y について解けない式でも、微分はできます。x2+y2=25 の両辺をそのまま x で微分するだけ。
2x+2ydxdy=0,dxdy=−yx
y を x の関数と見て、合成関数の微分を当てはめました[1]。この手が陰関数の微分です。
半径 5 の円を点が回ります。x と y の値から傾きがそのまま決まり、y=0 の左右の端だけ接線が縦を向く。
陰関数の微分の手順
やることは 4 つです[1]。y を含む項では、合成関数の微分を忘れないところが肝心。
両辺を x で微分します。y の項には dxdy が付きます。
y2 を微分すると 2ydxdy です。y が x の関数なので、外側の 2 乗を微分したあとに内側の微分が付きます。
siny なら cosy⋅dxdy、ey なら eydxdy。どれも同じ理屈です。
例:楕円の接線を求める
9x2+4y2=1 を微分します。
92x+42ydxdy=0,dxdy=−9y4x
点 (23, 2) での傾きは −924⋅3/2=−32 になります。
接点の座標を傾きの式に入れるだけで、接線が引けました。y について解いてから微分する道もありますが、根号が出て手数が増えます。
例:デカルトの葉線
y3+x3−3xy=0 という曲線でも同じ手順です[1]。3xy の項には積の公式を使います。
3y2dxdy+3x2−3y−3xdxdy=0
dxdy でくくって解きます。
dxdy=3y2−3x3y−3x2=y2−xy−x2
点 (23, 23) を入れると −1 になり、接線は y=−x+3 です。y について解くことは事実上できない曲線なので、陰関数の微分でしか手が出ません。
逆関数の微分
逆関数のほうも、同じ考え方で公式が出ます。y=f−1(x) とおくと x=f(y) です。
両辺を x で微分すると 1=f′(y)dxdy となり、割れば答え[2]。
dxdy=f′(y)1=dydx1
分数をひっくり返した形です。もとの関数の傾きが分かれば、逆関数の傾きは計算せずに出せます。
y=x3 の点 (1.2, 1.728) での傾きは 4.32、折り返した点での傾きは 0.23。掛けると 1 になります。
例:3 乗根の微分を逆関数から出す
y=3x を、逆関数の公式で計算します。x=y3 と書き直すところから。
dydx=3y2,dxdy=3y21
y=x1/3 を戻すと 3x2/31 です。べきの公式から直接出した答えと一致します[3]。
傾きが 0 の点では使えない
逆関数の公式は分母に f′(y) があるので、そこが 0 だと成り立ちません。
y=x3 の原点がその例です。もとの関数の傾きが 0 なので、折り返した 3x は原点で接線が縦を向く。
グラフを折り返すと、水平な接線は垂直な接線に変わります。0 の逆数がないことと、図の上で対応しています。
x2+xy+y2=3 のとき、dxdy はどれか。
- dxdy=−2y2x
- dxdy=−x+2y2x+y
- dxdy=−2y2x+y
__RESULT__
xy の項は積の公式で y+xdxdy になります。全体では 2x+y+xdxdy+2ydxdy=0 となり、dxdy でくくって解くと答えが出ます。
発展:逆三角関数の微分
高校の範囲を少し超えますが、逆関数の公式が効く代表例です[2]。
(arcsinx)′=1−x21,(arctanx)′=1+x21
y=arcsinx なら x=siny で、dydx=cosy。cosy=1−sin2y=1−x2 と直せば、上の形になります。
三角関数の逆から根号が現れるところが面白いところ。積分で 1−x21 の原始関数を探すとき、この対応が効いてきます。
y=f−1(x) で、f(2)=5 かつ f′(2)=4 のとき dxdy の x=5 での値はどれか。
__RESULT__
f(2)=5 なので f−1(5)=2 です。公式 (f−1)′(x)=f′(f−1(x))1 に入れると f′(2)1=41 になります。
使い分け
y について解ける式なら、解いてから微分しても同じです。手数の少ないほうを選びます。
円や楕円、双曲線は陰関数の微分が速い。y について解くと根号と場合分けが出ます。
接線を求めるだけなら、傾きの式に接点を入れて終わり。y を残したままで済みます。
逆関数の傾きは、もとの関数の傾きの逆数。逆関数の式を書き下さなくても計算できます。
分母が 0 になる点では、どちらの公式も使えません。図のうえでは接線が縦を向く点です。
y を x の関数として扱う、という一点さえ外さなければ、どちらの計算も合成関数の微分の応用にすぎません。
参考文献
$x^2+y^2=25$ を $y$ について解かずに微分すると $dy/dx = -x/y$ が出ます。$y$ を $x$ の関数と見て合成関数の微分を当てるだけ。円周上を点が回る図で、傾きが座標からそのまま決まる様子を追えます。楕円の接線、デカルトの葉線、逆関数の傾きが逆数になる仕組みまで計算例つき。分母が $0$ になる点で接線が縦を向き、公式が使えなくなる境目も示します。
xy の項は積の公式で y+xdxdy になります。全体では 2x+y+xdxdy+2ydxdy=0 となり、dxdy でくくって解くと答えが出ます。