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多項式だけで連続関数に届く、ストーン・ワイエルシュトラスの定理

の上の連続関数は、多項式でいくらでも近づけられます。ワイエルシュトラスの近似定理です[2]。

多項式のどこが効いているのか。ストーンの答えは、和と積で閉じていることと、 点を区別できることの つでした[1]。

この つさえあれば、多項式でなくても同じ結論が出ます。指数関数の族でも、 変数の積の形でも成り立つ[4]。

近似定理

を 上の連続関数とします。どんな に対しても、次をみたす多項式 があります[2]。

各点で近いだけでなく、区間全体で一様に近い。ここが要点です。

証明はいくつかありますが、いちばん手が動くのはバーンシュタイン多項式による構成です[3]。

バーンシュタイン多項式

で考えます。 を決め、次の多項式を作ります[3]。

重みの部分は非負で、 について足すと になります。二項定理からすぐ出る[3]。

つまり は、 の値を重みつきで平均した数です。重みの山は のあたりに集まります。

例:二乗の関数で誤差を測る

に当てると、誤差が式で書けます。

余分な項は です。 でいちばん大きく、値は 。

なら誤差は 、 なら 、 なら です。 に反比例して小さくなります。

多項式そのものを入れても、有限次数では一致しない。それでも を上げれば誤差は消えていきます。

ストーンの一般化

多項式であることは本質ではありません。 をコンパクトな空間、 を の部分代数とします[1]。

が定数関数をすべて含む。
が点を分離する。つまり なら をみたす がある。

この つがあれば、 は で稠密になります[1,2]。

定数を含む代わりに「どの点でも消えない」という条件でも同じ結論が出ます[4]。

絶対値と格子

証明の要は、閉包が絶対値をとる操作で閉じているところにあります[4]。

は 上で定数項のない多項式で一様に近似できます。そこに を代入すれば、 が閉包に入る。

絶対値が使えると、 つの関数の大きいほう小さいほうも作れます。

大きいほう小さいほうが自由に作れると、点ごとに値を合わせる関数を貼り合わせられます。コンパクト性で有限個に絞れば、証明が終わります[4]。

例:多項式が条件をみたす

とし、 を多項式全体とします。定数は多項式なので つ目の条件は成り立つ。

点を分離するのも簡単です。 をとれば、 のとき値が違います。

ストーンの定理からワイエルシュトラスの定理が従いました。特別な場合として回収できます。

例:指数関数の族

の張る代数を考えます[4]。

積で閉じています。 なので、代数になっている。

が定数を与え、 が点を分離します。だから で稠密です。

多項式をまったく使わずに、連続関数を近似できることになります。

例:2 変数へ広げる

とし、 の形の有限和を集めます[4]。

積で閉じているのは、 から分かります。

点 は、座標のどちらかが違う。その座標の関数を使えば分離できます。

変数の連続関数が、変数の分かれた形の和で近似できる。数値計算で使う分離型の近似は、この定理が支えています。

例:分離できないと崩れる

条件を落とすとどうなるか見ます。 とし、 を偶数次の項だけからなる多項式の全体とします。

代数にはなっています。偶関数どうしの積は偶関数だからです。

ところが と を分離できません。 のどの元も をみたすためです。

閉包に入るのは偶関数だけ。 は近づけられず、稠密になりません。

複素では共役が要る

複素数値の場合は条件が つ増えます。自己共役性、つまり なら という条件です[5]。

これがあると、実部と虚部が別々に に入ります。実の場合に帰着できる[5]。

条件を外すと壊れます。 を単位円周とし、 を の多項式全体としましょう。

定数を含み、 が点を分離します。それでも には近づけません。

距離を計算する

近づけない度合いを数値で出せます。円周上での積分を使います。

多項式は円板の内部まで正則なので、円周に沿った積分が になります。いっぽう の積分は消えません。

差の積分は の大きさを持ちます。積分の絶対値は、被積分関数の最大値に周の長さ を掛けたもの以下です。

どんな多項式をとっても、距離は 以上のまま。近づけないどころか、まったく寄れません。

例:三角多項式は届く

同じ円周でも、 を が負の側まで含めると話が変わります。

なので、自己共役になる。定数も入り、点も分離します。

三角多項式は円周上の連続関数で稠密です。フーリエ級数が一様に近づけられる根拠が、ここにあります[5]。

負の番号を落とすと、さきほどの円板環に戻ります。両側そろえるかどうかで、結論が入れかわる。

自己共役な代数

実部と虚部を別々に扱える。稠密になる

片側だけの代数

正則な関数しか作れない。共役から距離 1 以上はなれる

近似の速さのほうも、数値で押さえておきます。

に次数 のバーンシュタイン多項式を当てたとき、 での誤差はいくつですか。

__RESULT__

誤差は で、 を入れると です。 なら になります。 は の最大値を と見た場合、 は収束の速さを速く見積もりすぎた値になります。

つまずきやすいところ

点を分離する条件を確かめずに使う。偶関数だけの代数が反例になります。
複素の場合に自己共役性を落とす。円板環では共役に近づけません。
各点収束と一様収束を同じ扱いにする。定理が言うのは一様のほうです。
コンパクトでない空間にそのまま当てる。有限被覆が使えなくなります。
バーンシュタイン多項式が補間だと考える。両端以外では値が一致しません。
部分空間であれば足りると思う。積で閉じていることが要ります。

分離できて、積で閉じていて、定数がある。この 点を確かめるだけで、近似できるかどうかが決まります。

出典

Stone-Weierstrass Theorem. MathWorld.
Stone-Weierstrass theorem. Encyclopedia of Mathematics.
Bernstein Polynomial. MathWorld.
Jiří Lebl. *Basic Analysis: Introduction to Real Analysis*, 11.7 The Stone–Weierstrass theorem.
Stone-Weierstrass theorem (complex version). PlanetMath.
連続関数は多項式で一様に近づけられます。バーンシュタイン多項式なら $f(x) = x^2$ の誤差が $x(1-x)/n$ と書け、$n = 10$ で $0.025$ まで落ちる。ストーンはこれを、和と積で閉じていて 2 点を区別できる代数ならどれでもよい、という形に広げました。指数関数の族でも 2 変数の積の形でも成り立ちます。偶関数だけでは分離できず崩れること、複素では共役が要り、多項式と $\overline{z}$ の距離が $1$ 以上あることも計算しました。