v から W へ垂線を下ろした足が、直交射影です。W が 1 本のベクトル w で張られているなら、式は 1 行で書けます[1]。
projwv=∥w∥2⟨v,w⟩w
W が広がっても形は変わりません。直交する基底で同じ式を足すだけ。ただし基底が直交していないと、この足し算は通りません。
以下 11 問。直線への射影、平面への射影、射影行列、距離、最小二乗まで扱います。
2 つの向きから求める
W そのものへ射影する道と、W の直交補空間へ射影して引く道があります。
平面のように W が大きいときは、法線が 1 本で済む後者が速い。
projWv=v−projnv
どちらで求めても、projWv が W に入り、v−projWv が W に直交する、という 2 つを満たします[2]。
問題 1
v=(3,4) の、w=(1,0) 方向への射影を求めてください。
⟨v,w⟩=3、∥w∥2=1 なので係数は 3。
projwv=3(1,0)=(3,0)
x 軸への射影なので、y 成分が落ちただけ。残りの (0,4) が w と直交します。
問題 2
v=(1,2,3) の、w=(1,1,1) 方向への射影を求めてください。
⟨v,w⟩=1+2+3=6、∥w∥2=3。係数は 36=2 です。
projwv=2(1,1,1)=(2,2,2)
残りは v−(2,2,2)=(−1,0,1)。内積が −1+0+1=0 で、確かに直交します。
問題 3
v=(1,2,3) の、平面 W={x+y+z=0} への射影を求めてください。
W の法線は n=(1,1,1)。平面へ直接向かうより、法線方向を引くほうが速い。
問題 2 で projnv=(2,2,2) が出ています。
projWv=(1,2,3)−(2,2,2)=(−1,0,1)
(−1)+0+1=0 なので、答えが平面の上に乗っていると確かめられます。
問題 4
W=span{(1,0,1), (0,1,1)} への v=(1,1,0) の射影を求めてください。
2 本の基底が直交していません。⟨(1,0,1),(0,1,1)⟩=1=0 なので、そのまま足す式は使えません。
法線を使います。2 本の外積は (−1,−1,1) です。
⟨v,n⟩=−1−1+0=−2、∥n∥2=3 です。
projnv=−32(−1,−1,1)=(32,32,−32)
projWv=(1,1,0)−(32,32,−32)=(31,31,32)
確かめます。31(1,0,1)+31(0,1,1)=(31,31,32) で、W の元になっています。
問題 5
W=span{(1,1)} への射影行列を求めてください。
1 本のときは P=uTuuuT です[1]。
P=21(11)(11)=21(1111)
v=(3,1) に当てると 21(4,4)=(2,2)。(1,1) の 2 倍で、確かに W の元です。
問題 6
問題 5 の P が P2=P と PT=P を満たすことを確かめてください。
P2 を計算します。
P2=41(2222)=21(1111)=P
P は対称なので PT=P も明らかです。
一度射影したものをもう一度射影しても動かない。これが P2=P の意味です。
問題 7
問題 5 の P について、I−P が何への射影かを答えてください。
I−P を計算します。
I−P=21(1−1−11)
v=(3,1) に当てると (1,−1)。(1,1) との内積が 0 なので、W の直交補空間の元です。
Pv+(I−P)v=(2,2)+(1,−1)=(3,1)=v で、和がもとに戻ります。I−P は直交補空間への射影です。
問題 8
v=(1,2,3) から平面 x+y+z=0 までの距離を求めてください。
距離は ∥v−projWv∥、つまり法線方向の成分の長さです。
問題 3 で projnv=(2,2,2) が出ているので、距離は ∥(2,2,2)∥=23。
点と平面の公式でも確かめられます。1+1+1∣1+2+3∣=36=23 で一致します。
問題 9
正規直交基底 e1=21(1,1,0)、e2=(0,0,1) が張る W へ、v=(2,4,5) を射影してください。
基底が正規直交なので、内積を係数にして足すだけです[3]。
⟨v,e1⟩=22+4=32、⟨v,e2⟩=5。
projWv=32⋅21(1,1,0)+5(0,0,1)=(3,3,5)
残りは (−1,1,0)。e1 とも e2 とも内積が 0 になります。
問題 10
W=span{(1,0), (1,1)} に対して、v=(0,1) を各基底へ射影して足すと何が起こるかを確かめてください。
(1,0) への射影は 0、(1,1) への射影は 21(1,1)。足すと (21,21) です。
ところが W は R2 全体なので、正しい射影は v 自身の (0,1)。合いません。
基底が直交していないと、この足し算は成り立たない。先に直交化するか、法線を使う必要があります[1]。
問題 11
3 点 (1,1)、(2,2)、(3,2) に、最小二乗で直線 y=a+bx を当ててください。
係数行列と右辺を並べます。
A=111123,b=122
正規方程式 ATAx=ATb を作ります。ATA の成分は 3,6,6,14、右辺は (5,11)。
3a+6b=5、6a+14b=11 を解いて b=21、a=32。
y=32+21x
残差は −61、31、−61 で、足すと 0。b から A の列空間への射影になっているので、残差がその空間と直交します。
基底が直交している
内積を係数にして足すだけ。本数が増えても手順は同じ
直交していない
そのままでは足せない。直交化するか、法線から引く形にする
まちがえやすい点
直交していない基底で、各方向の射影を足す。問題 10 のようにずれます。
∥w∥2 で割るのを忘れる。w の長さが 1 のときだけ省けます。
射影の残りを W の元だと思う。残りは直交補空間の元です。
P2=P を P=I と読む。W が全体でない限り P=I です。
距離を射影そのものの長さととり違える。距離は残りの長さです。
最小二乗で Ax=b をそのまま解こうとする。解がないので、正規方程式に直します。
v=(2,6) を w=(1,1) 方向へ射影した結果はどれですか。
__RESULT__
⟨v,w⟩=8、∥w∥2=2 なので係数は 4 です。4(1,1)=(4,4) になります。∥w∥2 で割らないと (8,8)、内積をとり違えると (2,2) が出ます。
射影の性質も確かめます。
射影行列 P について、v−Pv はどこに入りますか。
__RESULT__
⟨v−Pv, w⟩=0 がすべての w∈W で成り立つ、というのが射影の定義そのものです。この残りの長さが、v から W までの距離になります。
垂線を下ろす。それだけの操作ですが、基底が直交しているかどうかで手順が分かれます。直交していれば内積を並べるだけで、していなければ先に直交化するか法線に回ります。
参考文献
David Austin. *Orthogonal bases and projections*. Understanding Linear Algebra. Sergei Treil. *Linear Algebra Done Wrong*, Chapter 5. Brown University.
$\operatorname{proj}_w v = \frac{\langle v, w \rangle}{\|w\|^2}w$ が出発点です。$W$ が広がっても、基底が直交していれば同じ式を足すだけ。していなければ足し算が崩れるので、法線から引くか先に直交化します。11 問で、直線への射影、平面への射影、射影行列 $P = uu^{\mathsf{T}}/u^{\mathsf{T}}u$、$P^2 = P$ の確認、$I - P$ が直交補空間への射影になること、点と平面の距離、最小二乗で直線を当てる正規方程式までを追いました。直交していない基底で足すと答えがずれる例も入れています。
⟨v,w⟩=8、∥w∥2=2 なので係数は 4 です。4(1,1)=(4,4) になります。∥w∥2 で割らないと (8,8)、内積をとり違えると (2,2) が出ます。