スペクトル分解(対称行列の対角化)

スペクトル分解は、対称行列(または正規行列)をその固有値と固有ベクトルを用いて分解する手法である。行列のスペクトル(固有値の集合)が分解に現れることから、この名がある。

対称行列のスペクトル分解

実対称行列 は直交行列によって対角化できる。すなわち、直交行列 と対角行列 が存在して

と分解できる。 の対角成分は の固有値 であり、 の列ベクトルは対応する固有ベクトル である。

この分解を展開すると、次のスペクトル分解が得られる。

各項 の張る1次元部分空間への直交射影行列(ランク 1 の行列)である。

スペクトル分解の導出

とし、 とする。

が成り立つことは、行列積の定義から直接確認できる。 行列であり、その 成分は の第 成分と第 成分の積である。

具体例

次の対称行列をスペクトル分解する。

固有値は , であり、正規化した固有ベクトルは

である。スペクトル分解は

と書ける。

応用

スペクトル分解は多くの場面で活用される。

行列の関数を定義する際、 と定めることができる。たとえば が正定値なら である。

主成分分析(PCA)では、共分散行列のスペクトル分解が本質的な役割を果たす。固有値の大きい方向が分散の大きい主成分となる。

低ランク近似にも用いられる。固有値の大きいものだけを残せば、もとの行列の近似が得られる。