y=ex2y = e^{-x^2}

ガウス関数 y=ex2y = e^{-x^2}

y=ex2y = e^{-x^2} は、指数関数 eue^u の指数部分に u=x2u = -x^2 を代入した関数で、左右対称の釣鐘形(ベルカーブ)を描きます。統計学における正規分布の核となることから、確率・統計をはじめ、物理学や信号処理まで幅広く登場する最重要関数の一つです。

定義域と値域

すべての実数 xx に対して定義されます。x20-x^2 \le 0 なので 0<ex210 < e^{-x^2} \le 1 となり、値域は (0,1](0, 1] です。

  • 定義域はすべての実数
  • 値域は (0,1](0, 1]
  • 最大値は x=0x = 0 での 11
  • 最小値はなし。下限の 00 には達しない

xx が原点から離れるほど値は小さくなりますが、指数関数が正の値しかとらないので、決してゼロにはなりません。

対称性

f(x)=e(x)2=ex2=f(x)f(-x) = e^{-(-x)^2} = e^{-x^2} = f(x) が成り立つため偶関数であり、グラフは yy 軸に関して線対称です。同じ指数の肩を持つ y=xex2y = xe^{-x^2} が原点対称の奇関数になるのと対をなします。

増減と極値

導関数は合成関数の微分から求まります。

f(x)=ex2ddx(x2)=2xex2\begin{align*} f'(x) &= e^{-x^2} \cdot \frac{d}{dx}(-x^2) \\ &= -2x\,e^{-x^2} \end{align*}

ex2>0e^{-x^2} > 0 なので符号は 2x-2x だけで決まり、x<0x < 0 で増加、x>0x > 0 で減少します。したがって頂点 (0,1)(0, 1) で最大値をとり、極小値は存在しません。

変曲点

二階導関数は積の微分から次のようになります。

f(x)=(4x22)ex2f''(x) = (4x^2 - 2)\,e^{-x^2}

これがゼロになるのは x=±12±0.707x = \pm \dfrac{1}{\sqrt{2}} \approx \pm 0.707 で、そこでの値は y=e1/20.607y = e^{-1/2} \approx 0.607 です。曲線が上に凸から下に凸へ切り替わる、釣鐘の「肩」にあたります。

減衰の速さ

x±x \to \pm\infty のとき x2-x^2 \to -\infty なので ex20e^{-x^2} \to 0 となり、xx 軸すなわち y=0y = 0 が水平漸近線です。指数の肩が二乗で効くため、減衰は exe^{-x} よりもはるかに速くなります。

xxy=ex2y = e^{-x^2}
0011
0.50.50.77880.7788
110.36790.3679
1.51.50.10540.1054
220.01830.0183
330.00012340.0001234

半値全幅

釣鐘の広がりを測る量として、値が最大の半分になる幅(半値全幅)がよく使われます。ex2=12e^{-x^2} = \dfrac{1}{2} を解くと x=±ln2x = \pm\sqrt{\ln 2} なので、幅は次の値です。

2ln21.66512\sqrt{\ln 2} \approx 1.6651

ガウス積分

初等的な原始関数を持たないにもかかわらず、全区間にわたる積分は閉じた形で書けます1

ex2dx=π\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2}\,dx = \sqrt{\pi}

証明は、二乗した二重積分を極座標へ移すのが定石です。

I2=e(x2+y2)dxdy=02π0er2rdrdθ=2π12=π\begin{align*} I^2 &= \int_{-\infty}^{\infty} \int_{-\infty}^{\infty} e^{-(x^2 + y^2)}\,dx\,dy \\ &= \int_0^{2\pi} \int_0^{\infty} e^{-r^2} r\,dr\,d\theta \\ &= 2\pi \cdot \frac{1}{2} = \pi \end{align*}

I>0I > 0 なので I=πI = \sqrt{\pi} です。係数を入れた eax2dx=πa\int_{-\infty}^{\infty} e^{-ax^2}\,dx = \sqrt{\dfrac{\pi}{a}}a>0a > 0)も同じ方法で得られます。

原始関数と誤差関数

不定積分は初等関数では表せません。そこで誤差関数 error function を次のように定義します3

erf(x)=2π0xet2dt\operatorname{erf}(x) = \frac{2}{\sqrt{\pi}} \int_0^x e^{-t^2}\,dt

これを使うと、原始関数は次の形に書けます。

ex2dx=π2erf(x)+C\int e^{-x^2}\,dx = \frac{\sqrt{\pi}}{2}\operatorname{erf}(x) + C

正規分布との関係

標準正規分布の密度関数は次の形をしています。

φ(t)=12πet2/2\varphi(t) = \frac{1}{\sqrt{2\pi}} e^{-t^2/2}

t=2xt = \sqrt{2}\,x と置くと et2/2=ex2e^{-t^2/2} = e^{-x^2} になります。つまり密度関数は、ガウス関数を横に 2\sqrt{2} 倍へ伸ばし、全体の面積が 11 になるよう規格化したものです2

ガウス関数標準正規分布
ex2e^{-x^2}12πet2/2\dfrac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-t^2/2}
最大値1112π0.3989\dfrac{1}{\sqrt{2\pi}} \approx 0.3989
変曲点の
位置
±12\pm\dfrac{1}{\sqrt{2}}±1\pm 1
全区間の面積π\sqrt{\pi}11

モーメント

偶関数なので奇数次のモーメントはすべてゼロです。偶数次は二重階乗を使った公式で与えられます。

x2nex2dx=(2n1)!!2nπ\int_{-\infty}^{\infty} x^{2n} e^{-x^2}\,dx = \frac{(2n-1)!!}{2^n}\sqrt{\pi}
n=1n = 1π2\dfrac{\sqrt{\pi}}{2}
n=2n = 23π4\dfrac{3\sqrt{\pi}}{4}
n=3n = 315π8\dfrac{15\sqrt{\pi}}{8}

フーリエ変換

ガウス関数は、フーリエ変換してもガウス関数のままです。

ex2eikxdx=πek2/4\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2} e^{-ikx}\,dx = \sqrt{\pi}\,e^{-k^2/4}

もとの関数が横に狭いほど変換後は横に広がります。この釣り合いは、量子力学の不確定性原理や信号処理の窓関数など、幅と広がりが同時には小さくできない場面に繰り返し現れます。

熱伝導方程式

熱方程式 ut=uxxu_t = u_{xx} の基本解もガウス関数です。

u(x,t)=14πtex2/(4t)u(x, t) = \frac{1}{\sqrt{4\pi t}}\,e^{-x^2/(4t)}

t0+t \to 0^{+} では原点に集中し、時間が経つほど幅を広げて高さを下げます。1 点に置かれた熱が拡散していく様子が、そのまま釣鐘の広がりに対応します。

テイラー展開

eue^{u} の級数に u=x2u = -x^2 を代入すると、すべての実数で収束する展開が得られます。

ex2=n=0(1)nx2nn!e^{-x^2} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n x^{2n}}{n!}

奇数次の項が現れないことが、偶関数であることの級数側の現れです。

数値計算

原始関数が初等的でないので、具体的な区間の面積は数値積分で求めます。台形則で区間 [0,3][0, 3] を計算すると次のようになります。

function gaussian(x: number): number {
	return Math.exp(-x * x)
}

function trapezoid(from: number, to: number, count: number): number {
	const step = (to - from) / count

	let total = (gaussian(from) + gaussian(to)) / 2

	for (let index = 1; index < count; index++) {
		total += gaussian(from + index * step)
	}

	return total * step
}

結果は 0.88620.8862 で、π20.8862\dfrac{\sqrt{\pi}}{2} \approx 0.8862 にほぼ一致します。x=3x = 3 より先の寄与がすでに無視できるほど小さいからです。

歴史

Theoria Motus(1809)でガウスは、観測誤差の最も確からしい分布として次の形を導いた。

φ(Δ)=hπeh2Δ2\varphi(\Delta) = \frac{h}{\sqrt{\pi}}\,e^{-h^2\Delta^2}

ド・モアブルは二項分布の近似としてこの曲線に到達し、ガウスとラプラスがそれを誤差の分布として位置づけました2誤差論の中心にある曲線という見方は、ここから定まったものです。

応用

  • 測定誤差の分布、すなわち正規分布
  • 熱伝導方程式の基本解
  • 画像処理のぼかし、いわゆるガウシアンフィルタ
  • 機械学習のカーネル法における RBF カーネル
  • 量子力学の調和振動子の基底状態
  1. Gaussian integral、Wikipedia
  2. Normal distribution、Wikipedia
  3. Error Functions, Dawson's and Fresnel Integrals、NIST Digital Library of Mathematical Functions