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特異値分解を手で求める - 固有値から特異値へ進む演習

の固有値を求め、平方根をとると特異値になる[2]。手計算はこの一手で始まる。

は対称で半正定値なので、固有値は必ず 以上。平方根が実数になることが保証されている[1]。

固有ベクトルを並べたものが 、 で作るのが である。

以下 12 問。特異値だけを求める問題から、 と を組み立てる問題、ノルムや擬似逆行列への応用まで並べた。

手順

を作る。 が なら 次の対称行列になる。
固有値を大きい順に並べ、平方根をとって とする。
正規化した固有ベクトルを列に並べて を作る。
の分だけ を計算する。
足りない列は、 たちに直交する単位ベクトルで埋める。

と の小さいほうを選ぶと計算が軽い。 が横長なら のほうが小さくなる[2]。

の列は の固有ベクトル、 の列は の固有ベクトルである[3]。どちらから出発しても、同じ分解に着く。

問題 1

。固有値は と で、特異値は と である。

対角行列で成分が正なら、特異値は対角成分そのものになる。

問題 2

で、問題 1 と同じ。特異値も と である。

特異値は必ず 以上になる。負号は か の側へ吸収される。

問題 3

。大きい順に並べると 、 で 、。

固有ベクトルは が 、 が 。この順に並べて を作る。

、。 列目は残る方向の で埋める。

問題 4

の 成分は 、 成分は 。

固有多項式は で 。特異値は と である。

の固有ベクトルは 、 は 。

になる。

問題 5

を計算すると、対角が と 、非対角が 。

トレースは 、行列式は 。和が で積が なので、固有値は と である。

特異値は と 。 でない特異値が 個なので、階数は [2]。

実際 の第 2 行は第 1 行の 倍で、行が一次従属になっている。

問題 6

回転行列の特異値を求めよ。

なので、固有値はどちらも 。特異値は と である。

長さを変えない写像なので、単位円が単位円のまま移る。楕円がつぶれも伸びもしない。

直交行列の特異値はすべて 。逆に、特異値がすべて の正方行列は直交行列である[1]。

問題 7

対称で正定値である。固有値は と で、どちらも正。

の固有値は と なので、特異値は と 。固有値と一致した。

対称正定値なら、特異値と固有値が同じになる。 の固有値が で、平方根をとると に戻るためである。

問題 8

対称だが固有値は と で、負のものがある。

の固有値は と なので、特異値は と 。負号が消えている。

対称行列の特異値は、固有値の絶対値になる。符号の情報は と の関係に移る。

問題 9

問題 4 の について、 と を求めよ。

作用素ノルムは最大特異値なので 。

フロベニウスノルムは特異値の二乗和の平方根である。 より 。

成分から直接計算しても確かめられる。 で一致する。

問題 10

問題 4 の の条件数を求めよ。

条件数は最大と最小の特異値の比である。

に近いほど扱いやすく、大きいほど計算が不安定になる。 なら条件数は無限大で、正則ではない。

問題 11

なので、 は 次、 は 次になる。小さいほうを選ぶ。

の 成分は 、 成分は 、非対角は 。

固有値は と なので、特異値は と 。 でないものが 個なので階数は である。

次の を計算しても、固有値は で同じ答えに着く。 が 1 つ増えるだけ。

問題 12

問題 5 の の擬似逆行列を求めよ。

、、 である。

階数 なので と書ける。擬似逆行列は でない特異値だけ逆数にする。

の方向は逆数がとれないので、そのまま にする。ここが逆行列との違いである。

正則な行列

特異値がすべて正。逆行列があり、 をすべて逆数にすればよい

階数が落ちた行列

の特異値がある。逆行列はなく、 の方向を のまま残した擬似逆行列を使う

か の小さいほうを作る

固有値の平方根で特異値を出す

で残りを埋める

補足

特異値は、単位円が楕円へ移るときの軸の長さにあたる。 が長軸、 が短軸である[1]。

の特異値がある行列は、その方向をつぶす。つぶれた次元の数が になる。

手計算では の固有値を求めるので、 の情報が 乗されて渡る。数値計算ではこの 乗が精度を落とすため、別の手順が使われる。

の固有値が 、、 でした。 の特異値と階数はどれですか。

  • 特異値 、階数
  • 特異値 、階数
  • 特異値 、階数
__RESULT__

平方根をとって です。 でない特異値が 個なので階数は 。特異値の個数は固有値の個数と同じで、 のものも数に含めます。

対称行列の場合も確かめる。

対称行列の固有値が と のとき、特異値はどれですか。

  • と
  • と
  • と
__RESULT__

特異値は の固有値 の平方根で、どちらも です。特異値は定義から 以上になるので、負の値は出ません。符号は と の側に移ります。

を作って固有値を出し、平方根をとる。 はその固有ベクトル、 は を長さで割ったもの。手順としては、対称行列の対角化に 段足しただけである。

参考文献

Sergei Treil. *Linear Algebra Done Wrong*, Chapter 6. Brown University.
David Austin. *Singular Value Decompositions*/07%3A_The_Spectral_Theorem_and_singular_value_decompositions/7.04%3A_Singular_Value_Decompositions). Understanding Linear Algebra.
Yan-Bin Jia. *Singular Value Decomposition*. COMS 4770/5770 Notes, Iowa State University.
$A^{\mathsf{T}}A$ の固有値を求め、平方根をとる。それが特異値です。対称で半正定値なので固有値は必ず $0$ 以上、平方根が実数になることも保証されます。$V$ はその固有ベクトル、$U$ は $u_i = Av_i/\sigma_i$ で作る。12 問で、対角行列、$3 \times 2$、階数が落ちた行列、回転行列、対称行列の場合を追いました。特異値が固有値の絶対値になること、$0$ でない特異値の個数が階数になること、$\|A\|_2$ と $\|A\|_F$ と条件数の読み方、$\sigma = 0$ の方向を $0$ のまま残す擬似逆行列まで。横長なら $AA^{\mathsf{T}}$ を選ぶと計算が軽くなります。