フーリエ変換は長さを変えない……プランシュレルの定理
フーリエ変換は の上でユニタリ作用素になります。長さも内積も変えません[1]。
積分で定義された変換が、回転と同じ性質をもつ。プランシュレルの定理です[2]。
L1 での定義
まず絶対可積分な関数で定義します。ここでは次の正規化を使います[3]。
なら積分は絶対収束します。 なので です。
さらに は一様連続で、無限遠で に近づきます。リーマン・ルベーグの補題です[3]。
L1 に入らない関数をどうするか
困るのは、 の関数が に入るとはかぎらないところです。
を見ましょう。二乗の積分は収束しますが、そのままの積分は発散します。
には入るのに には入らない。定義の式がそのままでは使えません。
逃げ道は稠密性です。 は で稠密なので、そこで等長性を示してから連続に延ばします[2]。
例:矩形関数
を区間 で 、外で とします。
出てきた関数を と呼びます。 では極限をとって です。
は にも にも入ります。ところが のほうは に入りません。 の積分が発散するためです。
には入っています。片道で の外へ出てしまうので、 で考える必然性がここにあります。

プランシュレルの定理
に対して が成り立ちます[1]。
等長写像は稠密な部分から一意に延びます。こうして 全体で定義された作用素を、フーリエ・プランシュレル変換と呼びます[2]。
全射でもあるので、この作用素はユニタリです。逆写像は符号を変えた変換になります[4]。
内積の形にも書けます。分極恒等式から次が出ます[1]。
例:矩形関数で確かめる
の側の計算は簡単です。 は幅 の矩形なので、積分は 。
プランシュレルの定理から、変換側の積分も になるはずです。
この積分を直接計算するのは手間がかかります。長さが保たれるという 1 行の事実から、値がただちに決まりました。
例:両側指数関数で確かめる
を計算します。変換は つの積分に分けて出せます。
もとの側のノルムは です。
変換側は と置きかえます。 を使いましょう。
両側とも になりました。定理が数値で確かめられます。
幅を変えると逆に広がる
スケーリングの規則を書きます。 に対して次が成り立ちます[3]。
を大きくすると、もとの関数は横に縮み、変換側は横に広がります。両方を同時に細くはできない。
不確定性原理と呼ばれる現象の、いちばん素朴な形です[3]。
ガウス関数は動かない
をとると、変換しても同じ関数が出てきます[3]。
この正規化を選ぶ理由がここにあります。指数の が、変換をちょうど対称にしている。
導き方は 通りあります。指数の肩を平方完成する方法と、 が微分方程式 をみたすことを使う方法です。
スケーリングの規則と合わせると、幅の広いガウス関数は幅の狭いガウス関数へ移ることも分かります。
4 回で戻る
フーリエ変換を 回かけると、 が出ます。 回かけると元へ戻ります。
したがって固有値は の 乗根、つまり 、、、 の つに限られます[3]。
固有関数はエルミート関数です。ガウス関数は の場合で、固有値は になります。

畳み込みが掛け算に変わる
つの関数の畳み込みを、変換すると積になります[3]。
積分の中で つの関数が絡み合う操作が、変換側では点ごとの掛け算になる。計算が一気に簡単になります。
逆向きも成り立ちます。もとの側の掛け算は、変換側の畳み込みになる。
畳み込みを計算したい
両方をフーリエ変換する
点ごとに掛け算する
逆変換で戻す
反転公式
も も に入るなら、素直な形で戻せます[1]。
だけの場合は、積分区間を区切って極限をとる形になります[4]。ほとんど至るところの等式として意味をもちます。
矩形関数の例では、 が に入らないので、この素直な形は使えません。 での極限が要ります。
各点で定義でき、連続関数が出る。ノルムは保たれない
極限として定義する。ノルムがそのまま保たれてユニタリになる
どちらも同じ変換を指しています。入口が違うだけで、 の上では値も一致する。
の値はいくつですか。
検算のしかた
変換を計算したら、両側で二乗の積分を出して比べます。合わなければ、正規化の係数が食い違っています。
をどこに置くかで流儀が 通りあります[3]。 の形なら、余分な係数なしで等長になる。
ガウス関数を入れてみるのも早い。 がそのまま戻れば、正規化が合っています。
つまずきやすいところ
長さを変えない。この 点があるので、フーリエ変換は の中で座標をとりかえる操作として扱えます。









幅 1 の矩形関数のフーリエ変換がこの関数です。もとの側の二乗積分は 1 なので、プランシュレルの定理から変換側も 1 になります。π や 21 は、正規化を e−iωx の形にとった場合と混同した値です。