ゾルゲンフライ直線ってなに?半開区間で作る反例だらけの位相
の基底を、開区間 から半開区間 にとりかえます。それだけで、性質のほとんどが入れかわる[1]。
できあがった空間をゾルゲンフライ直線といいます。位相空間論の反例が、この 本からいくつも出てきます[2]。
定義
を基底として、 に位相を入れます[4]。この位相を下限位相と呼ぶ。
が基底の条件をみたすことは、交わりの計算で確かめられます。 はまた半開区間か空集合になる。
できた空間を と書き、ゾルゲンフライ直線といいます。矢印直線と呼ぶこともある。
通常の位相より真に細かい
開区間 は、半開区間の和として書けます[1]。
だから通常の開集合はすべて下限位相でも開。逆は成り立ちません。 は下限位相で開ですが、通常の位相では開でない。
下限位相のほうが真に細かい、と言えます。開集合が増えたぶん、収束する点列が減る。
半開区間は開かつ閉
の補集合は です。どちらも半開区間の和なので開[1]。
したがって は閉集合でもあります。開かつ閉、つまり開閉集合になる。
同じ理由で と も開閉集合です。空間を つに割る開閉集合が、どこにでもとれる。
完全不連結
開閉集合がこれだけあると、連結成分が 点ずつになります[1,3]。
異なる 点 をとれば、 と が両方を分ける。連結な部分集合は 点集合だけです。
通常の が連結だったことを思うと、大きな違いになります。中間値の定理のような議論は、ここでは通りません。
被覆次元も になる。開閉集合の基底を持つ空間は、零次元と呼ばれます[3]。
連結。開かつ閉な部分集合は空集合と全体だけ
完全不連結。 がどれも開かつ閉になる
収束は右からだけ
点列 が に収束するのは、右から近づくときにかぎります[1]。
の近傍は の形をふくむので、 でなければ入れません。左から近づく列は収束しない。
は に収束しません。 は収束します。解析の右側極限が、そのまま位相の収束になっている。

可分だが第二可算でない
有理数はゾルゲンフライ直線でも稠密です。どの にも有理数が入るので、可分になります[1,2]。
第二可算ではありません。可算基底 があったとすると、各 について となる がとれる。
の最小元は になります。 が単射なので、 は非可算でなければならない。矛盾です。
第一可算ではあります。 が可算な局所基底になる[4]。
距離化できない
可分な距離空間は第二可算になります。ゾルゲンフライ直線は可分で第二可算でないので、距離化できません[1,3]。
正則でハウスドルフ、しかもパラコンパクトなのに距離が入らない。距離化の条件から第二可算を外せない、という実例です。
擬距離でなら生成できます。()、それ以外は とすると、下限位相が出る[1]。対称性を捨てれば距離らしきもので書ける。
| 性質 | 通常の | ゾルゲンフライ直線 |
|---|---|---|
| 第一可算 | はい | はい |
| 第二可算 | はい | いいえ |
| 可分 | はい | はい |
| 連結 | はい | いいえ |
| 距離化可能 | はい | いいえ |
| 局所コンパクト | はい | いいえ |
コンパクト部分集合は可算
ゾルゲンフライ直線のコンパクト部分集合は、たかだか可算になります[1,3]。
をコンパクトとし、各 に をとる。有限部分被覆から、 の各点が有限個の半開区間に収まります。
区間の左端でない点は、右から可算個の点でしか近づけない。結果として は可算集合になります。
すらコンパクトではありません。 の形の被覆で、有限部分被覆がとれない。
局所コンパクトでもなく、-コンパクトでもない[3]。ハイネ・ボレルの感覚は完全に外れます。
リンデレフでパラコンパクト
コンパクトではないのに、リンデレフではあります[1]。どの開被覆にも可算部分被覆がとれる。
パラコンパクトでもあり、完全正規なハウスドルフ空間になります。分離公理の面では、むしろ通常の より強い。
第二可算とリンデレフが同値でないことの、標準的な反例になっています。距離空間なら同値だった つが、ここでは分かれる。
ゾルゲンフライ平面
を考えます。ゾルゲンフライ平面と呼ばれる空間です[1,2]。
積は可分です。有理点の全体が稠密になる。ところが正規ではありません。
反対角線 が閉集合で、しかも部分空間として離散になります。非可算な離散閉集合が入っている。

反対角線の中の有理点の集合と無理点の集合は、どちらも閉集合で交わりません。それでも開集合では分離できない[2]。
濃度を数えると分かります。可分な空間で、 つの閉集合を分ける方法はたかだか 通り。ところが反対角線の分け方は 通りあります。
数が合わないので、分離できない組が必ず残る。正規性が積で保たれない、という結論になります。
何のための例か
ゾルゲンフライが 年にこの空間を出したのは、パラコンパクト性が積で保たれないことを示すためでした[3]。
もっともらしく見える命題を、 つの空間でまとめて落とせる。位相空間論の教科書で何度も呼び出される理由がここにあります。
反例が集中するのは、可算性の条件だけが欠けているからです。分離公理も被覆の性質もそろっているのに、第二可算だけが破れている。
ウリゾーンの距離化定理が第二可算を要求する理由も、この空間を見ると腑に落ちる。
足りないものが つだけだから、どこが効いているのかがはっきり見えます。反例としての切れ味は、この一点集中から来ています。
ゾルゲンフライ直線について、正しいものはどれですか。
- 連結である
- 可分だが第二可算でない
- コンパクトな部分集合がハイネ・ボレルの意味で決まる
よくある誤り
半開区間にとりかえる。たったそれだけで、 で身についた感覚がほとんど通じなくなります。反例を探すときに最初に思い出す空間です。
参考文献
[1] が定義と各性質の証明、[2] がゾルゲンフライ平面と正規性の破れ、[3] が導入の経緯とパラコンパクト性まわりの整理、[4] が基底としての扱いと第一可算性です。










有理数が稠密なので可分です。可算基底があると仮定すると、各点にその点を最小元とする基本開集合が対応し、非可算になって矛盾します。コンパクト部分集合はたかだか可算で、[0,1] すらコンパクトではありません。