siny=x を y について解いた関数が arcsinx です。三角関数の逆をたどる形になります。
そのままでは y が 1 つに決まらないので、範囲を区切ります。arcsin は −2π≤y≤2π、arccos は 0≤y≤π、arctan は −2π<y<2π。
黒が sin、青が arcsin。破線について折り返した位置にあります。
x=±1 では接線が縦を向きます。もとの sin の傾きが 0 になる点だからです。
微分の公式
逆関数の微分の公式から出ます[1]。
(arcsinx)′=1−x21,(arccosx)′=−1−x21
(arctanx)′=1+x21
三角関数の逆なのに、答えに根号と分数が出てきます。この見た目の落差が、この単元の面白いところ。
根号はどこから来るのか
y=arcsinx とおくと x=siny です。両辺を x で微分します。
1=cosy⋅dxdy,dxdy=cosy1
このままでは y が残ります。cosy を x で書き直します。
−2π≤y≤2π では cosy≥0 なので、根号の符号が決まります[3]。
cosy=1−sin2y=1−x2
範囲を区切ったことが、ここで効いています。区切らなければ符号が決まりません。
arctan には根号が出ない
y=arctanx なら x=tany です。微分すると 1=cos2y1⋅dxdy。
dxdy=cos2y=1+tan2y1=1+x21
1+tan2y=cos2y1 を使うと、根号を通らずに済みます。分母が有理式になる形です。
傾きはつねに正で、原点で 1、離れるほど 0 に近づきます。グラフが ±2π に貼りつく形と対応しています。
例:合成と組み合わせる
y=arctan(x2) を微分します。外側の公式に、内側の微分 2x を掛けます[1]。
y′=1+(x2)21⋅2x=1+x42x
y=arcsin(2x) なら 1−4x22。定義域は −21≤x≤21 に縮みます。
内側が式になると、定義域も一緒に変わります。根号の中が正になる条件を、そのつど確かめます。
arcsin と arccos の和
2 つを足すと定数になります。微分すると、その理由がすぐ分かる。
(arcsinx+arccosx)′=1−x21−1−x21=0
導関数が 0 なので、和は定数です[2]。x=0 を入れると 2π。
arcsinx+arccosx=2π
arccos の公式に負号が付く理由も、ここから読めます。arcsin の符号を変えただけの形になっている。
y=arcsinx の導関数はどれか。
__RESULT__
x=siny を微分して dxdy=cosy1。範囲のとり方から cosy≥0 なので、cosy=1−x2 になります。
積分の側から見ると
微分の公式を逆に読むと、根号や分数を含む式の原始関数が分かります。
∫1−x2dx=arcsinx+C,∫1+x2dx=arctanx+C
1+x21 の原始関数は、有理式では書けません。逆三角関数を用意して、はじめて表せる形です。
log が x1 の穴を埋めたのと同じ事情です。関数の種類が増える理由が、ここにあります。
y=arctan(3x) の導関数はどれか。
__RESULT__
外側の公式に内側 3x を代入すると 1+(3x)21、これに内側の微分 3 を掛けます。分母の 9x2 と分子の 3 が両方いります。
押さえるところ
逆三角関数は、範囲を区切ってはじめて関数になります。
微分は逆関数の公式から出ます。dxdy=dx/dy1 です。
残った y を x に直すとき、区切った範囲が符号を決めます。
arcsin には根号、arctan には有理式が現れます。
高校の教科書では扱いませんが、大学の微積分では最初に出てきます。逆関数の微分の練習としても、ちょうどよい題材です。
参考文献
$x = \sin y$ を微分すると $dy/dx = 1/\cos y$ が出ます。$y$ を $x$ に直すとき、区切った範囲が $\cos y \ge 0$ を保証し、そこから $\sqrt{1-x^2}$ が現れる。$\arctan$ では $1+\tan^2 y$ を使うので根号が出ず、分母が有理式になります。傾きが原点で 1、離れるほど 0 に近づく様子も図に。$\arcsin x + \arccos x = \pi/2$ の理由まで。
x=siny を微分して dxdy=cosy1。範囲のとり方から cosy≥0 なので、cosy=1−x2 になります。