符号を調べて示す
近似したいなら二分法へ進みます。符号を見るだけで区間が半分ずつ狭まり、 回でおよそ 桁の精度が得られます。
が で連続、、 のとき、確実に言えることはどれですか。
- は単調減少である
- となる が に存在する
- の最大値は である
よくある誤り
代入 回で符号の変化を見る。そこから先が要るときだけ、単調性や二分法を足していきます。
参考文献
[1] が定理の主張・完備性が要る理由・ダルブー関数・二分法と不動点定理との関係・歴史、[2] がドイツ語での定式化、[3] が二分法の手順と誤差、[4] がダルブーの定理、[5] がフランス語での記述です。











2 は 3 と 1 のあいだにあるので、中間値の定理からそのような c が存在します。途中で 3 より大きくなったり増減を繰り返したりしてもかまいません。