y=artanhx 逆双曲線正接 y=artanhx
artanhx(逆双曲線正接、area hyperbolic tangent)は、双曲線正接 tanhx の逆関数です1。tanh は全実数を開区間 (−1,1) へ単調に写すため、その逆関数の定義域は (−1,1) になります。
定義と閉形式
y=artanhx は x=tanhy を満たす y です。対数を用いると次のように書けます。
artanhx=21ln1−x1+x この式は 1−x1+x>0、すなわち −1<x<1 で意味をもちます。
定義域と値域
- 定義域は開区間 (−1,1)
- 値域はすべての実数
- 単調に増加する
- 奇関数
両端 x=±1 は含みません。tanh が ±1 という値に決して達しなかったことの裏返しです。
対称性と増減
artanh(−x)=−artanhx が成り立つ奇関数で、グラフは原点対称です。導関数は次のとおりです。
dxdartanhx=1−x21 定義域内では分母が正なのでつねに正となり、単調に増加します。
漸近線
| 近づき方 | artanhx |
|---|
| x→1− | →+∞ |
| x→−1+ | →−∞ |
直線 x=1 と x=−1 が垂直漸近線です。有界だった tanh の逆関数なので、狭い区間のなかで値が限りなく大きくなります。
特徴的な値
| x | artanhx |
|---|
| 0 | 0 |
| 0.5 | 21ln3≈0.5493 |
| 0.9 | ≈1.4722 |
| 0.99 | ≈2.6467 |
原点付近では artanhx≈x ですが、端に近づくと急に立ち上がります。ただし発散は対数的なので、x を 0.99 から 0.999 にしても値は 3.8 程度にしかなりません。
級数展開
原点のまわりの展開は奇数次の項だけからなり、∣x∣<1 で収束します。
artanhx=x+3x3+5x5+⋯ arctanx の展開と係数は同じで、符号が交互に入れ替わらない点だけが違います。
応用
- 統計学のフィッシャーの z 変換(相関係数の変換)2
- 特殊相対性理論における速度の合成(ラピディティ)
- 積分 ∫1−x2dx の結果
ラピディティでは、速度の合成が artanh を通すと単なる足し算になります。有界な速度の世界を、無限に広がる直線へ引き伸ばす座標変換だと見ることができます。
- Inverse hyperbolic functions、Wikipedia
- Fisher transformation、Wikipedia