連立一次方程式の解の構造 - 同次と非同次
連立一次方程式を行列とベクトルで表すと という形になります。ここで は の係数行列、 は 次元の未知ベクトル、 は 次元の定数ベクトルです。 の場合を同次(斉次)、 の場合を非同次と呼びます。この 2 つの場合で解の構造が異なり、その違いを理解することが線形代数の基本になります。
同次方程式
同次方程式は必ず (零ベクトル)を解に持ちます。これを自明な解と呼びます。問題は、自明でない解が存在するかどうかです。
同次方程式の解全体の集合を とすると、 は の部分空間になります。これを の核(カーネル)あるいは零空間(null space)と呼び、 や と書きます。
部分空間であることの確認は次のとおりです。 であれば
なので です。同様に、スカラー に対して
なので です。和とスカラー倍について閉じているため、 は部分空間です。
この部分空間の次元を退化次数(nullity)と呼びます。
のこと。次元定理(rank-nullity theorem)では が成り立つ。
同次方程式の解の具体例
次の同次方程式を考えます。
掃き出し法で行簡約化すると
となり、方程式は の 1 本だけです。, を自由変数とすると であり、解は
と表されます。これは 2 つのベクトルで張られる 2 次元部分空間であり、 です。 なので、次元定理 が成り立っています。
非同次方程式
の場合、解が存在するとは限りません。解が存在するための必要十分条件は、 が の列空間(像)に含まれること、すなわち です。
解が存在する場合、非同次方程式の解全体は部分空間にはなりません。零ベクトルが解ではないからです。では解全体はどのような構造を持つのかというと、次の関係があります。
を非同次方程式の 1 つの特殊解(particular solution)とすると、非同次方程式の一般解は
と書けます。ここで は同次方程式 の任意の解です。
は部分空間。原点を通る。解同士の和やスカラー倍もまた解。
はアフィン部分空間。原点を通らない。解同士の差が同次方程式の解になる。
この事実の証明は簡単です。 が の解であるとき
なので です。逆に であれば
なので は非同次方程式の解です。
非同次方程式の解の具体例
次の非同次方程式を考えます。
係数行列は先ほどと同じなので、掃き出し後は です。, とおくと特殊解 が得られます。
同次方程式の一般解は先ほど求めたとおりなので、非同次方程式の一般解は
です。これは点 を通り、 と平行な 2 次元アフィン部分空間を表しています。
解の存在と一意性の分類
が 行列のとき、 の解は次のように分類されます。
| 条件 | 解の状況 |
|---|---|
| 解なし | |
| 一意な解 | |
| 無限に多くの解 |
ここで は拡大係数行列です。1 行目の条件は と同値であり、解が存在しないことを意味します。2 行目は なので特殊解が唯一の解です。3 行目は が非自明(次元 1 以上)なので、特殊解に の元を加えた無限個の解が存在します。
正方行列の場合
が 次正方行列の場合、状況がすっきりします。
( が正則)のとき、 なので、任意の に対して は一意な解 を持ちます。同次方程式 の解は自明な解のみです。
( が特異)のとき、 なので、同次方程式は自明でない解を持ち、非同次方程式は によって解なしか無限個の解のどちらかになります。
が 行列で のとき、 が解を持てばその解は?
- 一意に定まる
- 無限に多く存在する
- 解の個数は による
の 2 つの解を とするとき、 はどの方程式の解ですか?
なので、差は同次方程式の解になります。
n=5 で rank(A)=3<5 なので ker(A) の次元は 5−3=2 です。特殊解に 2 次元の ker(A) の元を加えられるため、解は無限に多く存在します。