正定値行列と半正定値行列
正定値行列と半正定値行列は、二次形式の符号と密接に関係する行列のクラスである。最適化問題や統計学で頻繁に現れ、実用上も重要である。
正定値行列の定義
実対称行列 が正定値であるとは、すべての非零ベクトル に対して
が成り立つことをいう。 は に付随する二次形式であり、正定値とはこの値が常に正であることを意味する。
が成り立つ(等号も許す)とき、 を半正定値(非負定値)と呼ぶ。
正定値性の判定条件
対称行列 が正定値であることは、以下の条件と同値である。
のすべての固有値が正
のすべての首座小行列式が正(シルベスターの判定法)
と分解できる正則行列 が存在
のコレスキー分解 が存在
半正定値の場合は、固有値が非負であること、首座小行列式が非負であることなどが条件となる。
シルベスターの判定法
次対称行列 の首座小行列式とは、左上から順に , , …, の小行列の行列式である。
が正定値であることと は同値である。
具体例
次の行列が正定値かどうか判定する。
、 なので正定値である。固有値を計算すると でどちらも正である。
応用
正定値行列は様々な分野で現れる。
最適化
二次計画問題では、目的関数のヘッセ行列が正定値なら極小点が存在し、それが大域的最小となる。
統計学
分散共分散行列は半正定値である。多変量正規分布のパラメータとして現れる。
数値計算
連立方程式 で が正定値対称なら、コレスキー分解を用いて効率的に解ける。
負定値、半負定値、不定値なども同様に定義され、二次形式の符号によって分類される。