積を 2 回微分すると、項が 3 つ出て真ん中に 2 が付きます[1]。
(fg)′′=f′′g+2f′g′+fg′′
(a+b)2=a2+2ab+b2 と同じ並びです。n 回微分でも、この対応は崩れません。
(fg)(n)=k=0∑nnCkf(n−k)g(k)
ライプニッツの定理と呼ばれます。積の微分法を n 回ぶんに広げた公式です[2]。
左の三角形の 1 行ぶんが、右の式の係数と一致します。f の微分回数は左から減り、g の微分回数は右へ向かって増える。
二項定理と同じ形になる理由
微分を 1 回加えるとき、f に付けるか g に付けるかの 2 通りがあります。n 回ぶんの選び方が組合せの数になる、という見方です。
(a+b)n の展開で a を何個選ぶかを数えるのと、同じ数え上げ[1]。だから係数もそろいます。
指数と微分回数を対応させると、an−kbk が f(n−k)g(k) にあたる。この置きかえで公式が読めます。
帰納法で示す
n=1 のときは積の微分法そのものです[3]。
n=k で成り立つと仮定し、両辺をもう一度微分します。各項が 2 つに分かれ、隣どうしの項がまとまる。
kCj−1+kCj=k+1Cj
この関係が効いて、n=k+1 の係数がそろいます。パスカルの三角形で、上の 2 数を足すと下の数になる規則そのものです。
例:多項式との積は途中で止まる
f(x)=x2ex を n 回微分します。x2 の側は 3 回目から 0 になるので、和は 3 項で終わります。
g(x)=x2 とすると g′=2x、g′′=2、g(3)=0 です。
(x2ex)(n)=nC0ex⋅x2+nC1ex⋅2x+nC2ex⋅2={x2+2nx+n(n−1)}ex
nC2×2=n(n−1) となるところが、うまく片づく部分です。
n=1 で (x2+2x)ex、n=2 で (x2+4x+2)ex。手で微分した結果と合います。
例:三角関数との積
f(x)=x2sinx でも同じ手が使えます。sin の n 階は角を進める形で書けます。
(x2sinx)(n)=x2sin(x+2nπ)+2nxsin(x+2(n−1)π)+n(n−1)sin(x+2(n−2)π)
項が 3 つで止まるのは、x2 の微分が 3 回目で消えるためです。多項式が掛かっている形は、この定理と相性がよい。
x2 を 3 回微分すると 0 です。0 を掛けた項は消えるので、無限に続く和にはなりません。
例:係数だけを問われる場合
(x3e2x)(5) の x3 の係数を求めます。e2x の n 階は 2ne2x です。
x3 が微分されない項だけを見ればよいので、k=0 の項を拾います。
5C0⋅25e2x⋅x3=32x3e2x
全部を展開せず、必要な項だけをとり出せる。和の形で書いてあることの利点です。
(xsinx)′′ を展開した式はどれか。
- xsinx+2cosx
- 2cosx−xsinx
- −xsinx
__RESULT__
f=sinx、g=x として f′′g+2f′g′+fg′′ に入れます。f′′=−sinx、f′=cosx、g′=1、g′′=0 なので −xsinx+2cosx です。
使いどころ
多項式と、指数関数や三角関数の積を n 回微分するとき。
特定の項の係数だけが必要なとき、その k だけを計算します。
帰納法で一般形を導く問題の、見通しを立てる道具にもなります。
2 回や 3 回だけなら、素直に積の微分を繰り返すほうが速い場合もあります。
積の微分法を覚えていれば、あとは組合せの数を並べるだけ。二項定理と同じ形だと分かれば、覚え直す必要はありません。
参考文献
$(fg)'' = f''g + 2f'g' + fg''$ の係数は $1, 2, 1$。$(a+b)^2$ の展開と同じ並びです。三角形の行が切り替わるのに合わせて式が伸びていく図で、対応を確かめます。微分を $f$ と $g$ のどちらに付けるかを数える、という見方がその理由。$x^2 e^x$ のように多項式が掛かる形では項が 3 つで止まり、一般形がそのまま書けます。
f=sinx、g=x として f′′g+2f′g′+fg′′ に入れます。f′′=−sinx、f′=cosx、g′=1、g′′=0 なので −xsinx+2cosx です。