y=arsinh⁡xy = \operatorname{arsinh} x

逆双曲線正弦 y=arsinh⁡xy = \operatorname{arsinh} x

arsinh⁡x\operatorname{arsinh} x(逆双曲線正弦、area hyperbolic sine)は、双曲線正弦 sinh⁡x=ex−e−x2\sinh x = \dfrac{e^x - e^{-x}}{2} の逆関数です1。sinh⁡\sinh は全実数で単調に増加するため、制限を加えなくても逆関数が一意に定まります。

定義と閉形式

y=arsinh⁡xy = \operatorname{arsinh} x は x=sinh⁡yx = \sinh y を満たす yy です。eye^y についての二次方程式を解くと、対数による閉じた式が得られます。

arsinh⁡x=ln⁡(x+x2+1)\operatorname{arsinh} x = \ln\left(x + \sqrt{x^2 + 1}\right)

平方根の中身 x2+1x^2 + 1 はつねに正なので、この式はすべての実数で意味をもちます。

定義域と値域

  • 定義域はすべての実数
  • 値域もすべての実数
  • 単調に増加する
  • 奇関数

sinh⁡\sinh が実数全体を実数全体へ一対一に写すため、その逆関数も同じ範囲をもちます。逆双曲線関数のなかで、定義域に制限がまったくないのはこの関数だけです。

対称性と増減

arsinh⁡(−x)=−arsinh⁡x\operatorname{arsinh}(-x) = -\operatorname{arsinh} x が成り立つ奇関数で、グラフは原点対称です。導関数は次のとおりです。

ddxarsinh⁡x=1x2+1\frac{d}{dx}\operatorname{arsinh} x = \frac{1}{\sqrt{x^2 + 1}}

つねに正なので実数全体で単調に増加します。分母が 00 にならないため、arcosh⁡\operatorname{arcosh} のように接線が垂直になる点はありません。

増加の速さ

範囲近似ふるまい
原点付近arsinh⁡x≈x\operatorname{arsinh} x \approx x直線 y=xy = x に接する
xx が大きいarsinh⁡x≈ln⁡(2x)\operatorname{arsinh} x \approx \ln(2x)対数的にゆっくり増加

xx が大きいところでは x2+1≈x\sqrt{x^2+1} \approx x なので、対数の増え方に落ち着きます。垂直・水平いずれの漸近線ももちません。

特徴的な値

xxarsinh⁡x\operatorname{arsinh} x
0000
11ln⁡(1+2)≈0.8814\ln(1 + \sqrt{2}) \approx 0.8814
22ln⁡(2+5)≈1.4436\ln(2 + \sqrt{5}) \approx 1.4436
1010≈2.9982\approx 2.9982

xx が 11 から 1010 へ 1010 倍になっても値は 33 倍強にしかならず、対数らしいゆるやかさが見てとれます。

応用

積分の結果として現れるのが最も基本的な用途です。

∫dxx2+1=arsinh⁡x+C\int \frac{dx}{\sqrt{x^2 + 1}} = \operatorname{arsinh} x + C
  • 懸垂線の弧長の計算
  • 特殊相対性理論や測地線の計算
  • 値の幅が広いデータを扱う逆双曲線正弦変換(負の値も扱える対数変換の代用)
  1. Inverse hyperbolic functions、Wikipedia