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なぜ有界なだけで部分列が収束するのか?ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理

は収束しません。値が と のあいだを埋めるように動き回るからです。それでも、うまく番号を選べば収束する部分列がとれます。

有界な数列なら必ずとれる。それがボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理です[1]。振動の激しさは関係しません。

以下では部分列を定め、区間の二分法で証明し、集積点の言葉に直します。そのあと具体的な数列で集積点を数え、最大値の定理などへの応用まで扱います。

部分列とは

添字を増加列 で間引いた数列 が部分列です。順序は保ったまま、一部だけを残します。

で試します。偶数番目だけとると 、、 と並び、 に近づく。

奇数番目だけなら に近づきます。もとの数列は収束しませんが、部分列は収束しています。

主張

実数の有界数列は、収束する部分列を持ちます[1]。

条件は有界だけです。単調である必要も、規則的である必要もありません。

でも成り立ちます。有界な点列は収束する部分列を持つ、という形です[1]。

証明:区間を二分していく

を有界とし、すべての項が に入るとします。

この区間を二等分します。少なくとも一方には、項が無限個入っている。両方とも有限個なら全体も有限個になり、矛盾するからです。

無限個入っているほうを とします。同じ操作を繰り返すと、閉区間が入れ子に並びます。

の長さは で、 に収束します。区間縮小法の原理から、共通部分はちょうど 点 です。

各 から となる項を つずつ選びます。無限個あるので、いつでも選べます。

で の長さが に行くので、 です。

証明で効いているもの

つの部品でできています。

有界性。項を収める有限区間があるので、二分法を始められます。
鳩の巣の理屈。有限個と有限個の和は有限個なので、無限個ある側が必ずあります。
区間縮小法の原理。実数の完備性そのもので、有理数では成り立ちません。

有理数の範囲で確かめます。 の十進展開を打ち切った列 、、、、 は に入る有界な有理数列です。

どの部分列をとっても極限は で、有理数ではありません。行き先が範囲の外へ出てしまいます[1]。

別の証明:単調部分列をとる

二分法を使わない道もあります。どんな実数列にも単調な部分列がある、という補題を先に示します[2]。

より右にどの項も を超えないとき、 を峰と呼びます。

峰が無限個あれば、それらを順に並べた部分列は単調減少です。峰が有限個なら、最後の峰より先から始めて、次々に大きい項を選べば単調増加の部分列がとれる。

どちらの場合も単調な部分列ができます。もとの数列が有界なら、その部分列も有界です。

単調で有界なら収束します。これで定理が示せました。

集積点で言いかえる

部分列の極限になる値を集積点といいます。定理は「有界数列は集積点を少なくとも つ持つ」と言いかえられます。

集積点全体の集合を と書きます。上極限は 、下極限は にあたる。

数列が収束することと、 がただ 点であることは同値です。集積点が つ以上あれば、行き先が割れて収束しません。

例:集積点が 2 つ

の集積点は と です。

偶数番目と奇数番目でそれぞれの値に近づきます。ほかの値には集積しません。

上極限は 、下極限は になります。差が でないので収束しません。

例:集積点が 4 つ

を計算します。 から順に 、、、、、 と並び、周期 で繰り返す。

現れる値は つです。集積点は になります。

周期的な数列では、集積点は現れる値そのものです。有限個しかありません。

例:集積点が区間全体

の集積点は 全体です。

を で割った余りが一様に分布するためです。 が無理数であることから従います[3]。

項を 個の区間に分けて数えると、両端が多く中央が少ない分布になります。 の傾きが端で急なので、値が端に溜まる形です。

どの点にも寄る部分列がとれます。区間内の任意の値を選んで、そこへ収束する部分列を作れる。

例:集積点が実数全体

有理数を並べた数列を作ります。可算個なので、番号をつけて 列にできる。

この数列は有界ではないので、定理はそのまま当てはまりません。 の有理数だけを並べれば有界になります。

どの実数も有理数で近似できるので、 のすべての点が集積点です。稠密であることが効いています。

例:具体的に部分列を作る

から に収束する部分列を作ります。 が に近いのは、 が の整数倍に近いときです。

の連分数展開から、、 といった良い近似が得られます。分子にあたる 、 を番号にとると の値が小さくなる。

近似がいくらでも良くなることから、 に収束する部分列が作れます。定理は存在を言うだけですが、この例では具体的に構成できました。

応用:最大値の定理

有界閉区間 上の連続関数は最大値と最小値をとります[4]。

まず有界であることを示します。有界でないなら となる点列がとれる。ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理で収束部分列をとると、連続性から像も収束するので矛盾します。

次に と置きます。 となる点列がとれる。

収束部分列 をとると、連続性から です。上限が実際にとられました。

応用:ハイネ・カントールの定理

閉区間上の連続関数が一様連続であることも、同じ形で示せます[4]。

一様連続でないと仮定すると、 なのに が離れたままの 本の列がとれます。

部分列をとって とすると、 でもある。連続性から像の差が に行き、矛盾します。

最大値の定理

上限に近づく列から部分列をとり、極限で最大値を実現する

ハイネ・カントールの定理

一様連続でないことを示す列から部分列をとり、連続性と矛盾させる

どちらも「有界列から収束部分列をとり出す」ところが要になっています。

より高い次元とコンパクト性

では、成分ごとに順に適用します[1]。

まず第 成分について収束部分列をとり、その部分列に対して第 成分の収束部分列をとる。 回で全成分が収束します。

一般の距離空間では、コンパクトであることと点列コンパクトであることが同値になります。ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理は、 でこの同値を具体的に示したものと読めます[5]。

有界閉集合がコンパクトになるのは、有限次元であることに支えられています。ノルム空間の閉じた単位球がコンパクトになるのは、その空間が有限次元のときにかぎります[6]。

よくある誤り

数列そのものが収束すると思う。収束するのは部分列だけです。
有界でなくても部分列がとれると思う。 には収束部分列がありません。
集積点がつねに有限個だと思う。 では区間全体になります。
部分列を作るとき添字の増加を忘れる。 が条件です。
有理数の範囲でも成り立つと思う。極限が範囲の外へ出ます。
収束部分列が つなら数列も収束すると思う。集積点がただ 点であることが要ります。
無限次元でも有界閉集合がコンパクトだと思う。単位球ですら成り立ちません。

有界という条件だけで、どこかに寄る部分列が拾える。振動の激しさは関係ないという点が、この定理の効き目です。

について正しいものはどれですか。

  • 収束する
  • 発散するが、収束する部分列を持つ
  • 収束する部分列を持たない
__RESULT__

なので有界です。ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理から収束部分列が存在します。数列全体としては収束しません。

参考文献

[1] が定理の主張・区間の二分法による証明・ への一般化・完備性が要る理由、[2] が単調で有界な数列の収束、[3] が一様分布定理、[4] が最大値の定理、[5] が点列コンパクト性と距離空間でのコンパクト性との同値、[6] が単位球のコンパクト性と有限次元性です。

Bolzano-Weierstrass theorem - Wikipedia
Monotone convergence theorem - Wikipedia
Equidistribution theorem - Wikipedia
Extreme value theorem - Wikipedia
Sequentially compact space - Wikipedia
Riesz's lemma - Wikipedia
$\sin n$ は $-1$ と $1$ のあいだを埋めるように動き、収束しません。それでも番号を選べば収束する部分列がとれます。区間を二等分し、項が無限個ある側を選びつづける証明を追い、支えている $3$ つの部品を分けました。有理数では $\sqrt2$ の十進近似が反例になります。単調部分列による別証明、集積点が $2$ 個・$4$ 個・区間全体になる例、$\pi$ の連分数近似で $\sin n$ から $0$ へ行く部分列を作る手順まで。最大値の定理とハイネ・カントールの定理の証明でも同じ一手が使われます。