y=arcoshxy = \operatorname{arcosh} x

逆双曲線余弦 y=arcoshxy = \operatorname{arcosh} x

arcoshx\operatorname{arcosh} x(逆双曲線余弦、area hyperbolic cosine)は、双曲線余弦 coshx=ex+ex2\cosh x = \dfrac{e^x + e^{-x}}{2} の逆関数です1cosh\cosh は偶関数で符号を変えた点でも同じ値をとるため、そのままでは逆関数を定義できません。そこで x0x \geq 0 の枝(主枝)に制限した逆関数を arcosh\operatorname{arcosh} と呼びます。

定義と閉形式

y=arcoshxy = \operatorname{arcosh} xx=coshyx = \cosh y かつ y0y \geq 0 を満たす yy です。対数を用いると次の閉じた式になります。

arcoshx=ln(x+x21)\operatorname{arcosh} x = \ln\left(x + \sqrt{x^2 - 1}\right)

平方根の中身が 00 以上であるためには x1x \geq 1 が必要で、x<1x < 1 では実数値をとりません。

定義域と値域

  • 定義域は x1x \geq 1
  • 値域は y0y \geq 0
  • 単調に増加する
  • 偶でも奇でもない

cosh\cosh の値域が [1,)[1, \infty) だったことが、そのまま逆関数の定義域に移ってきています。

増減

導関数は次のとおりです。

ddxarcoshx=1x21(x>1)\frac{d}{dx}\operatorname{arcosh} x = \frac{1}{\sqrt{x^2 - 1}} \quad (x > 1)

つねに正なので、定義域全体で単調に増加します。

端点での接線

グラフは点 (1,0)(1, 0) から始まります。この点では導関数の分母が 00 に近づくため傾きが限りなく大きくなり、接線は垂直になります。もとの cosh\coshx=0x = 0 で水平な接線(最小点)をもつことが、逆関数では垂直な接線として現れます。xx11 から少し増えるだけで yy が急に立ち上がるのが特徴です。

特徴的な値

xxarcoshx\operatorname{arcosh} x
1100
22ln(2+3)1.3170\ln(2 + \sqrt{3}) \approx 1.3170
331.7627\approx 1.7627
10102.9932\approx 2.9932

xx が大きいところでは x21x\sqrt{x^2-1} \approx x なので arcoshxln(2x)\operatorname{arcosh} x \approx \ln(2x) となり、対数的にゆっくり増加します。水平漸近線はもちません。

逆双曲線正弦との対比

項目arsinhx\operatorname{arsinh} xarcoshx\operatorname{arcosh} x
定義域すべての実数x1x \geq 1
値域すべての実数y0y \geq 0
閉形式ln(x+x2+1)\ln(x + \sqrt{x^2+1})ln(x+x21)\ln(x + \sqrt{x^2-1})
導関数1x2+1\dfrac{1}{\sqrt{x^2+1}}1x21\dfrac{1}{\sqrt{x^2-1}}
端での接線なし(1,0)(1, 0) で垂直

平方根の中の符号が 11 つ違うだけで、定義域が実数全体か半直線かという大きな違いが生まれます。

応用

積分の結果として現れます。

dxx21=arcoshx+C(x>1)\int \frac{dx}{\sqrt{x^2 - 1}} = \operatorname{arcosh} x + C \quad (x > 1)

双曲線に関する幾何や、電磁気・熱伝導などの物理の計算に利用されます。

  1. Inverse hyperbolic functions、Wikipedia