極限の問題で、そのまま代入すると 00 になる形があります。分母が h や x−a なら、微分係数の定義を疑います。
f′(a)=h→0limhf(a+h)−f(a)
この式を左から右へ使えば微分の計算、右から左へ使えば極限の計算になります。同じ式の裏表。
h=0 では分母が 0 になり、値が定まりません。それでも左右どちらから近づけても、0.8660 に寄っていきます。
この値は cos6π です。f(x)=sinx の x=6π における微分係数にあたります[1]。
見分け方の手順
3 つを順に確かめます。
分子が「同じ関数の 2 つの値の差」になっているか。 その 2 点が、h→0 または x→a で重なるか。
そろっていれば、f と a を読みとるだけで答えが出ます。極限の計算をせずに、微分の公式を当てる。
f(x)=xn、a=1 と読めば終わりです。因数分解して約分する道もありますが、こちらのほうが速い。
例:三角関数の形
h→0limhsin(3π+h)−23 を計算します。
sin3π=23 なので、分子は sin の 2 値の差です。f(x)=sinx、a=3π。
f′(3π)=cos3π=21
例:指数関数の形
h→0limhe2h−1 を計算します。e0=1 に気づくと形が見えます[3]。
f(x)=e2x、a=0 とおくと、分子は f(h)−f(0) です。f′(x)=2e2x なので答えは 2。
heh−1→1 を知っていれば、2h=t の置きかえでも出せます。どちらの道でも同じ値。
例:根号の形
h→0limh4+h−2 です。f(x)=x、a=4 と読みます。
f′(4)=241=41
有理化してもできますが、定義の形に気づけば計算は 1 行で終わります。
x→2limx−2x3−8 の値はどれか。
__RESULT__
f(x)=x3、a=2 と読めます。f′(x)=3x2 なので f′(2)=12 です。因数分解して x2+2x+4 に x=2 を入れても同じ値になります。
分子の形を作る工夫
そのままでは定義の形にならないとき、f(a) を足して引きます。値は変わらず、形だけが変わる。
h→0limhf(a+2h)−f(a−h) を考えます。分子に f(a) を足して引きます。
=h→0lim{2⋅2hf(a+2h)−f(a)+hf(a)−f(a−h)}=2f′(a)+f′(a)=3f′(a)
2h で割る形に直すために、2 を外へ出したところが工夫です。分母と、a からのずれをそろえます。
係数の和で覚えると速い。f(a+ph)−f(a+qh) の形なら、答えは (p−q)f′(a) になります。
例:係数を合わせる
h→0limhf(a+3h)−f(a−2h) なら p=3、q=−2 です。答えは 5f′(a)。
f(x)=logx、a=1 の場合で確かめます。f′(1)=1 なので、極限は 5 になるはず。
実際 hlog(1+3h)−log(1−2h) は、log(1+t)≒t の近似から h3h+2h=5 に近づきます[2]。
h→0lim2hf(a+h)−f(a−h) は何になるか。
__RESULT__
p=1、q=−1 なので分子は 2f′(a)h に相当します。分母が 2h なので、割ると f′(a) です。中央差分と呼ばれる形になります。
気をつけるところ
分子の 2 点が同じ関数の値かどうかを確かめます。違う関数なら定義の形ではありません。
a の位置をとり違えると、代入する値がずれます。f(a+h) の a を先に決めます。
f′(a) の計算では、合成関数の微分が要る場合があります。
分母が x−a の形なら、x→a の極限として同じ手が使えます。
定義に戻す型は、極限と微分の橋渡しです。どちらの単元の問題としても出るので、形で覚えておくと反応が速くなります。
参考文献
分母が $h$ や $x-a$ で、代入すると $0/0$ になる極限は、微分係数の定義を疑います。$(x^n-1)/(x-1)$ なら $f(x)=x^n$、$a=1$ と読むだけで答えは $n$。差の商のグラフが $h \to 0$ で一つの値に寄っていく様子も動かして見ます。$f(a+ph)-f(a+qh)$ の形は $(p-q)f'(a)$ になる、という係数の見方まで扱いました。
f(x)=x3、a=2 と読めます。f′(x)=3x2 なので f′(2)=12 です。因数分解して x2+2x+4 に x=2 を入れても同じ値になります。