部分空間では開集合の意味が変わる(相対位相と部分空間位相)
は の開集合ではありません。ところが を空間そのものと見れば、 自身は開集合になります。
開いているかどうかは集合だけでは決まらない。どの空間の中に置いて見ているかで変わります。この二つを行き来する道具が相対位相です。
相対位相の定義
位相空間 と部分集合 をとります。 の開集合を、 の開集合との交わりだけで決める[1]。
これが位相の公理をみたすことは、交わりの計算だけで終わります。、、和も有限交叉も交わりの外へ出せる。
を相対位相、または部分空間位相と呼びます。 が の部分空間です。
上段が の開区間、中段が部分空間 、下段が交わりです。 をずらすと の開集合が次々に現れる。
例:閉区間の中では端が開く
とし、 をとります。 は の開集合。
左端の が入ったまま、 の開集合になりました。 の中でこの集合は開ではありません。 の左側にすきまがないためです。
の中では の左に点がない。だから のまわりは、 に関するかぎり全部そろっている。
とすれば なので、 自身も の開集合です。同時に補集合が空なので閉集合でもある。
開くかどうかは外側で決まる
同じ集合が、置かれる空間によって開いたり開かなかったりする。ここが相対位相のいちばんの勘所です。
は開集合ではない。 を囲む開区間が左へはみ出す
は開集合になる。 の左は の外なので、はみ出しようがない
「 で開」を、 で開と区別して相対開ということもあります。言葉を分けておくと混乱が減る。
開部分空間なら食い違いが消える
食い違いが起きるのは、 が で開でないときに限られます[1,2]。
が の開集合なら、 は開集合どうしの交わりなので でも開。逆に で開いていて に入るなら、 でも開になります。
同じことが閉集合でも成り立つ。 が で閉なら、 の閉集合はそのまま の閉集合です。
が で開
の開集合は の開集合でもある
相対と絶対の区別が要らなくなる
を の部分空間として見るときに相対位相をあまり意識しないのは、この事情によります。
例:整数は離散になる
を の部分空間とします。各 のまわりに幅 の開区間をとる。
点集合が開くので、 のどんな部分集合も開になります。相対位相は離散位相です[2]。

でも事情は同じ。 も、どの点にも隣がないので離散になります。
例: を足すと離散でなくなる
にすると、様子が変わります。
を含む の開集合は、 の形の点を必ず無限個ふくむ。だから は で開になりません[4]。
以外の点はどれも孤立しているので、 点集合が開きます。 点だけが例外という空間です。
例:有理数は離散にならない
を の部分空間とします。基底は開区間との交わりで作れる。
どの有理数のまわりにも別の有理数が無限にあるので、 点集合は開きません。離散にはならない。
一方で、両端が無理数の区間は で開かつ閉になります。 がそう。境界にあたる点が に落ちていないためです。
例:単位円の開弧
を平面の部分空間とします。
平面の開円板と円周の交わりは、円周上の開弧になる。この開弧の全体が の基底です[4]。

弧の両端は入りません。円板の縁と円周が出会う点は、円板が開いているぶん落ちる。
基底も交わりで移る
の基底 があれば、 の基底はそれを制限して作れます[4]。
証明は 行で済む。 の点 に対して なる をとれば、 になります。
位相そのものを列挙しなくても、基底さえ分かれば部分空間の位相が決まる。実際に使うのはこの形です。
閉包は交わりで移る
閉集合も交わりで移ります。 の閉集合は、 の閉集合と の交わり。
閉包には少し注意が要る。 のとき、 の中で計算した閉包は次になります[4]。
の中で の閉包をとれば です。 で閉包をとった とは違う集合になる。
内部は同じようにいきません。 と は一致しないことがある。 で確かめられます。
部分空間の部分空間
とします。 に位相を入れる道が つある。 から入れるか、 から直に入れるか。
答えは同じです[3]。 なので となり、両者が一致する。
この一致を推移性といいます。部分空間をとる操作を何度重ねても、いちばん外側から一度でとったものと変わりません。
だから「 の部分空間としての の、その部分空間」といった言い方を、途中を省いて書ける。
包含写像で言いかえる
包含写像 、 は連続です。 が定義そのものなので。
相対位相は、包含写像を連続にする位相のうちいちばん粗いもの[2]。これを定義に採用することもできます。
さらに強い言いかえがある。どんな空間 と写像 についても、 が連続であることと が連続であることが同値になります[1]。
どれも交わりの計算だけで証明が終わります。定義が交わりだけでできているためです。
貼り合わせの補題
で、 と がともに閉、またはともに開だとします[4]。
と が連続で、 の上で値が一致するなら、つなげた写像も連続になる。
「ともに閉、またはともに開」を落とすと壊れます。 で試す。
は で開、 は閉で開ではありません。どちらも離散なので、 と はともに連続。
つなげた は が に近づくのに なので、 で連続になりません。開と閉が混ざった分割では補題が効かない、という反例です。
遺伝する性質と遺伝しない性質
どの部分空間へも移る性質を遺伝的といいます[1]。移らない性質もある。
| 性質 | どこまで移るか |
|---|---|
| ハウスドルフ | すべての部分空間 |
| 第一可算・第二可算 | すべての部分空間 |
| コンパクト | 閉部分空間だけ |
| 正規性 | 閉部分空間だけ |
| 可分性 | 移らない |
ハウスドルフの証明は短い。 を分ける開集合 が にあるなら、 と が で分けます。
可分性が遺伝しないことは、特定点位相で見えます。 に、 を含む集合と空集合だけを開とする位相を入れる[4]。
の閉包が全体なので可分です。ところが部分空間 は離散で非可算なので、可分になりません。
例:コンパクト性がどちらに転ぶか
は の閉部分空間で、コンパクト。 は開部分空間で、コンパクトになりません。
コンパクト性は部分空間へ自由には移らない。閉じているという条件が要ります。
逆向きは条件なしで通ります。ハウスドルフ空間のコンパクト部分空間は、必ず閉集合になる。
を の部分空間とします。 は でどうなりますか。
- 開集合であり、閉集合でもある
- 閉集合だが、開集合ではない
- 開集合だが、閉集合ではない
よくある誤り
開いているかを聞かれたら、まずどの空間の中での話かを確かめる。相対位相の誤りは、ほとんどがここから出ます。
参考文献
[1] が定義と普遍性と遺伝性、[2] が包含写像による特徴づけと整数の例、[3] が推移性、[4] が基底・閉包・貼り合わせの補題とその証明です。












(−1,2)∩Y=[0,1] なので Y で開。[0,1]∩Y=[0,1] なので Y で閉です。R の中では閉だけですが、Y の中では両方になります。