ケイリー・ハミルトンの定理
ケイリー・ハミルトンの定理は、行列がその固有多項式を零化することを主張する。一見自明に見えるが、行列を変数に代入する操作を含むため、証明には注意が必要である。
定理の主張
を 次正方行列とし、その固有多項式を とする。このとき
が成り立つ。ここで は の に行列 を代入したものである。
たとえば ならば、 となる。
2次行列での例
の固有多項式を計算する。
ケイリー・ハミルトンの定理により が成り立つはずである。
確かに である。
定理の意義
ケイリー・ハミルトンの定理から、 以上の累乗は の一次結合で表せることがわかる。これは行列の関数を計算する際に有用である。
また、最小多項式は固有多項式を割り切ることも、この定理から従う。最小多項式 は を満たす最小次数の多項式であり、 より は を割り切る。
証明の概略
証明にはいくつかの方法がある。一つは随伴行列を用いる方法である。
を の余因子行列とする。これは の 次多項式を成分にもつ行列で、
が成り立つ。 を展開して に を代入し、両辺を整理すると が導かれる。
応用
逆行列の計算
が正則なら、ケイリー・ハミルトンの定理から を の一次結合で表せる。
行列の累乗
を低次の多項式で表すことで、計算を効率化できる場合がある。
微分方程式
の計算にも応用でき、連立線形微分方程式の解法に役立つ。