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English

関数列から収束する部分列をとり出す(アスコリ・アルツェラの定理)

有界な数列からは収束する部分列がとれる。ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理である。

関数列では、有界なだけでは足りない。 でどれも 以下だが、一様収束する部分列を 1 つも持たない。

足りないものが同程度連続性である。有界性と組み合わせると部分列がとり出せる。これがアスコリ・アルツェラの定理[1]

有界なだけでは足りない

で見る。各点での極限は、 なら なら になる。

極限が不連続なので、一様収束はありえない。一様収束の極限は連続だからである。

部分列をとっても各点での極限は変わらない。どの部分列も同じ不連続関数へ向かうので、一様収束する部分列は存在しない。

崖の様子は数値でも見える。 を代入する。

での値は である。 点の距離は に向かうのに、値の差は ほど残る。

同程度連続

関数の族 が点 で同程度連続とは、次が成り立つことをいう[3]

肝は によらないところにある。 本の で族の全員をおさえる。

にもよらないなら一様同程度連続という。定義域がコンパクトなら、この つは一致する。

の族はこの条件を落とす。 とすると、どんな をとっても、 を大きくすれば で差が を超える組が現れる。

定理

をコンパクト空間、 とする。次の つは同値である[2]

の閉包が でコンパクトになる。
が同程度連続で、各点で有界である。

数列の形で書くと使いやすい。 上の連続関数列 が一様有界かつ同程度連続なら、一様収束する部分列 がとれる[1]

一般の形では、値域を距離空間 にとり、各点での像の集合 が相対コンパクトであることを要求する[3] なら有界性と同じになる。

証明は対角線論法

証明の骨格は、可算個の点で順に部分列を絞り、最後に対角線をとる形である[2]

稠密な可算集合を並べる

第 1 点で収束する部分列をとる

その中から第 2 点でも収束する部分列をとる

対角線を拾って全点で収束させる

各点収束から一様収束へ上げるところで同程度連続性を使う。 が関数によらないので、有限個の点での近さが全体の近さに広がる。

例:リプシッツ定数がそろえばよい

族の全員が同じ定数 でリプシッツ連続なら、同程度連続はすぐ出る。

とすれば条件をみたす。 の中に が現れないので、族の全員に同時に効く。

なら である。有界性も から出るので、定理が使える。

例:導関数が一様有界なら使える

がすべての で成り立つとする。平均値の定理から になる。

を見る。導関数は なので 。同程度連続である。

値のほうは なので、この列は へ一様収束する。部分列を探すまでもない。

比べるべきは のほうである。導関数が で、 がとれない。

をとると、距離は に向かうのに値の差は のまま。同程度連続でないので、定理は使えない。

同程度連続な族

を 1 本決めれば全員に効く。部分列が収束する

そうでない族

ごとに を細くする必要がある。部分列も収束しない

例:積分作用素はなめらかにする

上の連続関数とし、次の作用素を考える。

とすると なので、像は一様有界である。

同程度連続も出る。 点での差を評価する。

はコンパクト集合上の連続関数なので一様連続。 を小さくすれば右辺は小さくなり、 にはよらない。

アスコリ・アルツェラから、単位球の像は相対コンパクトになる。 がコンパクト作用素だという主張が、これで示せた[1]

例:核を決めて計算する

とすると、積分は変数分離できる。

なら なので になる。

なら 。どの を入れても の定数倍しか出てこない。

像は 次元である。 なので、リプシッツ定数 で同程度連続。

例:微分方程式の解を作る

を連続とし、 を考える。連続性だけで局所解が存在する[4]

近似解を作り、それが一様有界で同程度連続だと示す。アスコリ・アルツェラで収束する部分列をとり、極限が解になることを確かめる筋である。

出てくるのは存在だけで、一意性は出ない。 には の両方がある[4]

はリプシッツ連続でないので、一意性を保証する条件を落としている。連続性だけでは解が枝分かれする。

仮定はどちらも外せない

つの仮定は独立である。片方だけでは結論が出ない。

関数列一様有界同程度連続
成り立つ成り立たない
成り立たない成り立つ
成り立つ成り立たない
成り立つ成り立つ

はどれも傾き の直線なので、 で同程度連続になる。ただし値が上へ逃げるので、収束する部分列はない。

を代入した値は、 を大きくするとどこへ近づくか。

__RESULT__

へ収束する。 での値 との差が ほど残るので、この族は同程度連続にならない。 は各点極限の値、 は右端での値である。

検算のしかた

同程度連続かどうかは、 が入るかどうかで見分けられる。

のように定数だけで書ければ合格である。 のように が残れば落第。

導関数の上限を計算すると早い。 が有限なら、その値がリプシッツ定数になる。

よくある誤り

各点収束するから一様収束すると考える。極限が不連続なら一様収束はない。
つずつの が一様連続だから族も同程度連続だとする。 によらないことが要る。
有界性だけで部分列をとろうとする。 が反例になる。
同程度連続だけで足りると考える。 のように上へ逃げる列がある。
定義域がコンパクトでなくても同じだと思う。 全体では一様収束が崩れる。
極限の連続性を確かめない。同程度連続なら極限も同じ定数でおさえられる。
ペアノの定理で一意性まで出たと考える。連続性だけでは枝分かれする。

本で足りるようにする。この一点だけが、数列の話を関数列へ持ち上げる鍵になっている。

参考文献

Arzelà–Ascoli theorem - Wikipedia
Satz von Arzelà-Ascoli - Wikipedia
Théorème d'Ascoli - Wikipédia
Peano existence theorem - Wikipedia
有界なだけでは、関数列から収束する部分列がとれません。$x^n$ は $[0, 1]$ でどれも $1$ 以下なのに、$x = 1 - 1/n$ での値が $1/e$ に残り、右端の崖が消えない。足りないものが同程度連続性で、$\delta$ を関数によらず 1 本で決められるかが分かれ目になる。リプシッツ定数がそろう場合と導関数が一様有界な場合、連続核の積分作用素がコンパクトになる理由、ペアノの存在定理での使い方まで。対角線論法の筋も図で追いました。