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交わらない凸集合は超平面で分けられる、ハーン・バナッハの分離定理

交わらない つの凸集合のあいだには、超平面を 枚さし込めます。片方が開いていれば、無限次元でも同じことが言える[1]。

汎関数を延ばす定理と、集合を分ける定理。この つが同じハーン・バナッハの定理の表と裏になります。

凸であることは外せません。少しでもへこんでいると、分ける平面が消えます。

超平面と汎関数

を でない連続線形汎関数、 を実数とします。次の集合を超平面と呼びます。

超平面は空間を つの半空間に切ります。 の側と の側です。

集合 と を分けるとは、 が片方の半空間に、 がもう片方に入ることをいいます。 本の汎関数と つの数で言い表せる。

開いているほうを使う版

いちばん軽い仮定の形はこうです。 を空でない開凸集合、 を空でない凸集合とし、交わらないとします[2]。

このとき でない連続線形汎関数 と実数 があって、次が成り立ちます。

開いている側では不等号が厳しくなる。境界を含まないので、平面に乗る点がありません。

には閉じている条件もコンパクト性も要りません。片方が開いていれば十分です[3]。

すきまを作る版

もっと強い結論には、コンパクト性が要ります。 を空でないコンパクト凸集合、 を空でない閉凸集合とし、交わらないとします[2]。

つの値のあいだにすきまが空きます。超平面を 枚とって、そのあいだに何も入らない帯を作れる。

理由は距離にあります。コンパクトと閉が交わらなければ、 つの集合の距離は正になる。この余裕が不等号のすきまへ変わります。

片方が開いている場合

平面は入る。ただし境界がふれる可能性が残る

片方がコンパクトな場合

平面のあいだに帯が空く。どちらの集合も帯に入らない

例:点を閉凸集合から切り離す

を閉凸集合、 とします。 点は当然コンパクトなので、強い版がそのまま使えます[2]。

ヒルベルト空間なら、この を手で書けます。 への最近点を とし、 とおきましょう。

最近点の性質から、すべての で が成り立ちます。展開すると次の形になる。

なので です。 とすれば、 の上での上限が より だけ小さくなります。

分離する汎関数が、最近点との差ベクトルとして具体的に出てきました。

例:平面で数値を入れる

を原点中心の単位円板、 とします。どちらも凸で、交わりません。

をとると、 の上での上限は 、 の上での下限は です。

は と のあいだのどれでもよい。 とすれば、直線 が つを分けます。

はコンパクトなので、すきまが空く形になりました。幅は です。

厳密には分けられない例

つとも閉じているだけでは、すきまが空くとはかぎりません[4]。

、 とします。どちらも閉じた凸集合で、交わりません。

を大きくすると の点は 軸から離れますが、 を小さくすると の点は 軸にいくらでも近づきます。

つの集合の距離は です。分ける直線は しかなく、それは に接してしまう。

コンパクト性を落とすと、結論が「すきまが空く」から「接してもよい」へ弱まります。仮定と結論がきれいに対応している。

支持超平面

境界の点をとると、そこで集合に接する超平面が作れます。支持超平面と呼びます[4]。

凸集合 と境界点 に対し、 かつ 全体が に入る がある、という主張です。

内部が空でない場合は、内部と 点を分ける形で作れます。開集合版をそのまま当てればよい。

閉凸集合は半空間の共通部分

支持超平面を全部集めると、集合そのものが復元できます[1]。

閉凸集合は、それを含む閉半空間すべての共通部分に等しい。外側から平面で削っていくと、ちょうど元の集合が残ります。

凸でない集合ではこうなりません。半空間の共通部分はいつでも凸なので、へこみを再現できない。

境界の点を 1 つとる

そこで接する支持超平面を引く

すべての境界点で集めて共通部分をとる

もとの閉凸集合が復元される

凸でないと壊れる

を原点中心の単位円周、 とします。 つは交わりません。

を でない線形汎関数とすると、円周の上で は から まで値をとります。

はこの範囲のまんなかです。 は の値の内側に入るので、どちら側にも寄せられません。

分けられないのは、円周が凸でないためです。凸包をとれば円板になり、中心が中に入ってしまう。

を単位円板、 とし、 で分けます。 と の組はどれですか。

  • と
  • と
  • と
__RESULT__

単位円板で が最大になるのは なので です。 で が最小になるのは の直線上なので 。 と は円板の中心の値と混同した組、 と は の条件を読み違えた組になります。

解析の形との関係

延長定理の形では、劣線形関数 に押さえられた汎関数を全体へ延ばします。分離定理では、この を集合から作ります[1]。

原点を内部に含む凸集合 に対し、ミンコフスキー汎関数を次で定めます。

は劣線形になり、 は の集合として書けます。集合の形が関数に翻訳され、延長定理が使える形になる。

同じ定理の つの顔だと言われるのは、この翻訳があるためです。

例:数列空間で切り離す

で とします。閉部分空間なので、閉じた凸集合でもあります。

は に入りません。 への最近点は原点なので、差ベクトルは です。

をとると、 の上ではつねに 、いっぽう 。すきまの幅は になりました。

例:部分空間と距離をつなぐ

が閉部分空間で のときは、もっと強い形が言えます[1]。

の上で になり、ノルムが で、 をみたす がとれる。分離の幅が距離そのものになります。

上の例で確かめましょう。 で なので、ぴったり一致している。

検算

分離する汎関数を見つけたら、両側の値を計算して不等号の向きを確かめます。

と を数値で出し、あいだに が入るかを見る。等号が混じるなら、開いている側がどちらかを確かめます。

すきまが空くはずの場面で空かないときは、コンパクト性の仮定が抜けている疑いがある。

つまずきやすいところ

つとも閉じていればすきまが空くと考える。双曲線の例で崩れます。
凸でない集合にも当てはめる。円周と中心は分けられません。
無限次元では成り立たないと思う。片方が開いていれば同じ形が使えます。
分離する汎関数が一意だと考える。ふつうは何本もとれます。
支持超平面が境界点で一意だと思う。角のある点では何本も引けます。
開集合版の不等号を両側とも厳しくとる。厳しくなるのは開いている側だけです。
閉凸集合を半空間で作れないと思う。共通部分でちょうど復元できます。

凸であること、そして片方に開性かコンパクト性があること。この 点がそろえば、平面は必ず入ります。

参考文献

Hahn–Banach theorem - Wikipedia
Trennungssatz - Wikipedia
Théorème de Hahn-Banach - Wikipédia
Hyperplane separation theorem - Wikipedia
片方が開いていれば、交わらない凸集合のあいだに超平面が 1 枚入ります。片方がコンパクトで片方が閉なら、あいだに帯が空くところまで強くなる。$2$ つとも閉じているだけでは足りず、双曲線と半平面の例で距離が $0$ になります。ヒルベルト空間なら分離する汎関数を最近点との差ベクトルから手で書ける。支持超平面、閉凸集合が半空間の共通部分になること、円周と中心が分けられない理由、ミンコフスキー汎関数を通じた延長定理とのつながりまで。