2 次はたすき掛けで ad−bc。3 次はサラスの方法か余因子展開のどちらかです[1]。
acbd=ad−bc
3 次より大きくなるとサラスは使えません。0 の多い行や列を選んで展開するか、行基本変形で 0 を作ってから展開します。
以下 14 問。基本の計算から、文字を含む式、性質を使った確かめまで並べました。
サラスの方法
3 次に限って使える手順です。右下がりの 3 本を足し、右上がりの 3 本を引きます[2]。
detA=a11a22a33+a12a23a31+a13a21a32−a13a22a31−a11a23a32−a12a21a33
6 項で、これはライプニッツの公式の 3!=6 項と一致します。4 次では 4!=24 項になるので、たすき掛けの 8 本では足りません。
問題 1
A=(3245)
detA=3⋅5−4⋅2=15−8=7 です。
問題 2
B=(−236−4)
detB=(−2)(−4)−6⋅3=8−18=−10。負号の掛け算で符号を落としやすいところです。
問題 3
C=147258369
第 1 行で展開します。
detC=1(45−48)−2(36−42)+3(32−35)=−3+12−9=0
0 になりました。第 1 行から第 2 行の 2 倍を引き、第 3 行を足すとすべて 0 になるので、行が一次従属です[1]。
問題 4
D=201142315
第 1 列に 0 があるので、そこで展開すると 2 次が 2 個で済みます。
detD=2(20−2)−0+1(1−12)=36−11=25
0 の位置を先に探すと、計算量が変わります[3]。
問題 5
E=132210041
第 3 列は 0,4,1。0 が 1 つあるので、ここで展開します。
detE=−4(1⋅0−2⋅2)+1(1⋅1−2⋅3)=16−5=11
符号は (−1)2+3=−1、(−1)3+3=+1。市松模様で確かめます。
問題 6
サラスの方法で計算してください。
F=210031124
右下がりの 3 本は 2⋅3⋅4=24、0⋅2⋅0=0、1⋅1⋅1=1。
右上がりの 3 本は 1⋅3⋅0=0、2⋅2⋅1=4、0⋅1⋅4=0。
detF=24+0+1−0−4−0=21
第 1 行の余因子展開でも 2(12−2)+1(1−0)=21 で一致します。
問題 7
G=200530−174
上三角行列なので、対角成分の積で 2⋅3⋅4=24。
展開でも同じです。第 1 列で展開すると 2 次の上三角が残り、また対角の積になります。
問題 8
2 行を入れ替えると行列式がどうなるかを確かめてください。
1324=−2,3142=6−4=2
符号だけが変わりました。交代性そのものです[1]。
問題 9
detA=7 の 2 次行列と、detB=5 の 3 次行列について、det(2A) と det(2B) を求めてください。
det(cA)=cndetA なので、2 次なら 22=4 倍、3 次なら 23=8 倍。
det(2A)=28、det(2B)=40 です。n 乗になる点を落としやすいところです。
問題 10
次が 0 になる x を求めてください。
x11x=0
x2−1=0 より x=±1。このとき 2 本の列が一次従属になります。
x=1 なら 2 列が同じ、x=−1 なら一方が他方の −1 倍です。
問題 11
次が 0 になる x を求めてください。
1111x111x=0
第 1 行で展開します。
(x2−1)−(x−1)+(1−x)=x2−2x+1=(x−1)2
(x−1)2=0 より x=1。このとき 3 行すべてが同じになります。
問題 12
行基本変形を使って計算してください。
H=1232573812
第 2 行から第 1 行の 2 倍、第 3 行から第 1 行の 3 倍を引きます。値は変わりません。
100211323=1⋅(1⋅3−2⋅1)=1
第 1 列に 0 が 2 つ並んだので、2 次の行列式 1 個で終わりました。
問題 13
det(AB)=detA⋅detB を確かめてください。
A=(1324),B=(2103)
detA=−2、detB=6 で、積は −12。
AB=(410612),det(AB)=48−60=−12
一致しました。det(A+B) には同じ規則がない点が対比になります。
問題 14
det(AT)=detA を確かめてください。
A=105246310
第 1 行で展開すると 1(0−6)−2(0−5)+3(0−20)=−6+10−60=−56。
転置した行列で同じ計算をすると 1(0−6)−0+5(2−12)=−6−50=−56。一致します。
行と列を入れ替えても値が変わらないので、列で証明した性質はそのまま行にも使えます[1]。
検算のしかた
別の行または列で展開し直します。どこで展開しても同じ値なので、違えばどちらかに計算違いがあります。
問題 6 の F なら、サラスで 21、第 1 行の展開でも 21。2 通りで一致しました。
上三角に変形して対角の積をとる方法も確かめになります。問題 12 は変形後の対角が 1,1,1 で積が 1、答えと合います。
0 が出たときは、行や列が一次従属になっていないかを見ます。問題 3 では第 1 行と第 3 行の和が第 2 行の 2 倍で、従属だと確かめられます。
4 次の行列式にサラスの方法を当てはめると、何が起こりますか。
- 正しく計算できる
- 項が足りず、誤った値になる
- 符号だけがずれる
__RESULT__
4 次のライプニッツの公式は 4!=24 項です。たすき掛けを 4 列に伸ばしても 8 項しか出ないので、まったく足りません。サラスは 3 次に限った手順です。
性質を使った計算も確かめます。
3 次行列 A で detA=5 のとき、det(3A) はいくらですか。
__RESULT__
det(cA)=cndetA で c=3、n=3 なので 27⋅5=135 です。列が 3 本あり、それぞれから 3 が外へ出ます。15 は c を 1 回しか出していない値になります。
2 次はたすき掛け、3 次はサラスか展開。4 次以上は 0 を作ってから展開する。この 3 段で、手計算の範囲はだいたい片づきます。
参考文献
Sergei Treil. *Linear Algebra Done Wrong*, Chapter 3. Brown University. Andreas Gathmann. *Determinanten*. Grundlagen der Mathematik, RPTU Kaiserslautern. DET-0050: The Laplace Expansion Theorem. Linear Algebra, The Ohio State University.
$2$ 次は $ad - bc$、$3$ 次はサラスの方法か余因子展開。どちらで解いても同じ値が出ます。14 問で、$0$ の位置を先に探す習慣、上三角なら対角の積で済むこと、行を入れ替えると符号が反転すること、$\det(cA) = c^n \det A$ で $n$ 乗になることを順に確かめました。文字を含む行列式が $0$ になる条件、行基本変形で $0$ を作ってから展開する手順、$\det(AB) = \det A \det B$ と $\det(A^{\mathsf{T}}) = \det A$ の検算も入れています。サラスが $3$ 次でしか使えない理由は、$4! = 24$ 項に対してたすき掛けが $8$ 本しか出ないことにあります。
4 次のライプニッツの公式は 4!=24 項です。たすき掛けを 4 列に伸ばしても 8 項しか出ないので、まったく足りません。サラスは 3 次に限った手順です。