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部分空間の直和と直和分解:分け方が 1 通りに決まる条件

の点 は、 と分けられます。 平面の点と 軸の点の和。

この分け方は 1 通りしかありません。2 つの部分空間が原点でしか交わらないため。

軸を 平面に替えると、 が 平面の元としても 平面の元としても書けます。分け方が何通りも現れる。

部分空間の和

の部分空間 、 に対して、和を次で定めます。

これも の部分空間になる。2 つ足してもスカラー倍しても、 側と 側に分けた形のまま。

集合としての和集合 とは別物です。和集合はふつう部分空間になりません。 軸と 軸の和集合には が入っていない。

直和の定義

が成り立つとき、 を直和と呼び、 と書く。

でないベクトルを 1 つも共有していない、という条件です。

一意性と同値になる

直和であることと、分解が一意であることは同値になる。両向きを示します。

一意ならば交わりが になること。 をとると、 には 2 通りの書き方があります。

一意だから 。交わりは原点だけになります。

逆向きも同じ形です。 と 2 通りに書けたとして、移項する。

左辺は の元、右辺は の元。同じベクトルだから交わりに入り、 より 、 です。

次元の公式

部分空間の和の次元は、重なりのぶんだけ引いた形になります。

直和なら だから、引く項が消える。

逆向きにも使えます。 が次元の和に等しければ、交わりは 。分解を 1 つも書かなくても、次元を数えれば直和かどうかが決まります。

例: を平面と直線に分ける

、 とします。次元はそれぞれ と 。

交わりは を満たす点だけで 。和の次元は で、 全体になります。

の分解は の 1 通りに決まる。

例:直和にならない場合

、 とします。 平面と 平面。

交わりは 軸全体で、 ではありません。次元の公式では となる。

和は 全体になりますが、分け方は 1 通りではない。 は、どの実数 をとっても次のように書けます。

左の項が 、右の項が の元です。分け方は無限にあり、交わっている 軸のぶんだけ自由が残っている。

だから、次元を見ても直和でないと分かります。

単なる和

交わりが原点より広い。同じベクトルに複数の分け方がある

直和

交わりが原点だけ。分け方はどのベクトルでも 1 通りに決まる

3 つ以上では条件が変わる

部分空間が 3 つ以上のとき、「どの 2 つをとっても交わりが 」では足りない。

で、 を 軸、 を 軸、 を直線 とします。どの 2 本も原点でしか交わらない。

ところが となり、零ベクトルが 以外の形にも分解できます。

次元でも合いません。 で 次元、 とずれる。

正しい条件は、各 と「残り全部の和」の交わりが になることです[1]。

零ベクトルの分解で言い換えられる。()の解が だけになる、という条件です。

基底をつなぐ

のとき、各 の基底を全部つなぐと の基底になります。

一次独立になるのは、一次関係を ごとにまとめると零ベクトルの分解が現れるため。直和なら各まとまりが になり、そこから各係数が と決まります。

全体を張ることは、和の定義からたどれます。 の元はどれも と書け、各 が の基底で書ける。

次元の足し算は、この言い換えです。つないだベクトルの個数を数えれば、そのまま になる。

補空間はいつでもとれる

有限次元の で部分空間 を 1 つ決めると、 を満たす が必ず存在します。 の基底を の基底へ延長し、足したぶんが張る空間をとればよい。

ただし は 1 つに決まりません[2]。 で を 軸とすると、 軸も直線 も補空間になります。

直交補空間なら 1 つに決まります。ただし、そちらには内積がいる。内積のない空間では、補空間は選ぶものです。

部分空間 を決める

基底を延長して補空間をとる

になるが は一意でない

射影と 1 対 1 に対応する

が決まると、 に対して と定める写像ができます。線形で、 を満たす。

逆に から直和分解が導けます。 と書くと、、 より 。

交わりも です。 なら と書け、。

直和分解とべき等な写像は、片方を決めればもう片方が決まる関係にあります。

固有空間への分解

行列 が対角化できることは、空間が固有空間の直和になることと同じです[3]。

異なる固有値の固有空間は、和が直和になる。各成分の上で はスカラー倍として働くため、行列の作用が固有値の並びだけで書ける。

各 の基底をつなげば、固有ベクトルからなる基底ができます。それを列に並べた行列で が対角化される。

対角化できない行列でも、一般固有空間なら直和分解がとれます。

をとる形。固有ベクトルが足りていても足りていなくても空間を張り切り、ジョルダン標準形の土台になります。

の部分空間 、 が 、 のとき、 は直和になりますか。

  • なる
  • ならない
  • 場合による
__RESULT__

次元の公式から です。左辺は の部分空間だから 以下、よって 。交わりが原点だけにはなりません。

3 つの部分空間について、どの 2 つの交わりも でした。和は直和ですか。

  • 直和になる
  • 直和とは限らない
  • 交わりが なら定義から直和
__RESULT__

の 軸、 軸、直線 が反例です。どの 2 本も原点でしか交わりませんが、 となり分解が一意になりません。各部分空間と残り全部の和との交わりを見ることになる。

交わりを にすると、分け方が 1 通りに決まり、成分ごとに切り離して扱えます。対角化もジョルダン標準形も、空間をどの部分空間の直和に割るかを決める話です。

出典

Michael Ganster. *Summen und direkte Summen*. Lineare Algebra, Technische Universität Graz.
*Sous-espaces supplémentaires*. Toutes les mathématiques (TLM1).
Sergei Treil. *Linear Algebra Done Wrong*, Chapter 4. Brown University.
$(a, b, c)$ を $(a, b, 0) + (0, 0, c)$ と分ける、この分け方が 1 通りしかない理由が $W_1 \cap W_2 = \{0\}$ です。交わりが原点だけという条件は、分解が一意という条件と同値になる。次元は $\dim W_1 + \dim W_2 - \dim(W_1 \cap W_2)$ で、直和なら引く項が消えます。3 つ以上では条件が変わり、$x$ 軸と $y$ 軸と直線 $y = x$ のように、どの 2 本も原点でしか交わらないのに分解が一意にならない例が現れる。補空間が 1 つに決まらないこと、$P^2 = P$ と直和分解が 1 対 1 に対応すること、固有空間への分解が対角化そのものだというところまで。