第一可算公理と第二可算公理〜近傍の列と基底で位相の大きさを測る
では、点 が の閉包に入ることと、 の点列が に収束することが同値になります。一般の位相空間では、この同値が崩れる[4]。
崩れない空間を切り分ける条件が第一可算公理です。もう つ、空間全体の大きさを測る第二可算公理があり、こちらのほうが強い[2]。
局所基底
点 における局所基底とは、 を含む開集合の族 で、次をみたすものです[4]。
のまわりの開集合を全部調べる代わりに、 の中だけ調べればよくなる。近傍のふるまいを、少数の代表で言いかえる仕組みです。
なら が局所基底になります。もっと絞れる。
こちらは可算個しかありません。どんな開区間が来ても、 を大きくすれば中に入る。
第一可算公理
どの点にも可算な局所基底があるとき、その空間は第一可算だといいます[1,4]。
距離空間はすべて第一可算です。半径 の球を並べれば足りる。
ゾルゲンフライ直線も第一可算になります。 の局所基底として をとればよい[4]。
離散空間も第一可算。 が開なので、 の 個で済みます。
局所基底は入れ子にとれる
可算な局所基底があれば、だんだん小さくなるものにとりかえられます[4]。
に対して とおく。有限交叉なので開集合で、 となります。
入れ子にしておくと、点列を作るときに便利です。 から点を つずつ拾えば、自動的に へ近づく。
点列で閉包が分かる
第一可算な空間では、 であることと、 の点列で に収束するものがあることが同値になります[1,4]。
証明の向きは片方だけが問題になります。 から点列を作るところ。
入れ子の局所基底 をとり、各 から の点 を拾う。 が閉包にいるので、どの も と交わります。
作った点列は に収束します。逆向きは第一可算でなくても成り立つ。
例:点列では足りない空間
に補可算位相を入れます。補集合が可算な集合と空集合を開集合とする位相です[4]。
この位相で収束する点列は、最終的に定数になるものだけ。定数でない値を無限個とる点列は、それらを除いた補可算開集合に引っかかります。
とすると、 です。 を含むどの開集合も補可算なので、 の点をふくむ。
ところが の点列で に収束するものはありません。点列だけでは閉包を捉えきれない、という実例です。
この空間は第一可算ではない。同じことが、非可算集合の補有限位相でも起こります[4]。
極限が 1 つならハウスドルフ
ハウスドルフ空間では収束先が 点に決まります。逆は一般には成り立たない。
補可算位相がその反例です。収束する点列の極限は つなのに、空でない開集合が必ず交わるのでハウスドルフになりません[4]。
第一可算を足すと逆が通ります。第一可算で極限がいつも つなら、その空間はハウスドルフ[4]。
証明は対偶で進みます。分離できない 点 があるとき、入れ子の局所基底から の点を拾えば、 と の両方に収束する点列ができる。
第二可算公理
空間全体に可算な基底があるとき、その空間は第二可算だといいます[2]。
局所基底が点ごとの条件だったのに対して、こちらは空間全体の条件です。 つの可算族で、すべての開集合を和として書けることを要求する。
が典型例。中心が有理点、半径が有理数の開球を全部集めれば可算個で、これが基底になります[2]。

半径と中心をどちらも有理数に絞っても、基底としての働きは落ちません。可算個で足りる。それがここでの主張になります。
第二可算から出るもの
第二可算な空間は、いくつかの性質を自動的に持ちます[2,3]。
第二可算
第一可算・可分・リンデレフ
どれも逆向きには戻らない
第一可算になるのは、可算基底のうち を含むものだけ集めれば局所基底になるためです。可分になるのは、各基本開集合から点を つずつ拾えば可算稠密集合ができるため。
リンデレフになるのは、開被覆から基本開集合を経由して可算部分被覆を作れるためです。

例:非可算離散空間
非可算集合 に離散位相を入れます。第一可算なのは先に見たとおり[2]。
第二可算ではありません。基底はどれも、すべての 点集合をふくむ必要がある。 が非可算なので、基底も非可算になります。
可分でもない。稠密部分集合は 自身しかないためです。
第一可算から第二可算へは戻れない、という反例になります。
例:ゾルゲンフライ直線
に の形の区間を基底として入れた空間です[3]。下限位相とも呼ばれます。
第一可算で、可分で、リンデレフ。それでも第二可算ではありません[2]。
可算基底 があったとすると、各 について となる がとれる。 の最小元は なので、 は単射です。
が非可算なので、 も非可算でなければならない。矛盾します。
| 空間 | 第一可算 | 第二可算 |
|---|---|---|
| はい | はい | |
| 非可算離散空間 | はい | いいえ |
| ゾルゲンフライ直線 | はい | いいえ |
| 非可算集合の補有限位相 | いいえ | いいえ |
遺伝と積
どちらの公理も部分空間へ遺伝します[1,2]。基底や局所基底を交わりで制限すれば、可算性はそのまま残る。
可算個の積でも保たれます。座標ごとの可算基底から、有限個の座標だけを制限した箱を作れば可算個で足りる。
非可算個の積では壊れる。非可算個の座標に非自明な位相が乗ると、基本開集合の族が非可算になります。
可分性が第二可算ほど素直でないのは、この積の場面です。可分性は連続体濃度個までの積で保たれ、第二可算より粘り強い。
距離空間では 3 つが一致する
一般には別々だった つが、距離空間では同値になります[2,3]。
第二可算 可分、第二可算 リンデレフ。逆はどちらも成り立たない
第二可算、可分、リンデレフの つが同値。 つ示せば残りも出る
可分な距離空間から可算基底を作る手順は短い。可算稠密集合 をとり、中心が 、半径が有理数の球を全部集めれば基底になります。
ゾルゲンフライ直線が可分なのに第二可算でないのは、距離化できない空間だからです。
ウリゾーンの距離化定理
第二可算で正則なハウスドルフ空間は距離化可能です[2]。
第二可算がかなり強い条件だと分かります。分離公理を少し足すだけで、距離が入ってしまう。
逆は成り立ちません。非可算離散空間は距離化可能ですが、第二可算ではない。距離化可能で第二可算な空間は、可分な距離空間と同じものになります。
つの公理はハウスドルフが 年に導入しました[3]。位相空間の定義と同じ論文に、可算性の条件が並んで置かれています。
当時の定義は近傍系から出発する形で、局所基底の可算性は最初から前提の つだった。
例:長い直線
順序数 を使って作る長い直線は、第一可算でありながら第二可算ではありません[2]。
各点のまわりは とそっくりで、局所的には可算な近傍列がとれる。ところが全体が長すぎて、可算基底が届きません。
局所の条件と大域の条件が、はっきり分かれる例になります。
可算な稠密部分集合を持つ空間のうち、第二可算でないものはどれですか。
- ゾルゲンフライ直線
- 可算離散空間
よくある誤り
第一可算は点列を使えるようにする条件、第二可算は空間そのものを小さく抑える条件。どちらの話をしているかを分けておくと、反例の位置がすぐ見えます。
参考文献
[1] が第一可算の定義と点列による特徴づけ、[2] が第二可算からの含意・反例・距離化定理、[3] がハウスドルフによる導入とゾルゲンフライ直線の位置づけ、[4] が局所基底の扱いと補可算位相の詳しい反例です。











ゾルゲンフライ直線は有理数が稠密なので可分ですが、可算基底を持ちません。R2 は可算基底があり、可算離散空間は 1 点集合が可算個しかないので第二可算です。